●壁画コンテストと1枚の古い店のウィンドウ写真
たくさん夢を見た。ブログで何を書くかは大体1週間から10日分の材料は常にある。だが、それらの半分は自分が求めて得たものではない。たとえば展覧会に訪れるのは自分の意思だが、その展覧会の開催は自分とは関係がない。



展覧会の開催を知るのはたいていはチラシによるが、最初に知った時のことはよく記憶しているもので、それが自分の好みのものであればなおさらだ。これはどんな新聞でもそうかどうか知らないが、読売の場合は、毎年正月に1年間に開催される主な展覧会の予定発表がある。東京でのみ開催のものが目立つので、いつも悔しい思いをするが、それでも正月早々何だか気分がよい。そのような大がかりな展覧会でなくても自分が関心ある展覧会の開催を知ると、実際に会場に足を運ぶまでは心が温かい。そんなことの代表としては、先日伊丹市立美術館を訪れた時、1階のソファの前の壁に、大津市歴史博物館で3月から開催される『大津絵展』のポスターを見たことがある。大津絵のまとまった展示としては最初のはずだが、筆者としては柳宗悦の本を読破して以来、もう35年も待っていたものだ。そんな待ちに待った展覧会であるので、ポスターを見た時は、街中ではっとさせられる美女に行き違ったような衝撃を受けた。そんな美女は2、3年に1度しか見かけないが、つまりそれと同じほどの稀な経験であった。その後チラシを京都で何度も見かけるようになったが、最初に見たポスターが脳裏に深く刻み込まれ、それを思い出すたびに早く見たい思いが募る。それで今日は日曜日なので、家族3人で車で思い切って見に行こうかとも考えたが、TVのスイッチを入れると琵琶湖畔でマラソンがある。きっと大津周辺は車が混雑するし、しかも今日は春めいた陽気で、窓を開けっ放しにしていても寒くないどころか、かえって暖かい空気が部屋に流れ込んで来るので、人出は多いだろう。話がそれているが、つまり筆者のブログ内容は偶然の支配が多く、その点においては夢も同じで、今日は書く内容を決めていたにもかかわらず、夢を見たために、こうして予定を変更することが自分にとっては面白い。そして、夢と現実の区別がつかなくなるのが、文章を書く段でどこまで許されるのか、そんな危ういような思いに囚われないでもない。今書いている現実描写の部分の文字を青くし、反対に夢部分を黒文字にすればどうなるかといったことを随分前からよく想像しつつ、そんな試みもいずれは採り入れて行くことも考えている。具体的にどんな方法として現われるのかはまだ想像がつかないが、現実と夢が交差、交換したよう文章構成に突き進んで行かないとは言えないと、自分の中を覗き込んで思ったりもする。さて、たくさん見た夢の後半部分だけ書く。

見知らぬ郊外を歩いている。緑の木々が見える。春の日差しだ。眩しいほどに木々の向こうの川面がきらきらしている。さきほど近所のある男性と通りを挟んで話をしていた。相手の顔は見えないが、町内の河川の防水工事に関して相談を受けていたのだ。その用事か一応終わって散歩中の筆者はとある会館に入る。中は暗い。すぐに40代の男性が目の前に現われ出て分厚い本を1冊手わたしてくれる。「これ、お探しになっていた本です」「あ、どうもありがとう。でも今持ち合わせがないです。置いててください。また取りにお伺いいたします。いくらですか?」「5000円です」。その男性は30年ほど前に工房に毎月本を届けてくれていた人で、律儀な感じがそのままだ。会館の中を奥に進むとさらに暗くなる。急にとある部屋に立っている。目の前に暖炉、その前には白いカヴァーのかかったソファ・セットが置かれ、女主人が暖炉を背にして座っている。金持ちのマダムといった感じで、たばこを盛んにくゆらせている。マダムの前にはスーツ姿の50代の男性がひとり座って、マダムと話をしているが、いかにも狡猾そうな表情のその男は作り笑いをしながら、マダムの機嫌を取っている。そんな様子を筆者は立ったまま、男のやや右方向の背後で眺めている。マダムも男も筆者にはまるで気づかない様子だが、筆者は用事があって来たのだ。マダムがあるコンテストを開催中で、その応募要綱をもらうためだ。だが、そんなものはなく、面接あるいは直接の実技で選ばれるようであることを察する。スーツの男も実はそうした応募者のひとりなのだが、マダムに個人的に取り入って自分の評価を上げてもらい、自分の案を採用してもらおうとの魂胆であるらしい。そのコンテストとは、今立っているマダムの豪華な洋間の壁面に絵を描くことだ。その壁は筆者のすぐ右手にある。つまり、筆者は右に壁、左前方に背を見せる男、その向かいにマダム、その背後に暖炉を見るという位置にいる。