人気ブログランキング | 話題のタグを見る

●京都大宮高辻 BlueEyesにて、IVORY TOWER
るのは苦手だが、歩くのは山道でなければ1日で数十キロはたぶん大丈夫と思う。そのためでもないが、筆者は歩く速度の音楽が好きで、歩きながらそういう音楽のリフをよく思い浮かべる。



●京都大宮高辻 BlueEyesにて、IVORY TOWER_d0053294_21002273.jpgさて今日から今月9日に京都のブルーアイズで見た「変拍子祭り」に出演した4つのバンドについて感想を書く。松本秀樹さんの企画で、翌10日にも4バンドが演奏した。筆者は両日とも見るのはしんどいし、なるべく未知のミュージシャンの演奏を聴きたいので、9日のみを見た。チラシには「変拍子祭り」の題名の横に「Prog Fest」とあって、プログレッシヴ・ロックを対象にしているが、そのプログレの最大の特徴を松本さんは「変拍子」としている。これは「変な気持ちになる拍子」と思ってもあながち間違いではないが、「変」すなわち「♭」のたくさんつく音符が奏でられるかと言えば、「♯」も同じだけ多く、一般には「ややこしい拍子とメロディ」の音楽と思われている。またロックは大音量ゆえに「うるさい」という認識もあるが、「変拍子」はロックにだけにあるとは限らず、今ではさして変と思われていないのではないか。スーパーに行くと一時代昔のようなジャズ・ロックのインスト曲がよくBGMになっていて、高齢者はそれを不思議に思わずに聴き流している。それほどに日本はややこしい世の中になり、プログレが時代相応のあたりまえのものになって来た気がする。そう思わせるバンドが9日の最初に登場した。「アイヴォリー・タワー」(以下IT)つまり「象牙の塔」というなかなか渋い名前で、演奏者たちは世間と絶縁して優雅かつ孤独に暮らす特権階級を意識しているのかと思わないでもないが、そういう人は見世物であるライヴハウスには出演しない。ではこのITの名前が何を示すのかと思えば、演奏に対する自負だろう。松本さんによればこのバンドはNHKのプリグレコンテストで優勝したそうで、筆者はそういうコンテストがあることに驚き、また彼らが優勝したことにさらに驚いた。筆者も20代の終わり頃から公募展によく出品し、それが励みになって来たし、グランプリを獲得すると一気に成長した気がするものだ。審査基準や審査員の質など、コンテストにはもちろん弊害と言ってよいこともあるが、多くの人に認められる競争の機会はあってよく、ショパン・コンクールで優勝して世界的に有名になるピアニストもあるから、コンテストに賭ける人の思いを筆者は理解出来る。NHKがプログレ・コンテストを催すことは、それだけ聴き手の耳が肥えて高度な演奏技術が求められる時代になったのであって、またそのことが「変拍子祭り」に反映している。NHKの同コンテストがいつから、また今も開催されているのかどうかを筆者が知らないことは、それだけ現在のプログレに関心が薄いことを証明するので、以下に書くライヴの感想は参考にはならないことをまず伝えておく。
●京都大宮高辻 BlueEyesにて、IVORY TOWER_d0053294_21004702.jpg
 ITは神戸、大阪を拠点にし、去年4月に初アルバムを出したそうだ。ギター、ベース、ドラムス、キーボード、時にヴァイオリン、それに女性のヴォーカルという5人編成で、女性の歌声が「イロモノ」として際立っているが、最も目立ったのはギタリストの青年で、20代半ばだろう。素直で育ちのよさそうな、また清潔感のある好青年で、舌を巻くほどに素早い演奏のギターに、筆者はスケーターの羽生結弦を連想した。彼のスケートは血の滲む思いの産物であるはずで、何事も常人が及ばない技量を発揮するには空前の努力が欠かせない。そしてその努力の痕跡が見えないほどにやすやすと演技を披露するところに、選ばれし者ゆえの格好よさがある。その意味でプログレはスポーツに似ているが、ミスを減点として審査するスケートのようなスポーツと音楽はやはり異なる。そこに感動を持ち出すと話がややこしくなる。感動は人によって感じどころが違うからだ。より多くの人が歓迎する音楽がたとえばTVで取り上げられ、人気者になって経済的にも潤う。そういう芸能界から見れば小さなライヴハウスで演奏するミュージシャンは「象牙の塔」に住み、NHKのコンテストで優勝したことで毎晩TVに出演出来るという見込みはまあほとんどない。それはマネージャーや所属する会社など、営業に走り回る人の存在が大きく関係することで、「これは金になる」と感じる人の目に留まれば、ある程度どのようなライヴハウス・ミュージシャンでも全国に名前が知られる存在になり得る。もっとも、そういう一般的な意味での成功をどのミュージシャンも求めてはいないだろう。そこに自己満足という言葉を揶揄の意味で持ち出すことを筆者は全く好まない。TVや芸能界とは関係のないところで開花している才能はわんさかとあり、最先端のごく一部しか光を当てないTVの芸能番組がなくても何ら困らない人のほうが圧倒的に多いと思うからだ。