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●『THE HOT RATS BOOK』その1
という文字を今日は冒頭に使うことになっているが、琵琶か琵琶湖くらいしか単語が思いつかない。これでザッパの話にどう関連づければいいのかわからず、歯垢諦視、いや思考停止になる。



●『THE HOT RATS BOOK』その1_d0053294_17511302.jpgそうなる理由はもうひとつある。本書はビリー・ガビンズという筆者より2歳年上のアメリカのザッパ・ファンとザッパの次男で現在ザッパ・ファミリー・トラストの社長であるアーメットの対談と、ビリーが1969年8月に撮影した100枚少々の未発表写真を収めるが、本書の最初のページに、近年よく見かける断り書きが書かれている。簡単に言えば、本書のいかなる情報もネットに載せるなという警告で、筆者は本書について書くことに二の足を踏む。本が届いて最初に読んだのはザッパの曲「緑ジーンズ氏の息子」に充てた章だ。それは170ページある本書の3分の1に相当するが、6枚組CD『THE HOT RATS SESSIONS』から得られる情報と突き合わせると大きな矛盾があることに気づいた。それは同曲にあまり関心のない人には些事だが、本書を読んで感じるザッパの本質と大きく関係していることで、筆者は無視出来ず、先日「もう思い残すことはない」と書いたことを撤回する気分でいる。アーメットが本書を出すことにした理由は本書の対談からよくわかる。それほどザッパ・ファンないし『HOT RATS』ファンには必読の書で、当時のアメリカの空気が写真からもひしひしと伝わる。アーメットはとても陽気で人懐っこく、筆者は92年に彼からチューインガムをもらったことを思い出すが、アーメットはビルからとても巧みに話を引き出し、一気に本書を読ませる役割を存分に果たしている。随所に挟まれる、ザッパが得意としたあるツアーでのキー・ワード手法を真似て、アーメットは「サラダ・トング」の言葉を持ち出し、それでビルの頭を叩こうかと冗談で言うが、それを振られたビルも負けじとその言葉をあちこちに持ち出し、漫才のようなノリでインタヴューは進む。またアーメットのビルを急き立てる関心が読者のそれと同じであるから、ビルの時を追った回答としての回想は、ビルが撮影した写真の効果が相まって、ビルの体験は読者の眼前にまざまざと繰り広げられる。ただし、ビルは当時19歳でプロのカメラマンではなく、『フリーク・アウト』を買ってザッパ・ファンになった無名の田舎の青年に過ぎず、本書の写真も無駄にだぶるカットがままある一方、せっかくビーフハートやズート・ホルン・ロロと対面して話せたにもかかわらず、彼らの写真がない。それを言えば、ザッパ家で世話になったゲイルや、またジャネット・ファーガソンなど、ザッパの取り巻きの写真もないが、ひょっとすれば本書に取り上げていないだけかもしれない。100枚の写真はどう考えても少なく、その数倍はフィルムを使ったのではないか。
 アレックス・ウィンターのドキュメンタリー映画『ZAPPA』のプレミア上映がキャンセルになったことは昨日書いたが、そのポスターの写真は本書に載っていて、ビルの行動は50年経って日の目を見たことになる。本書の出版のきっかけは2018年1月にある。このことくらいは引用してもいいだろう。当時ジョー・トラヴァースは本書の写真をPDFファイルにしたものアーメットに転送し、それをアーメットが見て早速ビルから話を聞こうと決め、やがてロサンゼルスでインタヴューが実現した。写真集ではあるが、それ以上に面白いのはビルの体験談だ。そこそこの英語力があれば1日で読めるし、またあまりに面白いので一気に読む気になる。翻訳本が出ればいいが、日本での売り上げは期待出来ないだろうし、独特のギャグのセンスを日本語にどう置き換えられるかと考えながら筆者は読んだが、ふさわしい日本語に置き換えることは読むことの何倍も難しく、また時間も要する。本書の内容を口頭で話す分には著作権を侵害することにならないと思うので、松本さんが開催を予定している『大ザッパ会2』では本書を紹介したい。話を戻して、アーメットが本書を企画したのは金儲けというよりも、半世紀も未発表であったザッパ写真とビルによる間近な観察談は、『THE HOT RATS SESSIONS』の発売と同時に公にすることがふさわしいと判断したからで、全くそのとおりで筆者は本書を大いに推奨したい。それはアーメットもビルも心優しく、またそれはザッパがそうであったことの反響と思うからだ。