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●大阪西成 難波屋にて、TN0202
しみを込めるように「風風の湯」でよく話す70代数歳のFさんがこう言った。「自治会なんかの活動に熱心な奴はろくなのがおらへん」。そばに桂の自治連合会の役職をしている人がいたので、筆者はその言葉に無反応でいた。



●大阪西成 難波屋にて、TN0202_d0053294_00051700.jpg筆者は割合何でも乞われると断れない。あるいは引き受けるとそれなりに別世界が覗けるという思いもある。実際のところ、筆者も自治会や自治連合会の行事などどうでもいいと思っている。そういうものに参加せずとも、いくらでもひとりで好きな時間を過ごせるからが、大半の人は無意識にしろ、孤独を抱え、人と接することを求める。人それぞれで、筆者はそれを否定するつもりは全くない。この1年近く、金森幹夫さんの誘いによってライヴハウスにたまに行く。そこには演奏者と客がいる。双方に出会い、また観察すると言えば大げさだが、いろいろと思うことがある。それによって自分の人生が大きく左右されることは、70近い年齢ではもう全くない。筆者は展覧会に行くことを20歳頃から続けているが、ライヴハウスで音楽に接することは、演奏という作品を味わうと同時に、演奏者の姿を目の当たりにし、美術鑑賞よりはるかに生々しい。それはさておき、ライヴに訪れる客は、目当てのミュージシャンないし好きなジャンルがあって、客同士が顔見知りになることがままある。今日取り上げるライヴは、9日の金森さんのメールで武田理沙さんがバンドの一員として出ることを知り、翌日見た。神戸で篠田桃紅展を見た後、阪神尼崎から難波に出て、地下鉄で動物園駅まで移動し、二、三度歩いたことのある商店街を7,8分歩いたところに移転しての仮店舗の難波屋はあった。この店では小林万里子さんがたまにライヴをしていた。彼女のブルースに西成は似合っている。金森さん以外に3人の顔馴染みが訪れ、1時間40分のライヴの前半後の休憩で5人で談笑した。難波屋には舞台と呼べる場所がなく、客と同じ高さの、また間近で演奏を見る。これがライヴの醍醐味だが、それは目当ての演奏者が出演している場合だ。またライヴ客はたいてい若いミュージシャンを目当てにするだろう。それに若い演奏家のほうが小規模のライヴハウスではよく演奏するのではないか。ともかく、客はどの演奏者にも後光が差しているとは思えない。そのことを自覚する演奏者は、個性を強調するために着飾るなど、それなりの見栄えの演出をする。ライヴは非日常空間であると思っている聴き手は特にそう思うだろう。ただし、難波屋といった下町の店ではそれに似合う服装があるし、また客も芸術を鑑賞するという気位はなく、せいぜいカラオケの延長として音楽を楽しむ。そのため、途中で入って来た客は「レット・イット・ビー」をリクエストした。流しの歌手ならそういう要望に応えるが、今日取り上げるTN0202というバンドはオリジナル曲を歌う。それでその客の声をさりげなく交わしていた。
 TN0202(ゼロニゼロニ)というバンド名は、チラシに由来が書いてある。「2月2日生まれでユニットを組んだ。それは“比類なき音楽”の扉を開くモノだった!」そしてギター兼ヴォーカルの南谷朝子、ピアノとノイズの武田理沙、ベースの星智佳の3人の写真が載るが、もうひとり中野督夫というギタリストが加わった4人編成だ。中野は病いで休養中、星は到着出来ず、南谷と武田のふたりの演奏となった。大半は南谷が歌い、武田はそれを伴奏で彩ったが、南谷が武田を紹介するのに「天才」という言葉を使い、南谷の演奏と歌をカラフルに引き立てていた。また武田は数曲をソロで演奏し、歌いもしたが、来月彼女の演奏を大阪で見る予定にしているので、今日は彼女については触れない。チラシによれば南谷は東京日本橋の生まれで、大学時代から女優として活動し、舞台を中心に映画、TV、ラジオなどで活動中だ。シンガーソングライターとしての初ライヴは2004年で、2007年と2012年にアルバムを発売した。初アルバムの題名は『しゃんそん』で、これは日本のシャンソンを意図してのものだろう。そこに女優としての経歴を重ねると、彼女の音楽性のおおよそがわかるだろう。つまり、大いに語るように歌うというスタイルで、実際声はとても響き、よく聞き取れた。この点は武田は大いに学ぶべきだろう。