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●神社の造形―王子神社(原田神社)
な空間に聖なる場所がある。聖と俗は隣り合わせだ。それで俗な人にも聖なる部分があることになる。実際そうだろう。ただし、聖なる部分に気づかず、あるいは背いて俗まみれな人がある。



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今日は去年11月22日に横尾忠則美術館で彼の展覧会を見る前に訪れた神戸西灘の神社を取り上げる。この神社の隣りに出来た兵庫県立近代美術館で開催された『ムンク展』に、初日の1970年11月16日に訪れた時以来、何十回とこの神社の前を歩き、また一、二度は境内に入ったこともあるが、去年11月は「神社の造形」のカテゴリーに投稿するために初めて境内を写した。その時の殺風景さは昔と変わらないが、より空が広くなり、味気ないと感じた。その理由は阪神大震災で社殿が被害を受け、新築されたことと、道路際にあるいくつかの鳥居の朱が褪せていたからだ。大地震のあった1995年以前の境内の様子は記憶していない。ネットでもその写真を見つけられないので、本殿が現在と同じ位置にあったとして、どういう形であったかはわからない。通りに面して神社名を書く大きな看板があるのは昔からだが、震災で鳥居が倒壊したのであれば、社殿の再建の際、鳥居も復元したはずで、鳥居は震災以前からなかったと思う。また殺風景なのは、神社にふさわしい背の高い古木が鬱蒼と生い茂っていないからだ。境内の隅には車がたくさん停められ、駐車場の趣が勝っている。通りの名称は、かつての原田村から原田通りで、鳥居があってしかるべき出入口の傍らに「元 原田神社」と「王子神社」を刻む石碑がある。「王子」は眼前にある「王子動物園」に生きている。また「西灘駅」は現在「王子公園駅」に変わっている。調べると震災以前の1984年からだ。20年ほど前のことかと思っていたので、意外だ。駅から王子神社までは徒歩5分で、原田通りを挟んで北部が王子公園で、パンダを飼育する動物園や「王子スタジアム」がある。それらの施設と王子神社はセットと思ってよいが、隣接する県立近代美術館は震災後に坂をずっと下った海岸に兵庫県立美術館が出来たので、2002年からは同館の「王子分館 原田の森ギャラリー」と改称され、その10年後に横尾忠則美術館となった。震災時、同近代美術館に被害があったことをTVニュースで見た。修復したものの、手狭でもあったので海岸沿いに巨大な美術館を建てた。同館は王子公園駅からは遠く、筆者はやがて阪急を使わずに阪神の岩屋駅から同館に行くようになった。そのため、めったに原田通りを歩かないが、歩けばこの神社が何となく気になる。そのような古さ、あるいは日本を感じさせるものがほかにないからだ。神戸は京都と違って洒落た雰囲気が強く、震災で大被害のあった生田神社やほかにも有名な神社はいくつかあるが、京都ほどには神社の数は多くないように思う。あるいは筆者が知らないだけか。
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 市内の繁華街のど真ん中ある生田神社には「生田の森」と刻む石碑があり、かつての森の雰囲気をわずかながら保っている。それに引き換え、旧近代美術館に現在冠せられている「原田の森」は、かつて森があったことを意味するだけで、今はその面影は乏しい。「原田の森」は原田神社の鎮守の森で、それは動物園やスタジアムがあった場所だ。神社の大部分を神戸市は市民により使われる施設にし、神社は現在の地に移った。それにしてはさびしいたたずまいで、神様は忘れ去られている感がある。もっとも、震災で倒壊した社殿を再建したのであるから、維持しようと意地を見せる人たちはいる。通りに面した看板に「初宮詣 各種祈願 地鎮祭」と書かれ、それらに利用する人はいる。とはいえ、ただの空き地の感が強く、もう少し木を植えるなどして神社らしい落ち着きがほしい。「原田の森」を擁していた神社を動物園やスタジアムにすることは、時代の流れであろう。神社側が土地を提供したことは、信心深い人、また自然を愛する人からは惜しがられたはずだが、代わりに市民が楽しむ施設が出来たので、歓迎する声のほうが大きかったと想像する。神戸市は東西に細長い。南北は六甲山と海の間にわずかしかなく、公共施設を造るには山を削るしかない。また人口増加に伴なって家が建つのは当然で、京都はそのようにして右京区の田畑を家屋で埋め続けて来ている。