「
板のような月にしか写らなくて痛々しい」「それ、親父ギャグね」「おや、アリアドネ様、お久しぶりですな。自慰ギャグで自分を慰めているのですよ」
「安物のカメラでずっと納得してるから?」「使いやすいのがいいです」「安物が使いやすいのは爺が安っぽいからだね」「まあ、そう言えるでしょうな、否定はしません」「でもいいじゃん、安っぽいと人が近寄りやすいわよ」「かな?」「侮られることもあるけど」「そうですな、否定しません」「あれっ? えらく気弱ね」「そうですな、否定しませぬ」「はははは、ずっとその調子?」「はい、否定しませんぞ」「そうか、爺も落ち込むことがあるんだ」「まことそのとおり、否定しないぞな」「で、何で落ち込んでるの?」「否定されたからです」「えっ! 誰から?」「アリアドネ様もご存じの人です」「ひどい話ね」「否定というより無視ですな」「忙しいからじゃないの?」「限度があります」「爺は気難しいからね」「いいえ、繊細と言い替えてくだされ」「同じことよ」「相手も繊細で他人の気持ちを思いやれると思っていたのに、実はそうではなかったので落胆しました」「爺も人を見誤ることがあるのね」「修行が足りませんかな」「否定しないわ」「冷たい言い方ですな」「否定しないよ」「そうか、いよいよ寒い季節になって来ましたからな」「否定しないね」「ひひひひ、ひでえ! 仕返しされてますな」「爺がさびしげにぽかんとしている姿、見ていられないからね」「いいえ、よくぼんやりしますよ」「否定したわね」「はい、そのとおり」「少しは元気になったようね」「そのとおり!」「爺はいいわよ、わたしのような話相手がいて」「そのとおり!」「ま、あまり物事を悪く考えないことね。相手にも事情があるかもね」「それはわかっておりますが、常識というものがあります」「そうね、それが言われてもわからない人はいるのよ」「指摘しても駄目ですかな」「嫌われるだけよ」「そうでもいいです!」「それが駄目なのよ、相手が子どもならいいけど、大人ならもう駄目。聞く耳を持たないわよ。場合によっては却って頑なになって爺のことをやがてあちこちで謗るわよ」「怖いですな」「そうよ、それにしても爺ほどの人を軽んじるとはちょっと信じられないわね。石と玉の区別がつかないなんて」「ま、玉に傷ということで、その傷がわたくしにはわからなかったのです」「で、傷が見えた途端、がっかりした?」「薄っぺらさを感じたのですな」「月が板のように見える場合があることと同じね」「月は丸くて奥行があるのが実体なのに、板みたいですか」「そうよ、わたしたち神と違ってそんな板人間は多いわよ」「板は板同士で痛々しい」「また、つまらない爺ギャグね」「自慰ギャグで自分を慰めるしかないからです」「そうかな、いつも自分だけ喜ぶことばかり言ったり書いたりしてるじゃん」「否定しません」「そのとおりね」「肯定します」
●スマホやタブレットでは見えない各年度や各カテゴリーの投稿目次画面を表示→→