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●『ZAPPA IN NEW YORK 40TH ANNIVERSARY DELUXE EDITION』その3
黒福造の声は一度聞けば忘れられない。そういう声は珍しい。それで声優という職業がある。声がよければ美女美男子に思われるので得だ。



●『ZAPPA IN NEW YORK 40TH ANNIVERSARY DELUXE EDITION』その3_d0053294_22554732.jpgザッパが雇った人物の中で『ザッパ・イン・ニューヨーク』にのみ登場するナレーション担当のドン・パルドは、その声質が喪黒福造を連想させるが、彼はザッパの望むとおりのことを存分にこなし、『ザッパ・イン……』を印象深いものに貢献している。ただし、同アルバムは彼の声はわずかに「イリノイの浣腸強盗」で登場するのみで、たったその役割のためにザッパが雇ったとは考えにくかった。やがて同アルバムの発売からカットされたは「パンキーズ・ウィップス」の冒頭でドンが大いに語っていることを知って納得したものだ。そのカットされた曲は本作ではディスク5の6曲目に「Unused Version」として収められているが、これは78年発売の2枚組LPに本来含まれるべきヴァージョンとの意味で、初CD化に際してザッパが収録した同曲とは違う。つまり、ザッパはワーナー・ブラザーズがカットしたヴァージョンを使わず、ギターを随所に加えた新ヴァージョンに代えた。そしてその新ヴァージョンは本作には含まれない。この辺りのことはジョー・トラヴァースはよく考えている。現行の『ザッパ・イン……』はザッパ自身が初CD化したものを踏襲しているが、その2枚組CDを所有している人が5枚組の本作を買っても、同じヴァージョンがなく、またそれだけに音の比較がいろいろと楽しめる。このことは『オーケストラル・フェイヴァリッツ』とその40周年記念盤との違いと同じで、本作は『ザッパ・イン……』の素材となっている。つまり、オーヴァーダビングのないライヴ・ヴァージョンが収録されるのだが、コンサート後にスタジオで音を追加などしなくても充分に迫力のある演奏をしていたことがわかる。また一方ではザッパが音を追加する必要を感じたところに、作品を絶えず磨き続けようとするこだわりが伝わるのだが、これはやり終えた仕事に常に満足しなかったためだ。またそういう思いはどのような作家にもあって珍しいことではないが、ザッパの場合、同じ録音を元にどれほどの異なるヴァージョンを作ったのかがファンには全くわからず、その底知れない謎は本作を聴いてもなお残るどころか、増したと言える。その理由を述べよう。たとえば初CDの「パンキーズ……」は、本作で正式に初めて紹介される「Unused Version」に比べて鋭いギターの音色が増やされ、重厚感が増しているが、その味わいは『ザッパ・イン……』に収録された「ソファ」にもともとあったもので、本作の同曲のヴァージョンにはそのギター音はない。つまり、最初のアルバム『ザッパ・イン……』の発売に際して「ソファ」にギターを追加したが、その発売後にも「パンキーズ……」にギターの音を重ねた。
●『ZAPPA IN NEW YORK 40TH ANNIVERSARY DELUXE EDITION』その3_d0053294_22560596.jpg 『ザッパ・イン……』は4日間の同じパラディアムでのコンサートから最良のテイクから選曲され、また時にスタジオでギターが重ねられたと思えばいいが、4日間の全演奏を聴かないことにはファンはそのことに納得しないだろう。それほどに本作に収められる曲は『ザッパ・イン……』の残り物とは思えない。たとえば同作の「パープル・ラグーン」は、途中のソロ・パートでザッパは自分のギター・ソロをオーヴァーダブした。ザッパ自身による解説では、背後の打楽器が退屈であると感じたのでギター・ソロを挿入したとのことだ。その打楽器はルース・アンダーウッドが担当したが、スタジオでの打楽器のオーヴァーダビングにエド・マンが参加していて、その曲かまた箇所がどれかはわからない。ともかく、追加したギター・ソロ・パートの背後の伴奏は音が急に小さく変化し、いかにも加工した不自然さがあって、筆者はオリジナルのヴァージョンをずっと聴きたいと思って来た。そして本作にはふたつのヴァージョンが収められる。ひとつは主題の後にメンバーのソロではなく、管楽器による「ANY KIND OF PAIN」が演奏される。これは一回限りの演奏であったとのことだが、「ANY KIND……」は12年後の88年ツアーで歌詞つきでレパートリーとなる。