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●『The Mothers 1970』その1
富な音源があるため、ザッパ没後40年近くなっても毎年新譜が発売される。今回はカタログ番号116となっている。これが120になった時に、ヤマハから出たザッパのアルバムを100枚解説した本の補遺版を書きたいと思っている。



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だが、20作のみの解説では1冊の本にならない。それでビデオも取り上げたいと考えているが、それでも1冊の本では原稿量が少ないであろうから、もう10数年待てばアルバム数が150になってヤマハ本の続編が書けるかもしれない。とはいえ、それは勝手な思いで、また10数年後に筆者はこの世にいないか、認知症になっている可能性がある。そんなことを思わせるほどにザッパの未発表音源がまだまだある。オリジナル・アルバム発売40周年記念としてデビュー・アルバムから順に未発表音源総ざらえのように豪華アルバムが発売されたのに、いつの間にか50周年に追い着き、今日届いたアルバムも題名にあるように、ちょうど50年前の録音だ。長生きしているザッパ・ファンには嬉しい限りの贈り物だが、この調子でザッパ没年の1993年から50周年となると2043年で、四半世紀ほど先のことで、その時まで筆者は生きておらず、新譜を手にするごとに何となくさびしさを味わう。数年先まで発売すべき新譜は決まっているはずで、その予定が実際の発売とは多少狂ってもいいので、新譜の発売予定表を発表してくれてもいいのではないか。それはさておき、昨日アマゾンから、本作の到着が数日遅れるとメールがあったのに、その数時間後に今日届くとのメールがあった。宅配便ではなく、受け取りにハンコ不要の定形外郵便で、送料はかなり安くなったはずだ。予約時よりも813円安い5692円であったが、おおげさな凝ったパッケージではなく、おまけは小さな缶バッジひとつで、妥当な価格だろう。とはいえ、ザッパ・ファンでなければ手を出さないはずで、アーメットもザッパの音楽のミッシング・リンクを提供する義務感が大きいだろう。ザッパ没後のアルバムはすべてミッシング・リンクだが、筆者が思うに、ザッパが録音したすべての音源を聴いてもミンシング・リンクは残る。結局ザッパ作品におけるミンシング・リンクの醍醐味は、ザッパのアイデアないし実際の演奏がこれまでのアルバムからわかっていた年月をどれほど遡るかがわかることにあって、その意外性が楽しい。もちろん本作にもそれがあって、今日はディスク1のみ聴いたが、いくつか驚いたことがある。それは生前のアルバムだけでは見えず、その意味でミッシング・リンクの言葉を使うにふさわしいが、それは会場で客が隠し録りした海賊盤ではわからないスタジオ録音が相当すると言える。本作ではそれはディスク1のみだが、この1枚からでも70年半ばのザッパがどういう音楽性を目指していたかがよくわかる。またディスク1がなければ本作の価値は半減する。
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 驚いたのは端的に言えば現代音楽風の複雑なリズムの曲で、メンバーは楽譜にしたがって演奏しているだろう。そういう演奏はオリジナル・マザーズでは無理で、ザッパは高度な演奏技術を持ったメンバーを欲し、一方でフロとエディという元タートルズの主要メンバーを雇ってヴォーカルを活かすバンドを目指した。ただし、70年6月21,22日にロンドンのトリデント・スタジオでの録音を収めるディスク1では、彼らふたりの出番はほとんど「シャリーナ」のみで、まだ『ホット・ラッツ』時のギターをメインにしたバンドの雰囲気が強い。家内はフロ・アンド・エディ在籍時のバンドは、ザッパが彼らの背後に隠れて脇役になっているようで楽しくないと言うが、確かにそういう面はあって、バンドではどのような楽器よりも歌が一番目立つ。結局ザッパが生前に出したフロ・アンド・エディ在籍時のアルバムは、ほとんど彼らを前面に押し出し、自分のギター・ソロは控えめにしたが、それもあってフロ・アンド・エディがいた70年から71年末までのマザーズは、ザッパの経歴の中で別物的に際立っている。それを好むかどうかはファンでもさまざまだが、せっかくのヴォーカル専門のふたりが加入したからには、彼らの才能と魅力が最大限に出た曲ないしアルバムをザッパが公にしたことは正しかった。またその考えから本作のディスク1を聴くと、当初は第2期マザーズの方向性を迷っていたことがうかがえる。