そして誰とも言葉を交わすことなく、筆者は右手の壁を見上げ、次の瞬間その壁にしがみいて立っている。白い大理石のつるつるした壁で、床から2メートル上方にある。幅3メートル、縦1.5メートルほどの大きさで、まだ乳白色のままだ。その壁面周囲は同じ大理石で額縁のような出っ張りの装飾がある。出っ張りの下辺が床から2メートルの位置にあって、そこに筆者は足をかけて壁面にしがみついているが、出っ張り部分は幅が10センチほどで、靴の前半分しか乗せられず、とても危ない。こんな状態で壁画を描けるはずがない。足場を取りつける必要があると、内心マダムのけちな根性に腹立たしく思っている。そうこうしながらも、壁がつるつるしているので手のつかみどころがなく、出っ張りに不安定な状態で長くは立っておれず、床に下りる。
 マダムと男は相変わらず談笑しているが、急にマダムは男の背後に見つめながら、ある中年女性に声をかける。その女性はすでに以前コンテストに受賞して、同じような壁画を装飾したことがあるのだ。「あの時描いてもらったあのお花、とてもよかったわー。あ、そうそうこれがその時の作品の写真よね」とマダムは言って、何枚かのイラストをテーブルのうえに広げる。どれもみな葉をたくさんつけた木を描いたもので、葉は青や水色などの寒色系をしている。写実風ではなく、アール・デコっぽい模様的な絵だ。筆者はそれを見ながら、たいした作品ではないと思っている。いつまでもこんなところにいても面白くないので、くるりとマダムに背を向けて部屋を出ようとすると、マダムが誰かを叱責する。左手にある先ほどの壁面を見ると、そこには中学生の同級生だったAが壁にへばりついて絵を描き始めている。よくぞ足場もない状態であのように描けるものだと思っていると、マダムは何やらAに注文を発していて、Aは眉間に皺を寄せて戸惑いながら描くのをストップしている。白い壁に描かれ始めたばかりの絵は、大小の丸い葉っぱ模様が10個程度集まった塊で、青や水色で描かれ、まだ絵具が乾いていないのでテカテカして見えている。あのような水彩系の絵具のようなもので描いても大丈夫なのかなと筆者は思っているが、それよりもあの壁全体を描き尽くすのにどれほどの時間を要するだろうと心配している。そう思いながら、部屋を出ようと前方に向き直すと、背後からスーツ男が追越しざま、Aにこう言う。「そんな連続模様は型を使えばいいんだよ! 型を使えっ、簡単に型を使てってしまえばいいんだよ!」。それを聞き流しながら、男が実はマダムのお気に入りで、無監査の存在であり、かつて同じ壁面を2日で描いたことを自慢していることに気づく。
 ふと前方を見ると、そこは扉がなく、そのまま大きな会場になっていて、人がたくさんいる。とても暗い場所で、人はたくさんいるはずなのに、みな影のようだ。そこでは古書祭りをしていて、人ごみの中、デコラ張りの支払いテーブルがすぐに見える。何人かが本を買ってその前に並んでいるが、筆者が目をとめたのは、ある人が料金を支払うためにその場所に持参した古書だ。それは本ではなくて手描きの図案集で、A3サイズの20枚ほどの紙が綴じられずに束ねてある。テーブルの折りたたみ椅子に座って料金を受け取る男がそれをチェックしながらぱらぱらとやると、その中のひとつずつの図案が筆者の目に飛び込んで来る。それは筆者が描いたものではないが、かつて筆者が描いたかもしれないような、そしてどこにでもあるような葉をつけた樹木のデザイン画だ。トレーシング・ペーパーに鉛筆やフェルト・ペンで描かれたものもあって、用のない人には何の価値もない。ふと気がつくと、筆者と肩を並べてさきほどのスーツ男が左側でその図案集を見ていて、筆者に語るともなく言葉を発している。どうもそれを買ってマダムの試験に合格したい様子だ。急に筆者とその男は立ち場所を変えて別の場所で本の山を前にして語り合う。「やっぱり冬の間に樹木はせっせと写生してしまわないと駄目ですよ」「葉がたくさん芽吹くと、枝が覆われて見えなくなってしまうしね」「そうですよ、冬なら枝は裸ですからね」「枝振りは木によってみんな違うから、葉よりも枝をしっかり描かなくてはどうしようもないです」「葉は後からどうにでもなるんです。肝心なのは枝です。それが骨格ですからね。絵の骨格は枝をよく見なくてはね」。といったように妙に意見が一致するが、筆者は内心もう春が訪れていて、枝が見えなくなりつつある季節の到来に慌てている。うかうかしている間にまた1年が過ぎ去るからだ。枝の写生の必要があることはよくわかっているが、冬場のその仕事は辛いものなのだ。