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●アレックスからのザッパ・グッズ到着、その12
暦を過ぎて何年生きたかと調べると、現在の筆者と同じ69歳で死んでいる。ザッパが芸名をつけたビーフハートのことだ。ザッパが彼と共演したアルバム『ボンゴ・フューリー』は両者が30代半ばのもので、まだとても若かったと思える。



昨夜「風風の湯」で、22歳の若者と話した。高卒で現在フリーター、夢は弁護士になるとのことで、まだ22歳なら努力次第で何にでもなれると筆者は言った。ただし、脇目も振らずに必死に頑張るべきで、そうでなければ大勢の中から頭角を現わすことは難しいと言い添えた。もちろん後者の言葉は他者から言われるまでもなく幼ない頃から自覚している場合に限るのであって、20歳を超えて他者から言われて心が動くようではもう遅い。つまり、昨夜の22歳の場合、後者の言葉は「よけなお世話だ」と思っている場合に将来夢はかなう。35歳のザッパとビーフハートは後の自分たちの姿をどう想像したであろう。今日の最初の写真は『ボンゴ・フューリー』のジャケットの別テイクで。これを同作のジャケットに使ってもよかったと思うが、ビーフハートはザッパの誘いで出演したから、ザッパより目立ってはならず、それでビーフハートは顔を伏せた写真が採用され、しかも左右反転してザッパが右側に持って来られた。この左右反転は鏡に映ったふたりと思えばよく、またその鏡はビーフハートの名曲「ミラー・マン」を想起させる。その理由は別にある。アルバム『ミラー・マン』のジャケット写真はビーフハートやマジック・バンドのメンバー写真が鏡が割れたようにデザインされる。鏡は必ずいつか割れる。ザッパとビーフハートの関係は『ボンゴ・フューリー』が頂点で、それ以降鏡が割れたように交際は断たれた。『ボンゴ・フューリー』でビーフハートはホームレス同然の暮らしから脱することが出来た。その勢いで新マジック・バンドが結成され、アルバムがまた出るようになってツアーもあったが、ビーフハートは年齢の割りには枯れ過ぎて見え、また音楽に興味を失って行ったのか、作画にますますのめり込んだ。82年発売の最後のアルバムに収録される「人間トーテム・ポールの1010年目の日」は筆者が最も好きな彼の曲だが、当時42歳にしてはあまりに熟成した境地を感じさせ、その後のビーフハートの四半世紀の寿命はおまけであったと思える。ロックの世界で40歳はもう先がはっきりと見えている。ビーフハートが画家に転身し、それなりに名声を博して絵が売れたのは見事な成功であった。音楽で有名になっていたので絵も売れたのだが、どのような方法でも名を遂げ、それによって自作が売れるのであれば、それはそれでたいしたものだ。だがビーフハートの名声は40歳少し過ぎの音楽によって一般化しているのであって、その後の絵画については画集や実物を見る機会もなく、その意味で現在のところ、おまけの人生であったと言える。
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 ザッパはケイ・シャーマンと暮らしていた頃か、絵の才能を活かして装飾模様やレタリングの仕事に携わったことがある。その才能の一端は写真集『ZAPPA』で紹介されているが、ザッパはビーフハートのように作画に戻ることはなかった。10代半ばでヴァレーズを発見し、また演奏や作曲ならば負けない自信があったからだが、頑張り過ぎで53になってすぐに死んだ。その頑張り具合は今日の2枚目の写真からもわかる。これは75年秋の撮影で、自家用ジェット機の中でザッパは作曲をしている。寸時を惜しんで仕事することはボスの務めだ。それゆえにメンバーは尊敬し、ついて行こうとする。ビーフハートは常に絵を描いていたようだが、それも当然だ。それほどに好きなことに没頭しなければ目立つ存在になることは不可能だ。とはいえ、好きなことに邁進していて順調に物事が運ぶとは限らない。人生に事故はつきものだ。そのことで予定の変更が迫られる。昨日の2枚目の写真は71年の暮れ、ロンドンでの演奏でステージから客に突き落とされたザッパが足を大怪我した後に使った固定器具で、それを装着し、車椅子生活をしばらく送ったが、生前ザッパはその姿をアルバムでは発表しなかった。72年の『ワカ・ジャワカ』の裏ジャケット写真は不機嫌そうなザッパの上半身で、その背後の細々としたものに筆者は目が行ったものだが、それが地下室から外に出て撮った写真であることが、同日撮影の昨日の2枚目の地下室での車椅子姿の写真から半世紀ぶりに知ることになった。