南谷は白髪の多さから、中野と同じ60代半ばと思うが、武田や星は30代前半で、年齢差がかなりある。武田さんに訊かなかったが、彼女にすれば武者修行の思いが強くてさまざまな音楽家と共演を重ねているのではないか。南谷は小柄で、当夜の服装は普段着と言ってよく、白のスニーカーにジーパン、白のTシャツの上に袖なしの小花模様の地味な色の膝丈ワンピースを着ていた。また休憩を挟んだ後半はニット帽で髪全体を隠した。女優、シャンソンとなれば、だいたい衣裳に凝るという気がするが、南谷の服装は西成の場末にふさわしい演出としても、生活具合が覗き見える気もした。男なら、また小林万里子のようなブルースならそれもいいが、すぐ横に若い武田がいると、その好対照にこのバンドのちくはぐな印象が露わになっている気がした。それが「比類なき」と言えば確かにそうだ。よく言えば多様性、けなせば雑多性は、演奏にも言える。武田が自曲で演奏する音は南谷が奏でるそれに比べてはるかに多彩で、そのジャズ的な洒落た音は南谷の世界に時にそぐわない。もちろんそのことを南谷はよく知っているので、武田を「天才」と認めるのだが、武田は南谷のどこに魅せられているのだろう。南谷は高校生の時に陸上競技をしていたとのことだ。ギターをかき鳴らしながら全力で歌う圧倒的な迫力は、体育会系にありがちな陽気さ、楽天性、また誰とでもすぐに親しくなる優しさがない混ぜになったものだ。そこに武田は魅せられたのではないか。
 南谷は何度か中野の名前を口にし、敬愛ぶりがよく伝わった。当日中野の顔を印刷したCDかチラシを見たが、その優しい仙人のような雰囲気に南谷が魅せられるのはよくわかる。後半にカヴァー演奏した「ミスター・ボージャングル」の前に、彼女は同曲を歌うと中野を思い出すと語った。カヴァーは前半に「ラヴ・レター」も歌ったが、そのほかジョージア(旧グルジア)の友人についての曲や「悟り世代」という題名の曲など、さまざまな「愛」についての曲で、そこはシャンソンから学んだのだろう。シンガーソングライターで充分な生計を立てることは困難で、若手は別の収入のための仕事を持ちながら時間を見つけて音楽活動に勤しむ。そこにはサラリーマンだけの人生に我慢出来ない自我がある。収入が不安定で、またいかに少なくても、自分の思いどおりに時間を使い、好きな人と交友する。その一例が南谷で、長年続けて来たからにはもう辞めることは出来ず、そのつもりもないであろう。それに自分の創作がより多くの人に届くに越したことはないが、まずは自分が満足することが第一で、人前で歌う時は至福の境地に違いない。だが、人前に姿を晒すことはその情報量の多さによって、観客は夢心地の一方で現実を認識し、夢が壊れる場合もある。これは舞台が客席から隔離され、一段高いところにある場合は話が少々別だ。そういう舞台では出演者は非現実性を意図して着飾る。それで客は夢を感じ、自分たちとは違う世界の人であることを思う。となれば、難波屋での南谷は、客にとって手の届かない人としてではなく、客と同じ目線で物事を見、考え、そして人生を前向きに、心で泣いても顔は笑っているという生きる勇気を与えることに自身が生きる力を得ているのだろう。アンコール曲は「自由に」という題名だったと思うが、自由になろうって言って来たのに、回り道をして来たという歌詞で、今ひとつ歌詞の真意はわからなかったが、人生において自由はままならず、誰でも回り道をするということか。筆者は「自由」という言葉をあからさまに聞くのは恥ずかしい。青臭いからだ。筆者は気ままに生きて来たが、篠田桃紅は「自由とは自らに由る」と言う。それは「他者には由らない」ことで、芸術家として孤立している彼女らしい解釈だ。孤独を恐れない者はもともと自由で、「自由になろう」とはまず言わない。最初に書いた辛辣なFさんは高齢のシンガーソングライターをどう思うだろう。「ろくなのはおらへん」と否定すると思うが、一方でFさんは「風風の湯」の常連を「みんな変人」と言う。その意味を訊ねると、「普通のサラリーマンはこんなところの常連にはならへん」 高齢になるともう人間性は変わりようがなく、そのまま突っ走るだけだ。南谷の歌う様子を見ていてもそう思う。ただし、篠田桃紅のように106歳まで人前で歌えるだろうか。そこに芸能と芸術の若干の違いがある。
by uuuzen | 2019-10-15 23:59 | ●ライヴハウス瞥見記♪
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