人気ブログランキング | 話題のタグを見る

●当分の間、去年の空白日に投稿します。最新の投稿は右欄メニュー最上部「最新投稿を表示する」かここをクリックしてください。

●京都上京 喫茶ゆすらごにて、ワンナイトジェラシーズ
でる楽器がトランペットのように口を使う場合、歌いたくてもその出番は少ない。ハーブ・アルパートはトランペットで有名になった後、なかなか味わいのある声で歌を担当し、そのシングル盤「ジス・ガイ」が大ヒットしたが、歌いたいのなら、管楽器よりもギターのほうがいい。



●京都上京 喫茶ゆすらごにて、ワンナイトジェラシーズ_d0053294_22292946.jpg
派手な身振りをすることも可能で、格好よさに憧れる若者はギターを上手に弾きながら歌いたいと思う。その代表がプレスリーやビートルズだが、ギターを弾かずに歌うだけのミック・ジャガーを意識したのが日本のタイガースのジュリーで、そこからは最も格好よくて目立つのはリード・ヴォーカリストであることがわかる。今年4月に西院で見たBLONDnewHALFは、楽器を担当しないヴォーカリストがバンドの中心になり、その激しい歌声がバンドの大きな特徴になっていた。先月28日に喫茶ゆすらごで見たライヴでは、そのヴォーカリストともうひとりの男性とのデュオが二番目に出演した。向かって左に立ったヴォーカリストが「家出ジョニ―」、右が「ほりゆうじ」という名前で、そのほりさんが別のバンド活動をしているのかどうか知らないが、ふたりで組む場合は「ワンナイトジェラシーズ」という名前だ。この「一夜の嫉妬」から「一夜のSHIT」を連想すると言えばあんまりだが、そういう駄洒落を思い起すほどに笑いを誘う場面が多々あった。それは主にほりさんのコミカルな動きによるが、ジョニ―さんもBLONDnewHALFの時とは違って、終始朗らかで、リラックスしていた。ほりさんが全部作曲していると思うが、歌詞の一部はジョニ―さんが書いているかもしれない。ジョニ―さんは高い声のヴォーカル担当で、ほりさんはエレキ・ギターとパソコンから鳴らすテクノ的の安っぽい伴奏、そしてジョニ―さんとハモって低い声で歌うか、合いの手を入れたが、ジョニ―さんにはない、観客の笑いを誘う身振りを大きな特徴として付け加えなければならない。それはギターを弾く時ではなく、パソコンに保存してある伴奏音を鳴らすのに合わせた振り付けだ。その「カラオケ・ダンス」と呼ぶべきものは彼の作曲を引き立てる大きな要素になっている。どういうことかと言えば、伴奏に合わせて奇妙な踊りをするものではなく、ヴォーカルにおける「口パク」というフェイクの方法と同じで、伴奏を実際に奏でているように見せかける「エア・プレイ」だ。だが、本人はその時として滑稽に見えるその動きをどれほど意識しているかとなると、半ばは無意識であろう。またそれゆえに大いに好感が持てるのだが、ザッパがかつてアルバムの題名とした「音楽にユーモアは属すか?」という疑問に対して、ひとつの「イエス」という答えを提示している。そのユーモアはライヴかそれを収録した映像を見なければわからないかと言えば、そうではなく、歌詞にもふんだんに笑いの要素は込められている。
●京都上京 喫茶ゆすらごにて、ワンナイトジェラシーズ_d0053294_22300572.jpg 最初の曲でほりさんはエレキ・ギターで伴奏したが、2曲目ははがき大のタブレットを持ち、それをペンでなぞりながら音を発した。前述したように、また筆者は演奏後のほりさんとの談笑で知ったのだが、その装置で音を奏でているのではなく、客には正確に見えるように、音に合わせてペンをタブレット上で動かしている。それはジョニ―さんと横並びに立ち続けるには、何か動作をしなければ面白くないとのサービス精神によるだろう。ショーとして楽しいものを提供するというその態度に人間性と音楽性が端的に表われていて、関西人ならではの優しさと言ってよい。ほりさんはギターを弾きながら歌えるし、そこに打ち込みの伴奏を加えれば、ひとりで充分多彩な音楽を披露出来るが、やはり歌声の存在は大きく、ほりさんひとりではどうしようもない声をジョニ―さんが提供している。つまり、ふたりは必要最小限の合理的な編成だ。ところで、ふたりは白黒の横縞のTシャツを着ていて、この漫才師にありがちなペア・ルックは視覚性にも気を配っているためであろう。金森幹夫さんが演奏後にジョニ―さんに指摘して筆者は気づいたが、ジョニ―さんは赤の横縞の靴下を履いていた。黒と赤の横縞で揃えるという考えは、ゆすらごでの演奏が畳部屋で、靴を脱いで演奏しなければならないことから判明したのであって、彼が邪(よこしま)であったからではない。脱線ついでに書いておくと、昨日のゆすらごの外観写真からもわかるように、この喫茶店は緑色の調度品が目立つ。グラスやストローも緑で、また店員のエプロンもそうであった。そのこだわりにジョニ―さんとほりさんのデュオとしての見栄えはよく適合していて、そこに京都らしい様式性を見ることも出来る。