門前払いにされるのか、「風風の湯」で体温測定が先週金曜日から始まった。37.5度以上であれば入湯出来ないとのことだ。またその日から大浴場と露天風呂を隔てるすべての窓や扉が全開になったままだ。
真夏なのでそれでもかまわないが、秋風が吹くようになれば客は困る。それに寒くなり始めるとコロナの心配が増す可能性がある。体温測定をするにはフロントに複数の係員が必要だが、今夜はホテル花伝抄に勤務する顔馴染みの年配男性がひとりで受け持っていて、体温測定はなかった。花伝抄は今夜は8割方の部屋の灯りが点いていたが、三密を避ける意味から、8割客で満室とのことだ。それらの客の多くが「風風の湯」にやって来るので、今夜は初めて見る客がたくさんいたが、いつもより1時間少々遅く出かけたこともあって、30分ほどすると彼らはほとんど消えた。残ったのが筆者と嵯峨のFさんと82歳のMさん、そして上桂のTさんという常連4人で、サウナにあまり入らないTさんを除いて、午後8時頃は3人で貸し切り状態となった。今年に入って筆者が最もよく話すようになったのがFさんで、常連客の顔ぶれは少しずつ変化して来ている。その最大の原因はコロナで、このまま何年も同じ状態で続くと思っていることが、意外なことが原因で変わってしまう。その意外なことは事故と言ってよいが、コロナに感染という事故に遭いたくないので「風風の湯」を利用しなくなったかと言えば、別の銭湯や温泉でも感染の可能性は同じはずで、最大の理由は「値段の割りにサービスが少ない」であろう。たいていの人は車を使うので、「風風の湯」でなくても他の温泉に行きやすい。Tさんは電車を使うが、Fさんは自転車、筆者と同じ町内のMさんは徒歩で、身近さが利用する最大の理由だ。それに3人ほどで貸し切り状態になることに大満足で、コロナに感染する心配もなく、どうでもいい世間話に顔がほころぶ。話題はコロナがらみのことが多く、MさんもFさんも感染すると命はないと思っているので、感染を広げている若者や夜の商売には辛辣だが、サラリーマン時代に北新地でよく飲んだFさんは、「ママは別として、働いている若い娘は人間的にろくなのがおれへん」と辛辣なことを言う。酒にも女にも関心のないFさんらしいが、10数年前に亡くなった奥さんの面影が何となく想像出来る。Mさんは酒好きで、店飲みは大好きであったが、カラオケが登場してから止めたそうだ。人の下手な歌につき合わされるのは大迷惑とのことで、カラオケがコロナ拡大の一原因になっていることに言わんこっちゃないという顔だ。ふたりとも芸術に関心はなく、筆者もその話題を持ち出さないが、世間から言えば筆者が小数派であって、わざわざそんなことを話題にはせず、年配者のFさんとMさんから話を聞くほうに回っている。自分には関係ないと思っていることでも、未知なことの門前に立つとそれなりに心は動く。
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