人が増えて自然が減少するのはアマゾンや東南アジアの森林に及び、今は地球規模で環境破壊が問題となっているが、その小さな例が名前だけ残った「原田の森」だ。この名称を美術館が使うのは、元は森、神社の境内であった場所という意味と、芸術の森を意図してのことだろう。自然の森がなくなり、市民の一部が脳内に美術愛好の森を造るということだが、美術館がなかった時代は、作品は個人が家に飾って楽しむことが中心であったのに、巨大な美術館を造ればその壁面を埋めるために作品を探し、大画面あるいは大規模の、芸術的にはまだ周知されていない作品まで展示することになる。そんな作品の森よりかは、まだ樹齢が百年単位である樹木が生い茂る神社の森ががいいと思う立場もある。王子神社の社が動物園やスタジアムのある土地のどこにどのようにあったのか、記録が残っていると思うが、本殿が神社の境内のどこに移動しても、また震災で壊れて再建しても、同じ神社であることには変わりはない。そういう融通無碍なところが神社にはある。つまり、現在の地に「王子神社」の看板を掲げ、参拝客を受け入れているからには、昔と同じく神社としての役割は果たしている。鎮守の森がなくなったのは人口増加から致し方がなく、神社は人口増加に伴なって形を変えて行くことを表わしている。形は変わっても本質は変化しないと考えるべきだ。ただし、現在の王子神社はやはり少々殺風景で、人々の関心の薄さを示しているようにも感じられる。
●神社の造形―王子神社(原田神社)_d0053294_00310890.jpg 創建は鎌倉初期に遡る。これは京都の大きな神社並みに古い。諏訪の豪族が移住し、諏訪大社を勧請して祀っていたが、やがて熊野信仰の隆盛に伴なって熊野の若一王子神を合祀し、王子権現と称した。明治の神仏分離令によって名称は創建期の「健御名方尊神社」に戻り、20世紀になって原田村にあった高林神社を合祀し、戦後間もなく王子神社となった。その後王子公園が出来て遷座し、1956年にスタジアムを造るために現在地に遷座した。祭神は多く、今日の2枚目の写真のように稲荷大神も祀るが、その他の祭神は再建された鉄筋コンクリート製の本殿にまとまっているのだろう。この社殿は境内の南西にあってあまり目立たない。震災前は木造であったと思うが、地震に耐えるものがよいと判断されたのだろう。現在なら木造より鉄筋コンクリートのほうが安上がりかもしれない。駐車場は今は車時代で、参拝客の利便を考えれば仕方がないが、参拝客以外に月極で貸しているのであれば、それも時代の流れであろうが、やはりさびしい気がする。稲荷の鳥居が色あせているのは、いつでもペンキの塗り直しは簡単であるのであまり気にするほどのことではないが、商売繁盛を祈る人が近隣には少ないからでもあろう。そう言えばこの付近に店はとても少なく、南のJR灘駅から南下しなければ腹を満たす場所がない。またその辺りの商人はわざわざ坂を上ってこの神社まで訪れない。それほど坂は急で、また今の商売人は信心深くはない。これは以前に書いたことだが。筆者が自治会長をしていた時、料亭を経営する古老から、法輪寺境内の稲荷社の再建を住持に話してほしいと相談を受けた。古老が言うその場所には、石の鳥居と祠が見捨てられたように朽ちていた。古老の言うように、そこに朱色の鳥居と祠があれば、麓にあるバス道からは樹木の隙間から覗き見え、人の目を引いた。ところがその神社の世話が問題で、古老はそれを自治会の婦人方にお願いしたいと言った。再建費用は古老が持っても、後の世話が大変だ。それを自治会の女性たちに押しつけることは、新しい住民が半分以上になった現在、もう無理だ。それで筆者は断った。時代が俗であるのはいつものことだが、古老の若かった頃はまだ信心深い人が多かった。あるいは信心がなくても神社や地蔵尊の世話をあたりまえにした。田舎ではまだそういう人がほとんどと思うが、都会では急速に地元の神社や寺に無関心な人が増えている。信仰の自由が保障され、神社の境内は最小限でよく、またないよりましと思う程度で、広い境内を多くの人が楽しめる場所にしたほうがいいという意見が大きくなっても仕方がない。俗が大手を振り、聖は肩身が狭い。その代わりに社寺は無数にある。形があれば、誰かは気づく。ネット時代になって神社巡りをしている人が写真つきで報告することは昔はなかったことだ。
●神社の造形―王子神社(原田神社)_d0053294_00314671.jpg

by uuuzen | 2016-07-15 23:59 | ●神社の造形
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