もうひとつのヴァージョンは『ザッパ・イン……』と同じく主題の後に各メンバーのソロが続くが、最初のトロンボーン・ソロに沿うベースは「クルージング・フォー・バーガーズ」のリフを奏でるところがまず『ザッパ・イン……』とは大いに違う。同作のヴァージョンと同じ音を使っているのはベースのソロのみで、また本作のベース・ソロのほうが少し長い。ということは、『ザッパ・イン……』ヴァージョンは少なくてもふたつの演奏からつなぎ合わせ、そこにさらにギター・ソロを加えたもので、そのギター・ソロで消したソロが何の楽器であったかだ。同作のヴァージョンはテナー・サックス、ギター、バリトン・サックス、ベース、トランペットの順にソロが展開されるが、前述のようにベース・ソロ以外は本作には収録されず、これらの楽器順にどのテイクも演奏されたとは限らない。一方、本作のソロはトロンボーン、マリンバ、テナー・サックス、ベースの順で、またややこしいことにベース・ソロの後はリズムが変わってマリンバによる「ビバップ・タンゴ」が始まる。そこで想像するに、ザッパがギター・ソロを重ねた元のソロはマリンバによるものではないか。ではルース・アンダーウッドは自分のソロが消されてザッパのギターに化けたことを悲しく思わなかったかどうかだが、彼女は『ザッパ・イン……』を制作するに当たって後にスタジオで大いに役割を果たし、そのことがジャケット内部に記されるので、軽んじられたとは思わなかったであろう。
●『ZAPPA IN NEW YORK 40TH ANNIVERSARY DELUXE EDITION』その3_d0053294_22562657.jpg 本作のディスク2、3、4はそれぞれ「ボーナス・コンサート・パフォーマンス」と題されてそれぞれがひとつのショーとして曲が配置されているが、ブックレットによれば4日の演奏からバラバラに選ばれている。ジョーとアーメットが相談して選曲と曲順を決めたのであろう。ディスク5は「ボーナス・ヴォールト・コンテント」と題され、他のディスクとは少し様子が異なるが、これは明日述べる。まだ全部のディスクをじっくり聴いていないが、気づいたこととして、『ザッパ・イン……』の「ソファ」は前述のように本作のそれと違ってザッパのギターが加わったヴァージョンである以外に、演奏が終わった後、管楽器を中心とした即興の騒々しい演奏が付属している。この部分は本作に収録されておらず、どの曲から持って来て「ソファ」の最後にくっつけたものかわからないが、これはザッパのハンド・シグナルによる演奏のはずで、似たメロディはディスク2の最後の「モンタナ」にあるので、おそらくその別ヴァージョンの最後を切り取って「ソファ」の最後に持って来たのではないか。また『ザッパ・イン……』では1曲でしか登場しなかったドン・パルドは本作ではたっぷりと聴くことが出来る。その中で興味深いのは、以前このブログに書いたように、『ザッパ・イン……』のイタリア盤に収録される「パンキーズ・ウィップス」のその始まり方で、それがやや唐突な印象がするが、本作ディスク2ではその前にザッパの語りが1分半ほどあり、それが終わってすぐに演奏が始まるので、イタリア盤はいわば演奏としては全部を収めていたことがわかる。つまり、唐突に感じるが、そのような形をした作品だ。またドンの服装は『ザッパ・イン……』のジャケット見開き内の小さな写真からわかっていたが、本作のディスク3のジャケット写真では舞台の下手から登場する彼の姿が見える。また『ザッパ・イン……』に載った彼の写真は本作のブックレットでは他のメンバーもそうだが、管楽器奏者よりも大きく掲げられ、本作では重要な位置を占めていたことがわかる。管楽器奏者も彼もザッパは12月11日にTVショーの『サタデイ・ナイト・ライヴ』に登場した時に出会い、同じ日にドンとは「アイム・ザ・スライム」で共演している。さすがに有名なショーだけあって、その付属バンドの管楽器奏者は本作で手慣れた演奏ぶりを示した。そうしたショーを通じてザッパの音楽の面白さがもっと広がればよかったが、本作のディスク4の2曲目「アメリカの最も偉大で新しい知られざるグループ」でドンは高らかにザッパを紹介する。これはドンが勝手に考えた言葉なのか、ザッパが書いたシナリオなのかわからないが、喪黒福造の皮肉や風刺を込めた表現ではない。「知られざる」という表現に謙虚さがあるが、「新しい」は全くそのとおりで、「最も偉大な」も本作をじっくりと聴く者には理解出来るはずだ。
●『ZAPPA IN NEW YORK 40TH ANNIVERSARY DELUXE EDITION』その3_d0053294_22572366.jpg

by uuuzen | 2019-09-20 22:58 | ●ザッパ新譜紹介など
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