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●『The Mothers 1970』その2
う家族があれば真面目に仕事する。好きな仕事であればなおさらで、毎日終日仕事しても苦にならない。10年ほど前に亡くなった染色家は、京都市内の最北にある芸術系大学で教えていたことがあるが、絵が好きで入学し、学費も高額なのに、学生が少しも絵を描かないと耳にしたことがある。



●『The Mothers 1970』その2_d0053294_01274201.jpg結局アホらしくなって退職したが、何のために大学で学ぶのかと言えば、異性と遊ぶためだ。モテることが第一義で、格好ばかり気にしている。音楽でも絵画でも技術をものにするには10代半ばから徹底的に学ばなければ本当は大成しない。大学を出ると年齢的に遅い。それで技術がなければ理屈と格好で勝負と考え、今はそういう世の中だが、理屈をこねるのが苦手で思考も嫌いな者はどうすればモテるかを真剣に考え、それなりに異性に不自由せずに世の中を気楽にわたって行く。本作のディスクを収納する紙ジャケにメンバーのバス中での写真があり、ジョージ・デュークはどうやら日本人らしき女性にいちゃつかれている。恋人かグルーピーかわからないが、ミュージシャンにそういう女性にはつきもので、それでいつの時代でも男は音楽をやりたがるが、それは女も同じで、美人であれば言い寄る男に不自由しない。ジョージ・デュークのように素晴らしい演奏技術を持つ者ならいいが、前述の芸大生のように異性をモノにすることが目的ではアーティストの言葉が泣く。ところで、ザッパは自分の曲を一緒に演奏してくれるメンバーを集めるのに面接して技術のほどを見定め、難解な曲を日夜練習してこなす気力のない者は論外であった。賃金が労力に見合わないと思えば辞めればよいが、ザッパが雇ったメンバーでは麻薬がらみで辞めさせられた者のほうが多いだろう。ザッパはメンバーの私生活に文句は言わなかったが、麻薬は別であった。警察がらみを嫌ったからで、また麻薬で演奏がよくなるということを認めなかった。技術は三流、麻薬使用は一人前というミュージシャンは日本にもいるはずだが、彼らはザッパの音楽を聴かないし、聴いてもどこかで聞き知った「変人」扱いだ。だがマザーズのメンバーもザッパを変わっていると思っていたであろう。その「普通ではない」が「格好いい」と思えるようになると、本物が少しはわかり、格好いいと思っていた人物やその音楽を「普通」と感じるようにもなる。さて、本作のディスク1はベーシストのジェフ・シモンズとの共作「ワンダフル・ワイノ」(素晴らしきアル中)が3ヴァージョンが収録され、ザッパは新メンバーのジェフを気に入っていたことがわかる。同曲のアルバム収録は6年後の76年『ズート・アローズ』で、またそのヴァージョンはアルバムが冷ややかな印象が支配的でもあって、あまり目立たない。ザッパが生前に発表したヴァージョンが必ずしもファンには最良のヴァージョンではなく、没後に未発表音源がアルバム化される意味と価値がある。
●『The Mothers 1970』その2_d0053294_01281089.jpg 「ワイノ」は、73年のリック・ランセロッティが爆発的と評してよいパワフルなヴォーカルを担当した3分弱のヴァージョンがザッパ没後の『ロスト・エピソード』に収録された。それは本作のザッパが歌うヴァージョンとはかなり印象が違うが、完成度は甲乙つけ難い。ザッパはなぜ同ヴァージョンを当時たとえば『興奮の一夜』に収めなかったのであろう。リックが歌う「ゾンビー・ウーフ」があるので2曲は多いと思ったのだろうか。リックは麻薬使用が発覚し、ザッパはすぐにクビにしたが、ともかく「ワイノ」は70年にひとまず完成し、50年経て本作に収録された。3ヴァージョンはどれも5,6分の長さで、小品として無視し難い。リックのヴァージョンと違い、また76年の『ズート・アローズ』ヴァージョンと同じように、冒頭に賛美歌調のメロディがあるが、本作の3ヴァージョンからザッパの曲作りの方法が見える。それは『ホット・ラッツ・セッション』の大半の曲と同じく、ベーシック・トラックに音を重ねる手法だ。3ヴァージョンは、ザッパのリード・ヴォーカルとギター、そしてサックスがないベーシックなヴァージョン、それに低い声のザッパが珍しくも高い歌声を発し、サックスやギター・ソロを加えた2ヴァージョンで、その片方はギター・ソロを多重録音したワイルドなものだ。それがひとまずの完成で、『チャンガの復讐』に収めてよかったと思うが、毛並みがいささか違うと判断したのかもしれない。