69年のザッパがいかに無名のビルに優しく接したか、その態度が本書から溢れ出ていて、筆者は人間がどうあるべきかと改めて本書から感じ取った。またザッパがビルを楽屋や自宅、スタジオに招いて自由に撮影、行動させたことがアーメットには大きな驚きだが、それほどザッパがビルを信頼したのは人を見抜く力があったからだ。これはとても重要なことで、有名か無名でザッパは人を見ず、信頼出来るかどうかで見た。ザッパの慧眼に狂いはなく、結局ビルの行為は半世紀後に本書となった。これは奇跡と言ってよい一方、必然であった。ザッパが信頼して受け入れた他者は、かくも長年を経てもザッパの恩を忘れず、またその出会いを昨日のごとく記憶していて、そのことを他者に伝えることが出来る。人生の最大の意味はそうした決定的な人物とどれほど多く出会えるかだ。ザッパがビルに示した優しさが本書として結実したことは、ザッパの音楽を愛する人が咲かせたひとつの大輪の花としてどのファンにも伝わるはずで、筆者はアーメットとビルの人柄に大いに感じ入った。ビルから発せられる珍しい固有名詞からは、彼がかなりのインテリであることがわかるが、その意味で本書は高尚な雰囲気をまとっていて、またそれがザッパからの反響と思えば、ザッパの人間性が照射もされる。
●『THE HOT RATS BOOK』その1_d0053294_17515183.jpg 本書には序として俳優のビリー・ボブ・ソーントンの文章がある。彼はアーメットと知り合いのようだ。筆者はボブの映画を見たことがないが、ビリー・ガビンズと同じく『フリーク・アウト』によってザッパ・ファンになった。それは10代半ばのことで、彼のその後の人生に大きな影響を与えたのだろう。彼の文章の中で最も目を引くのは、ザッパ・ファンは他者とは違う成長をし、またメインストリームから外れたところにいるという自覚を持っているという意見だ。これはビリーもインタヴューでほとんど同じことを言っている。ビリーは出版に携わり、また他のことにも手を染めているが、その端緒はザッパに最初にインタヴューした頃にすでにあった。ビリーがいかにしてオハイオからはるか遠いロサンゼルスまでザッパに会いに出かける費用を捻出したかは本書に書かれるが、思い切った先行投資が半世紀後に本書になったのであるから、人生には何度かあるしかるべき大金を使う機会をうまく逃さないことの重要性を思う。話を戻して、主流から外れているザッパ・ファンというのは日本でも同じことで、今後もそうだろう。だが主流ではないので二流とは言えない。昨夜まともには見なかったが、TVで新コロについての座談会があった。その中で橋下元知事市長が日本はスポーツに国家予算を1、2兆円費やすべきと発言していた。文化庁とスポーツ庁は今は同じ建物に看板を並べているが、文化庁の予算は減らしてもスポーツ大国にしようという考えだろう。1兆、2兆の大金がどこから出て誰に回るのかを考えると、スポーツ・ファンでも首をかしげるのではないか。筆者は芸術に多額の税金を使うべきと主張する考えを持たないが、東京オリンピックに日本でしか名前が知られない、先日東京で5000人を集めてコンサートを開いたミュージシャンが関与していると知ると、どういう経緯があったのか、またその人選が妥当なのか、大いに疑問に思う。日本で芸術は育たず、あっても彼らミュージシャンのような芸能に過ぎない。いや、実際は芸術を目指している人はいつでもいるが、彼らは目立たないし、目立つ必要もない。伝わるべき人には伝わるのであって、ザッパ・ファンはそうして今後も出現し続けるだろう。もともと芸術とはそのようなもので、作品は幸運であれば愛好者によって何百年でも伝わる。筆者はザッパと同様スポーツに関心はないが、記録は塗り替えられ、また塗り替えられれば忘れ去られる。相撲の横綱も活動中のみが花で、半世紀経てばほとんど誰も思い出さない。その意味でスポーツは芸能と同じレベルにあり、日本は芸能大国で、芸能人が力を持ち、政治家とつながって桜を見る会に喜んで参加する。それはザッパが最も嫌った行為だ。ザッパは自分の音楽を娯楽と言ったが、税金を収入として音楽活動をしなかった。本書から浮かび上がるザッパ像は清廉かつ真面目だ。
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by uuuzen | 2020-03-12 17:52 | ●ザッパ新譜紹介など
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