ろくでもないロックはあると思うが、人の好みはさまざま、ろくでもない人にはろくでもないものが似合い、ろくである人にはある種のロックが似合う。
ロックはロックでもアルコールのオン・ザ・ロックではなく、転がる意思のある石の親玉であるロックでもなく、ガンガン鳴り響くロックの音楽をマニマンは好む。マニマンはマフィンが好きで、「マフィン・マン」をよく歌うが、その曲は次のような語りから始まる。
♪マフィン・マンは大きなしゃもじで台所のテーブルの上のマフィン屑を集め、肩からも払い落としながら、呟く。「カップケーキが好きな人もいるけれど、放っておけばいい!」 マフィン・マンは得意げな態度で、砂糖シロップを詰めた先が尖った無菌の布地製の筒をひねりながら、自分でデザインした多肉的にも輝かしいマフィンのてっぺん近くに緑色のロゼッタを少し貼りつけ、そして続ける。「カップケーキ好きはいるよ。無は存在し、存在すべきと思うが、神が創ったこの味気ない地では、マフィンほどに高貴な食べ物の王子は存在しない!」……。それで、マニマンはろくでもない夜明け前の暗がりをひとりで散歩しながら、「マフィン・マン」を歌っていると、目の前に金色に輝く臭いの山があることに気づき、それが何かと一瞬立ち止まって、「?」と思考を巡らす。金色の山は当然と言わんばかりにマニマンの内心に「!」と訴え、マニマンは夢から目覚める。「危うく二次元の金色の糞を踏みつけるところだったマニ」 そう安堵して台所に行ってアメリケン粉を取り出し、アンド・バター・アンド・卵・アンド・砂糖と必要なものを順に揃え、マフィンを作り始める。「カップケーキが好きな人もいるけど、マニマンはマフィンだマニ。でも今しがた夢で見た金色の山の糞を象ればろくでもないかもマニ」 そう呟くと同時に、マニマンの頭の中にアメリケンのロック曲「マフィン・マン」のメロディが流れ始め、マニマンは自分のことをろくでもあるとうきうきし始める。こんがりと焼き上がった金色の山は香ばしく、マニマンは早速面白がりながら朝食としてその三次元の糞の形のマフィンを頬張る。「神が創ったこの味気ない地では、マフィンほど高貴な食べ物はない!」 そう歌いながら先ほどの夢で見た金色の山形糞はいったい誰がしたものかと思いを巡らす。「きっとろくでもない馬鹿がしたんだ。けど、鹿の糞はころころとした小粒だから、馬しかないか。そうだ! 馬糞だ! あれまあ、マニマンはマフンのマフィンを作って食べた! まあいい、まあいい。いずれマフン・マフィンもフンになる。この神が創ったろくでもない地は、フンだらけでフラワーだらけ。ろくでもないことがあればロックでもないこともあり、ろくでもあるロックもある。人の好みはさまざまで、カップケーキが好きな人もいるけど、今日のマニマンはろくでもないことにマフン・マフィンを焼く」
●スマホやタブレットでは見えない各年度や各カテゴリーの投稿目次画面を表示→→