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●京都下京 磔磔にて、渚にて
留している放射能は、風によっていつか世界に満遍なく散らばって気にする必要がなくなると思うが、福島原発で現在貯蔵を続けている汚染水を大阪湾で流すという話はその後どうなったのか。



●京都下京 磔磔にて、渚にて_d0053294_22455076.jpg
安全であるのでどこで流してもいいという理由であったが、安全ならなぜタンクに次々と溜め込むのか。そうせずにそのまま海に放流すればいいではないか。どうしても取り除けない種類の深刻な放射線があって、それを海に流すのは、海が広大とはいえ、流す場所に放射線が一時は滞留する。それがプランクトンの体内に入り、生物間の食物の連鎖によって人間にやがて影響が出る。増える一方の汚染水タンクを思うとげんなりするが、大部分の人は自分の生活に追われ、専門家に任せておくしかないと思う。さて、12日に三番目に登場した「渚にて」というバンドは男3人に女性ひとりの4人編成で、「数えきれない」の「あずみ」さん曰く、彼女らより一世代上だそうだ。40代半ばだろうが、50前後かもしれない。ドラムスはもう少し若く見える女性で、彼女をメインにしようという考えから、「本日休演」の演奏が終わった後、ドラムスのセットが舞台の最前列に移動させられた。1時間弱の間に8曲演奏され、彼女がドラムを叩きながらリード・ヴォーカルを担当したのは2曲で、他は上手のギタリストの男性が歌った。背後にスキン・ヘッドのキーボード奏者が陣取り、彼はしきりに体を揺らしながら演奏したのが印象的であった。強面だが、金森幹夫さんが顔馴染みで、演奏終了後に金森さんと言葉を交わす様子からは人柄のよさが伝わった。「渚にて」と聞いてアメリカ映画を思い出す人は筆者の世代より上と思うが、この映画を筆者は40年ほど前にTVで見た。核戦争があって、放射能で汚染された地域が増え、人類は滅亡に瀕している。そういうさなか、どこからともかくモールス信号が届き、人が助けを求めているのではないかと、男女混合の数名の部隊が救援のためにその場所に赴く。すると、コーラの瓶がモールス信号機に被さり、風に吹かれて信号を送り続けていた。核戦争が終わった後の悲惨な状況であるのに、登場人物に必死な様子はなく、なるほど「覆水盆に返らず」で手のつけようのない大惨事の後はそのように人間はあっけらかんとするものかと思った。それは福島原発に汚染水貯蔵タンクが今も増え続けているのに、ほとんど人はそのことを思わずに生きていることからもわかる。放射線は見えないので人間は呑気でいられる。誰しもは自分に関係のないことにはあまり関心を持たない。「渚にて」のバンド名はその映画から採られたと思うが、そうだとすれば世代がわかるし、また理由を訊いてみたい。「渚にて」の邦題は英語では「ON THE BEACH」で、同名の曲を同映画の後にクリフ・リチャードが歌ったが、「渚にて」のバンド名はそれを訳したかもしれない。とはいえ、音楽性はかなり違う。
●京都下京 磔磔にて、渚にて_d0053294_22461899.jpg 曲の合間にリーダーであるギタリストが近いうちに新作アルバムを出すと語った。当夜のレパートリーはその新作紹介を兼ねてのもので、半分ほどは初めて演奏したのではないだろうか。筆者には新旧の曲の区別がつかないが、それはどの曲もきわめて似ているからだ。それは意図してのことだろう。16ビートのアップ・テンポの曲は最後近くにドラムスの女性が一曲歌った切りで、その分彼女は他のメンバーより若いことを感じさせたが、その曲もリーダーが書いているかもしれない。1時間近い演奏で8曲はどれも比較的長い。これは繰り返しが多いからだ。演奏の終盤、筆者は心地よく聴いている自分に気づいた。大船に乗ったような気分になったからだ。それで「渚にて」ではなく、「大船にて」を思うが、彼らの音楽性を端的に言うと「渚にて大船に乗った気分」ということで、はるか沖を行く大船に向かって歌っている雰囲気がある。これが年齢的なものゆえか、リーダーの人柄がもっと若い頃からそうであったかだが、どちらもであろう。話を戻して、リーダーの歌は最初の数音からよく耳につく。基本的に一小節に音符が4個というとてもゆったりとした歌で、またどの曲も3、4個の音の連なりを基本としてそれを数度上げ下げして延々とメロディを紡いで行くので、いくらでも長く引き伸ばすことが出来る。雰囲気は全然違うが、ビートルズの「ヘイ・ジュード」の最後のリフレインを思えばよい。