演奏が難しい曲に歌をつけることは出来るし、ザッパはしばしばそうしたが、ステージはヴォーカル曲の連なりによってなるべく勢いで一気に演奏するほうが客は楽しめる。それに演奏困難な曲をステージにかけた場合、いつもうまく演奏出来るとは限らない。それで本当は演奏、録音したいが、その可能性は将来に委ね、曲の複雑な構成という好みのこだわりは、フロ・アンド・エディを使いながらやがて長大な曲「ビリー・ザ・マウンテン」に結実した。ヴォーカル曲主体の組曲は、テープの回転速度を上げることで高音の声を得たアルバム『金こそ目当て』に前例があったから、フロ・アンド・エディを雇った理由のひとつは『金こそ…』のレパートリーをライヴで演奏することにあったはずだが、もちろんそれはフロ・アンド・エディの歌の才能を試すおまけのようなもので、新曲を書く意欲に燃えていたザッパは彼らふたりの才能をあますところなく引き出す曲を書いた。それは机に座って頭をひねったというよりも、ツアーをする間に想を得たもので、「ビリー…」も大部分はそうであろう。そして同曲はステージごとに歌に違う内容を混ぜ、ザッパの曲は日々進化ないし変化したが、そこにザッパ・ファンが魅せられる理由があり、また本作のように新譜が発売される意味もある。大部分は既知の曲や演奏だが、わずかに含まれる耳新しい要素からザッパの考えが見え、それと後年の曲との関連がわかって面白い。
●『The Mothers 1970』その1_d0053294_01374614.jpg 昨夜「風風の湯」では筆者と嵯峨のFさん以外に客はひとりしかおらず、Fさんとたっぷり話をしたが、Fさんが昔は碁が好きで、高価な碁石や碁盤まで買ったのに、あるおばさんとの勝負に負けてから悔しくてやめたそうだ。やめた別の理由は、碁盤の一部分の勝負はとてもよくわかり、最善の手が打てるのに、実際はそういう局面が盤上にいくつもあって同時進行し、全体を俯瞰しながら一手ずつ打って行く才能が自分にはないことを悟ったためだという。この話はとても面白い。ザッパの頭の中には、現在のバンドでどのようなことが出来るか、またいずれはどういう方向に進みたいかという大局が見えていたであろう。社長と社員の差はそこにある。Fさんは商社マンを50で早期退職した。与えられた仕事はとてもよくこなしたはずだが、人生全体をどのようにしたいかの見通しは多少欠けていたのだろう。サラリーマンでは無理もない。ザッパのように人生を存分な創作活動で埋められる人は幸福だ。その作品が多くの人に喜ばれ、死後も語られることはさらに幸運だが、そういう作家はごく稀だ。ザッパの作品世界の面白さは、碁の勝負のようにあちこちに広がり得る陣地が芽生えていて、それが一手ずつでどう変化して行くかがファンにわからないところがスリルであった。そして本作はザッパの囲碁の勝負におけるごく片隅の一手を見せてくれるのだが、その一手が全体の大局にとってどういう位置を占めているかをザッパ・ファンは悟って楽しむ。もっとも、それには全アルバムを聴き、またこれから発売される新譜も知る必要があるが、言い換えれば、ザッパの作家としての碁盤の一部はまだ見えていない。その未知なる部分つまりミッシング・リンクは、ザッパが音楽家として使った一手で、その内容を筆者は説明すべきだが、その細部を語る前に大局を以上のように碁に絡めて述べた。今日から4回に分けて感想を書くつもりでいるが、いつものように思いつくままの即興で、無駄な言葉が多いが、ネットで誰かが書く資料的なことを筆者は繰り返すつもりはない。曲から見える、あるいは曲からしか見えないと言い替えるべきだが、本作から見えるザッパの頭の中の面白さを伝えたいのだ。もう今日の字数が尽きるが、ディスク1の最も興味深い曲は8分半の長さの8曲目「エンヴェロウプ」だ。70年代後半にライヴで歌つきで演奏されるこの曲を70年に録音していたとは知らなかった。この現代音楽風の難解な曲をスタジオで演奏されるのを聴いてフロ・アンド・エディは目を白黒させたであろう。ジョージ・デュークやイアン・アンダーウッド、それにドラムスのエンズリー・ダンバーというテクニシャン揃いで録音出来たが、仕上がりは素朴だ。ザッパがこだわったこうした曲は、現代音楽でもポップスでもない中途半端と断じる人があると思うが、未開拓の分野に足を踏み入れない作家は悪い意味での常識人でつまらない。
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by uuuzen | 2020-07-10 23:59 | ●ザッパ新譜紹介など
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