だが、そんな冬場にこそ春の準備をしておかなくてはならない。にもかかわらず自分はそれを怠っていて、とても恥ずかしく思っている。そう思いながら別のコーナーに進むと、そこでさきほど本屋の男性が持参したのと同じ大型の分厚い本を見つける。確か5000円だったなと思い、ポケットを探ると紙幣が1枚出て来た。広げると聖徳太子が印刷された5000円札だが、とても大きくてA3サイズほどもあり、今までに見たことのない豪華なデザインだ。それを両手で広げて支払うが、ふと見ると相手はさきほどの本を持参してくれた男性だ。結局ここで買うことになったなと思いながら、本は重いので、後日受け取りに行くことにしてまた別のコーナーに行く。すると暗い大きな部屋から一転して、品がよく明るい古書店に中に入っている。
 店の奥には縦長のガラス窓がいくつか平行して見えていて、向こうの景色は散策するのによい森だ。古本屋特有の埃は全くなく、高級なアンティーク・ショップの雰囲気だ。ガラス・ケースの中に整然と並んだ古書はみな革貼りの洋書で、どこも高級感に満ちている。と、急にある中年女性が筆者の背後から息せき切って入り込んで来て、1枚のセピア色に変色したキャビネ・サイズの古写真を筆者の目の前のガラス・ケースのうえに置く。ケースの背後に店の主がいるのだが、女性はその1枚の写真を買おうというわけだ。筆者の眼前にあるその写真を見つめると、透明な袋に入っているのは先と同じだが、カラーに変化している。戦前の京都のある店のウィンドウを撮影したもので、ガラスの照りがうまく写り込んでいる。向こう隣の店の看板も少し見えるが、そこには白地に黒で書かれた筆文字の漢字がいくつか並んでいるものの、どういう店かはわからない。ただし、とても古い店で、「○○○富商店」という文字や住所の断片が見える。女性はこう言う。「これ、たぶん昔のわたしの店の写真で、とても珍しいので買うつもりなんです」「どこでそうだとわかるんですか」「いえ、ウィンドウに飾ってあるモノの元型がわたしの家に保管されているからなんですけど、たぶんそうじゃないかと思って。本当はこの隣の店の看板の文字がはっきりとわかれば、これがわたしの昔の店かどうか判断出来るのですが…」。ウィンドウに飾ってある商品は土製の仮面だ。えびすさんが3点、大黒が1点、そのほか何の仮面かわからないものが2、3点ある。縁起ものばかりだが、商品見本であるにもかかわらず、半数は色が褪せたり、またほとんど着色されずに古ぼけた肌色1色に見えている。それらが1本の木の枝のようなハンガーからぶら下げられ、みんな別々の方向を向いている。さらによく見ると、一番下に1点、宝珠の形をした仮面があることに気づく。それは顔ではないので仮面とは言えないが、他の仮面と同じような製法によるものだ。色は濃い赤と黒、そして金の3色で、漆塗りのように光沢がある。中央に大きな宝珠、その上部に小さな宝珠が冠のように鈴成りに5、6個並んでいる。不動明王の象徴的存在のように見える。それを見ながら、ぜひこの仮面がほしいと女性に呟くと、女性はこう言う。「家を探せばきっとその型もあると思いますから、それで作ることは出来ますよ」。それはありがたい、ぜひともこれは入手しなければならない。こんな変わった宝珠の仮面はもう二度と手に入らないだろうと思っているところで目が覚めた。


いつものように、この夢で思い当たることはたくさんある。だが、そこからもれているものもある。それはマダムの存在だ。どこかで出会った顔ではないが、似た店を訪れたことは何度かある。そのマダムに気に入られるように壁画コンテストに応募しようとしたことを夢の中では恥じているが、それは芸術ではなく、あくまでも商品として売れるものを扱っているマダムに対する気持ちからだ。だが、そんなマダムの周りには尻尾を振って集まる人が多い。たいした作品ではないのに、ただマダムが気に入りさえすれば、それは高級な商品としてそこで値打ちがつけられて売られる。自分はそんなこととはかかわり合いたくないという思いで店を出たのだが、自分が追い求める仕事に自分が邁進出来ていないことを知ってまた恥じている。春が来ているというのにさすらい続けるばかり。まともな仕事が出来ていないことに対する自省の念が生んだ夢に思える。
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by uuuzen | 2006-03-05 17:31 | ●【夢千夜(むちや)日記】 | Comments(0)


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