話をITに戻すと、40数分の演奏の間に5曲演奏した。どれも疾走感という形容詞がふさわしいテンポの速い曲だ。ロジェ・カイヨワによる遊びの4要素によれば、ブランコやジェットコースターと同じ「めまい(イリンクス)」が最も多いだろう。演奏後にギタリストと少しだけ話が出来たが、彼はキング・クリムゾンが好きで、彼らの音楽を「模倣(ミミクリ)」して、コンテストという「競争(アゴン)」に勝った。次はメジャーになって日本中で有名になるかどうかの「賭け(アレア)」の段階にあるが、日本でプログレの新しい才能がたとえば紅白に出場するほどの名声を得ることはあるだろうか。それがあるとすれば、音楽性よりもタレント性が問われるが、ギタリストの青年はジャニーズ風であるのでそれは夢ではないだろう。曲目を紹介する話術もなかなか堂に入ったもので、現在の姿にもうつけ加えるものはない気がする。後はギターの腕を磨くことと、名曲を書くことだ。
●京都大宮高辻 BlueEyesにて、IVORY TOWER_d0053294_21011086.jpg
 最初はいきなり演奏が始まり、7,8分の曲名はわからない。最初はコードを3,4つ繰り返す単調さだが、後半は変化に富み、練習の程度が伝わる。2曲目はドイツの高速道路の「アウトバーン」という題名で、前述のように疾走感溢れる曲で、事故なく、つまりミスなく自作曲を素早く、そして巧みに弾きこなす、プログレの見本と言ってよい。こう言い替えてもよい。TVゲームで高得点を取るためには日々盛んに練習する必要があるが、そのゲーム・プレイヤーが音楽に目を向けた時に作曲し、演奏するような曲だ。そしてこういう曲はそのアウトバーンを走る車に同乗している気分に浸ることを想像して聴くのがいいのだろうが、車を運転しない筆者にはスピード狂の気分はわからない。もっと言えば「イリンクス」の遊びに興味がない。次の2曲は「夕べのモンマルトル」と古代エジプトに想を採った「イクソス(あるいはエクソスか)」で、後者は一旦終わった後にまた始まる組曲になっているが、これら2曲はメドレーでよく演奏されるそうだ。最後は12,3分のこれも組曲で「月の海」という、「竹取物語」のその後を描いていて、また女性ヴォーカルが最初は十二単の衣装を着ているのに、最後はモンドリアンの絵をデザインしたミニのワンピースに着替えて登場し、演奏以外に視覚性でも楽しませる。月に還ったかぐや姫がその生活に退屈し、千年後の1960年代に東京にやって来て、そこでの生活に馴染むという結末で、このモダニズム礼賛はかなり古い感覚と思うが、ITの音楽性は社会の暗部に目を向けない性質のもので、そのポジティヴ性はそれはそれで個性として受容すべきであろう。ギタリストの青年によれば、女性ヴォーカルは母親とのことで、それでまたびっくりしたが、そう言えばドラムスとベースは50代以上に見えるので、家族で始めたバンドかもしれない。NHKのプログレ・コンテストは年齢制限がないのかどうか、この老若混ぜたバンド編成は珍しいのではないか。穿った見方をすれば、親が自分たちが好きであったキング・クリムゾンに代表されるプログレ音楽を息子に教え、またそのことで一定の結果を得ている点で、スポーツの世界に似ている。あるいは伝統工芸だ。先に女性ヴォーカルを「いろもの」と書いたが、彼女の歌はあまり上手ではないものの、曲のテーマに視覚性を付与する意味では不可欠であろうし、またその意味づけがパリやエジプト、ドイツではなく、日本というのがある意味では見上げたものだ。その汎世界観は彼らの音楽に表われているのだろう。母親やまた父親らしきドラマー、ベーシストがもっと高齢化した時、全力疾走ではなく、ぶらりと歩くようなテンポの音楽が似合っているかもしれず、またその時にはギタリストももっと成長して渋い味を出しているかもしれない。そう思うと、今後10年、20年先にどう変化しているかが気になる。
by uuuzen | 2019-11-20 23:59 | ●ライヴハウス瞥見記♪
●『HALLOWEEN 73』その6 >> << ●京都大宮高辻 BlueEye...

 最 新 の 投 稿
 本ブログを検索する
 旧きについ言ったー
 時々ドキドキよき予告

S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
以前の記事/カテゴリー/リンク
記事ランキング
画像一覧
ブログジャンル
ブログパーツ
最新のコメント
言ったでしょう?母親の面..
by インカの道 at 16:43
最新のトラックバック
ファン
ブログトップ
 
  UUUZEN ― FLOGGING BLOGGING GO-GOING  ? Copyright 2024 Kohjitsu Ohyama. All Rights Reserved.
  👽💬💌?🏼🌞💞🌜ーーーーー💩😍😡🤣🤪😱🤮 💔??🌋🏳🆘😈 👻🕷👴?💉🛌💐 🕵🔪🔫🔥📿🙏?