72年のザッパは療養の必要もあってがらりと音楽を変えたが、それは熟考する時間を持てたことによる怪我の功名と言ってよい。先を読む力はビーフハートにもあったと言える。82年の音楽からはもう変化のしようがないことを感じる。ビーフハートはそのことを察しながら画家への転身を望み、その準備を70年代半ばからは特に熱心にし始めた。ロックならメンバーが必要だが、絵はひとりでどこででも可能だ。その点ザッパは音楽が大がかりになり過ぎて行ったと言ってよいが、ザッパが還暦まで生きていれば、作曲家としてオーケストラの総譜を書き、いわばビーフハートの作画のような生き方をしたであろう。人生を自分だけに絞って行ったビーフハートは、ザッパの死をどう思ったことだろう。ビーフハートはカリフォルニア州の最北の海辺沿いの小さな街の病院で亡くなった。グーグルのストリート・ヴューでその街をしばし仮想散策すると、絵が売れていたので入院費に困るほどではなかったと思いつつ、ビーフハートの孤独に似合う空気を感じる。妻以外に家族はなかったようなので、その意味ではザッパとは違ってさびしい死であったが、死ぬ者はひとりであの世に行くから、金持ち貧乏人、有名無名は関係なく、みな同じく孤独だ。そして嫌々死んで行くのがまともであって、それは生の素晴らしさを思っているからだ。
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 10代で映画に強い関心を持っていたザッパとビーフハートだが、ザッパは21歳で自作のオーケストラ曲を含む映画『200モーテルズ』を世に送り、その時点で人生の頂点に立った。またロンドンに何度か訪れてイギリスのロック・ミュージシャンとつながりを持ったが、昨日の最初の写真の上は、67年のロイヤル・アルバート・ホールでザッパがジェフ・ベックに自分のギターを試してみろと勧めている様子で、写真下右は『200モーテルズ』にザッパ役で出演したリンゴ・スターとゲイルのツー・ショット、左は同じ71年にジョンとヨーコからザッパに送られた穴の開いた絵はがきで、これは71年6月のジョンとヨーコとの共演後に送られたものだろう。来春発売のサウンドトラック盤にはその共演曲も含まれるが、ビートルズやジョンのファンのうち、ザッパに関心を示す人の割合は1パーセントもないだろう。さて、写真集『ZAPPA』に絡めて思いつくまま書いているが、切りがないので今日で終えるとして、最後は今日の3枚目の写真について。このシャンデリアの下、楽器を運ぶ箱に囲まれて座るザッパは本の最後のザッパ写真で、92年9月19日、フランクフルトのアルテ・オーパにおける『ザ・イエロー・シャーク』の初演後の撮影だ。筆者は当日リハーサルを見た後、アンサンブル・モデルンのメンバーたちがこの部屋のあちこちで軽い食事をしている場面に混じったので、この写真が楽屋裏であることをまざまざと思い出すことが出来る。おそらくこの撮影直後に、筆者は息子を連れてサイモン・プレンティスさんとともに、アルテ・オーパ内のザッパに充てられた楽屋である飾りが何もない小さな部屋でソファに座ってザッパに対峙し、そして話し終わった後、ザッパと1枚だけ写真を撮った。その写真をこの写真集の最後に添付すれば、この本は筆者にとって他にはない、ザッパと結ばれる個人的な記念となる。人気が感じられないアルテ・オーパの楽屋でのザッパはかなり孤独に見える。もっとほかのいい写真があると思うし、実際筆者と映るザッパは笑顔でまた品がよいが、筆者が見た当夜のザッパの姿はこの写真に代表される枯れた雰囲気がまとわりついていた。それに引き換え、ゲイルは快活で筆者との対面を歓迎し、またムーンも終始笑顔で、アーメットやドゥイージルもそれなりに意識していることが伝わった。当時筆者は41歳であった。本の最後の写真はチェコの初代大統領となったハヴェルからの手紙だ。これは片田舎から出て来たザッパが世界的有名人となって、政治にまで影響を与えたことを示す。そして最後に8ページにわたるアレックスのクラウドファウンディングに150ドル以上を支援した人の名簿があって、そこに筆者はサイモンさんの名前を最初に見つけた。大西さんほか日本名が5,6つあるが、何度も書くように筆者の名前はない。
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by uuuzen | 2020-12-11 12:57 | ●ザッパ新譜紹介など
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