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●破損と修繕
白色で艶のない肌が穢れのなさを感じさせ、胡粉をきれいに塗ったその表面は日本の美の頂点に思える。10数年前、巳年用の紅白一対の土の置物をどこかで手に入れた。



●破損と修繕_d0053294_12093905.jpg伏見人形でもなく、無名の量産品だが、筆者は好きで、本棚の片隅に飾っていた。それが何かの拍子に大きいほうの白が落下し、大きく破損した。捨てると一対の片割れだけではさびしい。いずれ接着剤で修復するために、微細な粉も含めて破片をビニール袋に入れて別の場所にしまいこんだ。そのまますっかり忘れていたのがひょんなことで家内が見つけた。先週26日の木曜日の夜、スーパーから帰宅すると、わが家の玄関脇のガス・メーターのランプが赤く点滅していることに気づいた。昼間なら無理であった。つい最近そのメーターを取り替えてもらったばかりで、家内はその時にもらったパンフレットを保存していた。ランプの点滅は初めてのことだ。早速大阪ガスに電話すると、ガス漏れの疑いがあるのですぐに検査に行くとのこと、1時間後に業者2名がやって来た。そして1階から3階までのガス口をざっと点検した後、翌朝工事にやって来ると言い、翌日11時頃に再訪、結果夕方4時まで修繕工事が続いた。玄関に近いほうの床下のガス管が腐食し、かなりのガスが漏れていた。1階床下はコンクリートが張ってあるが、20年ほど前に裏庭にあった浄化槽を玄関前に新設される下水管に切り変えした際、床下に下水管を通すため、そのコンクリートを割る必要があり、剥き出しになった土が周辺に盛られ、そのまま床板を張った。その工事の一部始終を筆者は観察していたが、管の接続は接着剤の乾きを待たずに即座にするなど、とにかくひどい業者であった。そして家具が傷つけられたのに100万近く請求され、筆者は値引きを要求したが、床下コンクリートの上に通っていたガス管の上に土が被せられたことが気がかりになりながら、その土の始末まではまあいいかと諦めた。結局その土が湿気を含み、ガス管を腐食させた。ガス管は2,3階まで通っているが、腐食箇所のみ切り取って交換するには床をめくる必要がある。また駆けつけた業者はそういう工事はしないことになっていて、新たな塩ビ製のフレキ管を通すとのことで、2,3階はガスが使えないことになった。どうしても使いたいのであれば、ガス・メーターから新たなに金属管を2,3階に通じる階段際を這わせなければならないとのことで、そんな無粋はしたくない、2,3階はガス・ストーヴが使用不可になった。今でも床下に下水管を通した大柄で調子のいい遊び好きの男の顔を思い起こすことが出来るが、だいたい配管工事に携わる連中にはろくな者がいないという偏見を筆者は抱いている。少し器用な者なら誰でも出来る工事に法外な費用を請求し、立派な車を乗り回して豪勢な暮らしをしている者が目立つからだ。
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 さて、大阪ガスと契約しているガス緊急工事の業者2名はなかなか親切であった。特に若いほうは30歳くらいか、細身の長身で、もうひとりのやや小太りの上司の言うことによくしたがっていた。筆者は床板を丸鋸で切り取ると思い、出来るだけその切り取り跡が見えにくい場所がいいので、床下を点検する30センチ四方の点検口の際にある水屋を金曜日の朝に移動することにし、びっしりと詰まっている瀬戸物やガラス容器などを全部取り出した。その際、前述の巳年用の破損した白い置物の袋を家内が見つけた。床下に入りやすくするために床板を切り取るとばかり思っていたところ、驚いたことに30センチ四方の点検口から若者が入り込むと言う。床下の高さは30センチほどだ。そんな狭くて暗く、冷たい床下に入ってガス漏れを点検し、ガス管を切って新たにつなぐことが可能か。狭所恐怖症の筆者にはとても無理だが、そもそもLPサイズの点検口から全身を床下に潜らせて腹這いになる発想がない。それをその若者がやり、しかも数時間も床下に潜ったままであった。また一旦工事が終わったのに、始末が悪かったのか、上司に叱られながらまた着替えて床下に潜って30分ほど作業をした。床下では設置した下水管が邪魔してガス漏れが予想される箇所までは移動出来ず、裏庭に近いところでガス管を一旦切って検査すると、予想どおり玄関に近いほう、つまり土が盛られたほうからガスが漏れていることが判明し、その漏れ箇所付近から2,3階用につながっているガス管も使えないことが決定的となった。そこで筆者は前述したように、玄関に近い床板を全部切り取ってガス管を露出させ、漏れている箇所を含む最小限の管を除去して新しいものと交換出来ないかと相談したのだが、それが出来たとしても大工仕事を含み、工事費は嵩む。それにそれが出来ない最大の理由は、漏れているガス管の一部を切り取った場合、その接続部に砂などの異物が入る恐れがあって、危険だと言う。だが、床下で今回ガス管を切って新たなにフレキ管をつなぐのであるから、その理由は納得し難い。ともかく、床板を切り取らなかったので、丸1日要さずにガスは元どおりに使えるようになった。費用は人件費不要で材料代のみとのことで、4万円足す税の額で済んだ。そのお金を床下に潜りっぱなしであった若者にあげたいが、真面目な彼にはきっといい人生が待っているだろう。筆者は配管工にろくな者がいないという認識を改めた。ふたりが帰った後、巳年用の土人形を瞬間接着剤で修復した。どうにもならない箇所があって、小さな穴が開いた状態だが、紙粘土を詰め、その上から胡粉を塗れば修復したとは見えないだろう。安物のどうでもいいような置物だが、紅白揃ってまた元の本棚に鎮座している。壊れたものは修復する。人間関係ではこれが難しい。素直になれないからだ。それが老いと自覚すればいいものを。
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by uuuzen | 2020-12-01 12:10 | ●新・嵐山だより
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