またそうだとすれば、ザッパは傾向の異なる曲を同じ時期に仕上げていたことになり、頭の中に同時進行でいくつかのアルバムの構想があった。実際70年は5月にズビン・メータのロス・フィルとマザーズは共演していて、本作のディスク1はその直後のスタジオ録音で、次の方向性が垣間見える。「ワイノ」に話を戻すと、歌詞はアル中の男が女から蔑まれるなどの醜態ぶりを描くが、本作のヴァージョンでは最後のリフレインでザッパはアル中に慈悲をと繰り返し歌っていて、歌詞は『200モーテルズ』の最後の曲「ストリクトリー・ジェンティール」につながるところがある。ともかく、ザッパはアル中にも薬中にもならず、仕事中毒であったが、傍迷惑のアル中、薬中と違って多くの人が後々まで楽しめる。「ワイノ」の3ヴァージョン収録は、ほかに目ぼしいスタジオ録音曲がなく、またザッパがこの曲をロンドンとLAで録音し、ギターを重ねるなど工夫を続けたことを伝えたいためだ。前者についてはジョー・トラヴァースが書いている。70年8月にウィットニー・スタジオで録音された『チャンガの復讐』の録音テープはテープ収蔵庫から見つからなかったとのことだ。誰かが持ち出したことになるが、それがあれば本作はギター曲「トランシルヴァニア・ブギ」などの別テイクや別編集を含んで、スタジオ録音曲はもっと増えていたであろう。
●『The Mothers 1970』その2_d0053294_01284455.jpg ディスク1の冒頭曲は題名を訳すと「赤色筒型点火器」で、ガスコンロのチャッカマンという商品名のライターを思い浮かべるが、ザッパが使っていたたばこのライターか。『チャンガの復讐』の「20本のたばこ」と対になるような曲かと言えば、本曲はザッパがギターとベースを担当し、雰囲気も全く別物だ。ドラムスは音が小さく、これはエインズリーであろう。ジェフが不在でザッパがベースを奏でたのかどうかだが、これはわからない。5分と9分半のヴァージョンが収められ、後者はギターを何度か重ねて「ひとりジャム」の趣だ。イントロはブルース調で、リフを少し変えれば、『オン・ステージ第4集』に収録された75年春のキャプテン・ビーフハートがヴォーカルを担当する「拷問は止まない」のギター・リフになる。つまり、同曲をかすかに予告する味わいがあるところが面白いが、ザッパが自身のギター・ソロを音色を変えて重ねる曲は、『ホット・ラッツ・セッション』の「アラベスク」にあって、本曲はそれをもっとワイルドにしたものだ。ギター・ソロ曲の多様性を模索していたことがわかるが、少々不満な点は、「ミスター・グリーン・ジーンズの息子」のような、即興性よりも楽譜に書かれた旋律を思わせる周到に計算されたギター曲ではないことで、一音ずつに聴き耳を立てる気にはなれない。それはいわば気楽に即興で演奏したからだが、その点において本曲はギター・ソロから目立つ演奏を集めた後年のギター・アルバムを予告しているかもしれない。ディスク1の2曲目「ローラ・ステポンスキー」は3分半で、前半の前半は73年のジャン・リュック・ポンティ在籍期のマザーズを思わせるザッパらしい変わったメロディの変拍子曲で、前半の後半は同じメロディをフロ・アンド・エディが歌い、後半はドラム・ソロとなる。後年別の曲に発展吸収されたと言ってよく、その意味で70年半ばに新たな方向を見定めていたことの証しとなる。5曲目「アイテム1」もザッパがギターとベースを担当するが、ザッパのギターは終始リズムを刻み、前半は楽譜がありそうだが、後半は気ままにテンポを替え、変調もし、ドラムスの反応を楽しんでいる。どういう曲に仕上げるつもりであったかのかわからないが、真っ先に思うのは、76年にテリー・ボジオとパトリック・オハーンとの3人で演奏した「オーシャン・イズ・ジ・アルティメイト・ソリューション」で、大枠を決めての、ギター中心のジャム・セッションの可能性の追求だ。それはジョン・マクラフリンのマハヴィシュヌ・オーケストラからの感化もあるだろう。音楽の多様性を追求する中で、当時人気を誇っていた他のバンドへの注視も欠かさず、息が合い、腕の達者な演奏家を求めた。優れた技術があればどのような音楽でも演奏出来るとザッパは思っていたに違いない。本作当時ザッパは29歳で子どもがふたりいた。真面目に仕事するしかない。
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by uuuzen | 2020-07-11 23:59 | ●ザッパ新譜紹介など
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