摂氏10度のオレンジ色の数字が松尾橋西詰めのデジタル気温計に表示されていた。昨日は午後4時に家内とスーパーに買い物に出かけた際にそれを見た。気温が1桁になると寒く感じるが、2桁では冬の感じはしない。
今年の秋はかなり暖かく、嵐山の紅葉はさっぱりであった。「風風の湯」の大浴場に露がたまれば筆者は大きな円を右手で描くが、毎年それは10月中旬には可能になるのに、2週間は遅れた。寒くなるのが2週間は遅くなり、また寒さもさほどではない。それでここ4,5年は干し柿を作っていたのに、今年は断念した。業者が暖かいので失敗する怖れがあると言っていたからだ。確かに冷たい風が昼間でも吹かねばならないのに、夜にもそんな風は感じないから、渋柿は乾燥する前に腐ってしまうだろう。そう言えば嵐山で渋柿を吊るしている家を見かけたことがない。どうにか干し柿が出来てもおいしくないからだろう。さて、最近はもっぱら渡月橋をわたって嵯峨のスーパーに行くが、少し遠方を含めると5か所ある。普通は最も近い2か所だけで買うが、最も遠方を除いて4か所を回ることがたまにある。家内ともども両手にずしりと重い買い物になるが、毎日ではない。昨日はほとんど1か月ぶりに梅津のトモイチに行った。どこで買っても同じような価格と思うが、家内の好きな菓子類は100円ほど価格が違うことはよくあるらしい。わが家が松尾寄りにあれば、渡月橋をわたって嵯峨に買い物に行くことはまず考えないが、昔は梅津に住んでいたので、嵯峨よりも少し遠いと感じながらもたまには梅津に行く。ただし、物集女街道と四条通りは車の往来が激しく、空気が悪いうえに危険だ。それで梅津のムーギョがなくなってからは足が遠のいた。昨日は本当は松尾駅の裏手の桂川右岸の土手を歩いて上桂のスーパーに行くつもりであったが、家内はそのさびしい土手を歩くのを嫌がる。風もきついからだ。それで梅津に向かったが、帰りは同じ道を歩まず、すでに2軒のスーパーで買い物をたくさんしていたが、トモイチ前を北進して三条通りに出て、そこからいつもの嵯峨のスーパーに行くことを提案した。ところが、日暮れがとても早い。梅津中学校脇から有栖川沿いの土手道に出た時はもうほとんど真っ暗であった。その土手道を斜めに北西にしばし歩く必要があるのだが、あまりに暗いので擦れ違う人の姿がほとんど見えない。気味が悪いこともあって、今日の最初の画像の地図で言えば、「く」の字型をした赤い線を進むべきなのに、ひとつ手前の橋をわたった。そこから北進しても三条通りに出られると思ったのに、結果は惨状で、地図の右上の青線をたどって大映通りに出て、そこからひたすら西進むして渡月橋に戻った。地図の赤いAとBが梅津にある2か所のスーパーで、Bはトモイチ、Mは今はないムーギョだ。そこから淡い黄色の道をたどると三条通りに着くのに、Bからジグザグに青い線を進んだ。

その淡い黄色の道は「千代の古道」と20年ほど前に命名され、右京区の有志が宣伝に努めている。その道をたどれば有栖川沿いの土手を危なく歩く必要はないし、従姉の家の近くも通るのに、どういうわけか筆者はこれまで何度もトモイチ前の道に入る。それでも有栖川沿いを600メートルほど進めば「千代の古道」に出る。家内は後ろから「その橋をわたったら違うところへ行くんとちゃう?」と大声で怒鳴ったが、筆者は方向転換しない。方向音痴であるのに、当てずっぽうでどんどん先を行ってしまう。暗い中を歩きながら、山梨県のキャンプ場で行方不明になった女子児童のことを思った。あの事件の時はまだ明るかったから、人の姿が見えなくなると心細くなって道を戻ると思うが、誰かに声をかけられたのかもしれない。話を戻して、橋をわたって北方向に進んだと思ったが、帰宅して調べると、東へ向かった。全く反対方向だ。それでも有栖川の次の橋までの200メートルほどは、細道で舗装されておらず、街灯も家の灯りもなく、真っ暗だ。誤って道を踏み外し、4、5メートルほど下の川底に落ちたかもしれない。その200メートルの土手道を避けたために600メートルほど遠回りをしたが、見知らぬ道なのでもっと距離があると感じた。橋をわたって200メートルほど行くと、左手に明るい施設があり、若い母親たちが自転車で子どもを迎えに来ていた。蜂ヶ丘保育園で、名前から太秦であることを知ったが、そのまま先に進んだ。すると各戸の灯りが点いた大きなマンションがあって、道が分かれていた。家内がそこで追い着き、「どうするの?」と大声で怒る。マンションの前を直進したが、今日の2枚目の写真の小さな神社があった。これを最初の地図上に赤い鳥居マークで記した。写真はグーグルのストリート・ヴューから加工したもので、真正面で撮影された画像がなく、それに最も近い5年前のものを選んだ。狛犬が立派で、カメラを持って来なかったことを悔いた。とはいえ、あっても真っ暗なのでほとんど写らない。家内はしきりに誰かに道を訊けと背後で言うが、やがて70代の散歩中の男性が声をかけてくれた。真っすぐ進むとコンビニがあり、その先が三条通りとのことで、方向は間違っていなかった。コンビニは大映通り沿いにあった。その道はよく知っている。地図の赤いCは立ち寄ったスーパーで、大魔神が店前にある。家内は嵐電に乗って嵐山に戻ると言ったが、渡月橋まで2キロもなく、風もない。嵐山は花灯路の予行演習のためにライトアップされていた。家に着くと6時50分で、3時間弱散歩した。地図に道筋を記すと、わが家から梅津のスーパーまでは、復路は「千代の古道」を歩けば、往路と距離があまり変わらない。それにしても梅津と嵯峨野、太秦の境界は碁盤目状の道ではなく、迷路のようで、「迷うのは あたりまえだの テセウス爺」