他に似た曲がないかと考えるに、黒人霊歌の和製版を思う。「思い出の曲、重いでっ♪」のカテゴリーで取り上げた曲に「PRAISE IS WHAT I DO」がある。同曲の後半はリフレインが長く続き、次第に参会者はみなその部分を一緒に歌って陶酔感に浸る。繰り返しの音楽を通じて神への感謝の念を抱くことは日本でも古来行なわれて来た。念仏踊りがそうだが、「渚にて」の音楽はあからさまなダンス音楽ではないものの、体を大きく揺らして聴くにはちょうどよいテンポで、またサビの部分もさほど鮮明ではなく、ずっと一本調子でメロディがうねうねと上下して行く。それは渚にて見る海の波のようで、聴いている間に心地よくなって来る。一本調子はどの曲にも言えるだけではなく、どの曲も同じキーに聴こえるほどにリード・ヴォーカリスト好みの音がある。たとえばC#を基準にA,Bと下がった3つの音を基本としたり、あるいはG#を中心にF#とBを使ったりして、何度も繰り返される基本的なメロディを作り、曲の最も覚えやすい部分としている。そして1曲が長いので、聴き終えた時にはそれら3音の基本的メロディは頭から離れない。それが心地よさの理由だが、これはミニマル音楽の影響と見ることも出来るが、ミニマルの言葉に内在するモノクロの冷たさとは無縁で、むしろ神々しさや陶酔、歓喜を意図しているように思え、旋法を使った讃美歌に近いだろう。
●京都下京 磔磔にて、渚にて_d0053294_22463973.jpg 歌は先の3音を基調に、オクターヴまでは高くはないが、かなりの高音に移り、よく聞きとれる声で朗々と歌い上げる。ポール・マッカートニーの曲にはそうしたものが多いが、「渚にて」のリーダーは歌とギターの二刀流をうまくこなしている。ギター・ソロは歌のメロディをほとんどなぞるもので、即興はほとんどないようだが、曲の後半にそれが長く演奏されると、また違ったファンがつくだろう。「PRAISE IS WHAT I DO」では黒人のギタリストが即興で長いソロを披露するが、それが後半の合唱とは別の聴きものになっている。ともかく、「渚にて」の歌を一緒に歌える人は声に自信がある場合で、その目いっぱいの高い声を出しているところがまた音楽が持つ陶酔感を自他ともに表わしているが、これはビートルズにはよくあったことで、「渚にて」は60年代の音楽っぽいとは言えそうだ。だが、明確にサビとそうでない部分から成るビートルズの曲からは遠いだろう。最初の曲ではキーボードはパン・フルートの音色をかなり大きく奏でたが、このバンドにはキーボードは欠かせない。彼の演奏中の身振りが派手なことは、彼らの音楽が陶酔志向であることとメンバーの仲のよさを示すが、紅一点のドラムマーはいささか毛並みが違っていた。彼女は演奏も歌もあまり上手ではなく、ぎこちなさが個性で魅力と言ってよいほどだ。彼女が歌った2曲もギタリストが歌う曲と同じく、数個の音で基礎的な旋律を作り、それを次々に変化させて行くもので、やはりいくらでも長く演奏出来るものだ。また終わり方は唐突と言ってよく、余韻を残さないそういう終わり方しかないようにも思えるが、音を長く引き延ばしておおげさに終えるのはあまりに芝居じみていると思ってのことかもしれない。そこにミニマル音楽的なところがあり、また一種の未完成さもある。そして曲を聴いて陶酔の境地に誘われればいいが、歌い方や声質によってはそうとは限らない場合もある。陶酔している人を見て同調するとは限らず、却って冷めてしまうことはよくあるからだ。「渚にて」の音楽性が和製の讃美歌的と形容すれば、はどこかの新興宗教を信仰しているのかと突飛なことを想像するが、そうでなくてもそういう要請はあるのではないか。それほどに何か美といったものを讃えているバンドのように感じる。それは物事をポジティヴに捉えることであって、誉められこそすれ、決して非難されることではないが、どういう作品にも冷めた目を持つ人があり、そうであるから新興宗教への批判もある。それを「渚にいて航行する大船を他人事のように思う」とたとえると、福島の増殖する汚染水タンクを他人事のように見つめる態度を思うが、「渚にて」の演奏を知らない人には彼らの演奏は他人事であって、筆者のこの投稿もそうなるが、わざわざこういうことを書くのは、「渚にて」という含蓄に富むバンド名であるからだ。
by uuuzen | 2019-10-20 23:59 | ●ライヴハウス瞥見記♪
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