それを話し始めると脱線がひどくなるのでこれ以上は書かないが、要は客に印象深く見せるために見栄えを考えていて、そのこだわりが内面に及んでいる。話を戻すと、ほりさんの偽タブレット上のペンの動きは、パソコンからの音の高低やグリッサンドに合わせたもので、そこにはパソコンで作った音はいつどこで鳴らしても同じ機械すなわちロボットの演奏であり、それが面白みに欠けるので、身振りを加えるという考えに至ったのではないか。また最初から安っぽいテクノ調のロボット音を意図し、その選択を自ら増幅して嘲笑することをエア・タブレット行為で明示していると言える。そこには機械と人間との共同作業というきわめて現在的な相が見えている。ほりさんがパソコンで用意した伴奏音は常に同じで、それに添えるほりさんの身振りも慣れるにしたがって客に対しての見せどころは定まってロボット化して行くであろうが、それが技術的に完成したと言えるかとなればそうではない。ここにはツアーに明け暮れたビートルズがやがてそれを辞めてしまったことに通じる、画一性に耐えられない表現者の問題がある。
●京都上京 喫茶ゆすらごにて、ワンナイトジェラシーズ_d0053294_22304809.jpg
 ほりさんのエア・タブレット・プレイを含む客前での身振りは、ロボットが奏でる音にぴたりと沿うことを前提とはしているものの、ロボット音に合わせられないミスは生じるであろうし、意識的な即興を交えることもあるはずで、この機械と人間の共同作業による悲喜こもごもがこのデュオの大きな持ち味だ。かつての漫才では、楽器を演奏し、自分たちのテーマ曲を持っているグループがよくあった。言葉の掛け合いに演奏を加えたショーで、そういう伝統をほりさんは意識しているだろう。またその伝統を知る世代でもあるが、もちろんほりさんは音楽家で、しかも「見せる」ことと「笑い」を大いに意識している。それはギター片手に歌って若い女性を喜ばせるのとは少し違って、予期せぬ滑稽さを晒してでも音楽を楽しんでもらおうとする態度だ。漫才を思わせたのは、彼らの25分程度の演奏の最初の曲が「ワンナイトジェラシー」という言葉を含み、また最後の曲はテーマ曲とのことで、題名が「ワンナイトジェラシー」であったことだ。これは25分程度の音楽版のスタンドアップ・コメディと称してもいいほどで、それほどに演奏曲目が選ばれ、並べられていたが、大半の曲は1、2分程度と短かった。またテクノ調ロボット伴奏であるから、決めた演奏曲順にギターを鳴らし、歌う必要があるように思うが、ボタン操作ひとつで伴奏の選曲は出来そうであるから、ある程度は曲順に柔軟性があるだろう。またどの曲もごく短いので、多くのレパートリーを持っていると思うが、テクノ調ロックンロールに、歌詞はヘルメットやワイン、健康サンダルなどについてのおかしなもので、筆者はそこにCMソングとの馴染みやキダ・タローの後継者的な才能を思った。一方でライヴハウスに集まるロック通に合わせた歌詞の曲として、例外的に倍ほどの長さのあった「ディー・ディー・ラモーン」が印象深かった。これはラモーンズというパンク・バンドを知らなければあまり笑えないが、彼らのバンドはメンバー全員が「ラモーン」という名字で、「ディー・ディー・ラモーン」という名前のベーシストが「ラモーンズ」というバンド名を発案した。ワンナイトジェラシーズはベーシストを加入させるならそのディー・ディー・ラモーンをと歌うのだが、その結論の前段階の聴きどころで、ジミ・ヘンドリクスやボブ・ディラン、ジョン・レノン、また日本での有名なミュージシャンと彼らにまつわる有名なエピソードに順に言及する。テクノ音楽はクラフトワークのように長々とした演奏に大きな特徴があるが、そのミニマル性を本当の意味でのミニマルで表現するのがワンナイトジェラシーズだ。彼らは繰り返しの永続によって聴き手の意識や感覚を麻痺させることとは正反対の立場にあって、どの一瞬も聞き耳を立てることを強いる緊張と、そこに混ぜる「落ち」によって笑いを意図する。ほりさんのような音楽家は珍しい。
by uuuzen | 2019-10-02 23:59 | ●ライヴハウス瞥見記♪
●京都上京 喫茶ゆすらごにて、... >> << ●京都上京 喫茶ゆすらごにて、...

 最新投稿を表示する
 本ブログを検索する
 旧きについ言ったー
 時々ドキドキよき予告

S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30
以前の記事/カテゴリー/リンク
記事ランキング
画像一覧
ブログジャンル
ブログパーツ
最新のコメント
言ったでしょう?母親の面..
by インカの道 at 16:43
最新のトラックバック
ファン
ブログトップ
 
  UUUZEN ― FLOGGING BLOGGING GO-GOING  ? Copyright 2025 Kohjitsu Ohyama. All Rights Reserved.
  👽💬💌?🏼🌞💞🌜ーーーーー💩😍😡🤣🤪😱🤮 💔??🌋🏳🆘😈 👻🕷👴?💉🛌💐 🕵🔪🔫🔥📿🙏?