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●大阪難波ベアーズにて、蒸発都市
たった距離が大きいほど実感が伴ないにくい。それで恋人が別れる時はどちらかがすぐに会えない遠方に移住するとよい。そうすれば最初は苦しくても1か月、1年と経つ間に思い出してもあまり心が痛まなくなる。



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だが、21世紀になってネットやスマホのお陰で遠く離れていても身近にいるような錯覚に囚われる対話が画面上で可能となり、たとえばライヴに行かなくてもYOUTUBEによって過去の演奏の様子がわかる。それはリアルタイムではなく、ライヴハウスの中の濃厚な音でもないが、おおよその雰囲気はわかる。そしてそういう映像に慣れると、ライヴ演奏を間近で見た時、新鮮な感動を味わいにくいだろう。レコードはライヴとは別物であってもひとつの現実で、また記録された現実であるので繰り返し味わうことが出来て、そこにそれなりの実感が伴なう。それはライヴを見る時の客観とは違う客観で、ライヴさえ見れば用なしというものではない。また、対象から距離を大きく隔たったところにいるとライヴの実感はないが、冷静に眺めることは出来るし、それは対象の本質を知る手立てにもなる。それに、ある出来事の現場に居合せられるのはごく限られた人で、その何百、何千倍もの人がその出来事から何年も経って記録されたものからその出来事の実態を知り、想像するしかない。さて、先月25日のライヴで最後に登場したのは和歌山在住の若い男性だ。ベージュ色のベレー帽を被った彼は、「2o2」の演奏が始まる前に筆者の左手の壁際の長椅子に座り、筆者としばし目が合った。かなり遅れてやって来た客かと思ったが、ステージに立った時に出演者であることがわかった。2,3分ほど腕鳴らしをした後、演奏を始めたが、今日の最初の写真のようにエフェクターをたくさん使い、またメロディらしきものがない即興の連続で、その歪み、軋んだ悲鳴のような音は休みなく20分続いた。演奏者はへとへとになったであろうが、5組を連続で聴いた筆者はさらに疲れたであろう。そのため、彼の演奏はあまり覚えていないが、幸いYOUTUBEにいくつかの演奏が投稿されていて、記憶をたどれば、それらとほとんど大差ない演奏であった。となれば、最も古いYOUTUBE映像が2012年の演奏であるので、ここ7年はスタイルを変更せず、同じ曲を同じように演奏していると見てよく、またそのことは彼の演奏が完成していることを示す。これは即興演奏でありながら、どのように弾くか、どのような音色にするかはだいたい決まっていることであって、身振りを伴なうその演奏の型を保持しつつ磨き続けて来ていることは、演奏が純化して来ていると言ってよいだろう。それは手慣れによるマンネリに陥りかねないが、演奏の途中で立ち上がり、やがて被っていたベレー帽を床に叩きつけた。それは変化に乏しそうな演奏に激越になるクライマックスを意図していることを示す。
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 「蒸発都市」は劇画の題名のようだ。映画の題名あればドキュメンタリー作品だろう。都市の蒸発は広島の原爆を想起させるが、その後大きな自然災害があり、2011年の東日本大震災は原発事故を伴なって現在もその大きな傷口が塞がらずに、国民の意識に大きな影を落とし続けている。「蒸発都市」がいつから現在のような即興演奏を始めたのかは知らないが、東北大震災が契機になったとすれば、そういう若い音楽家がいることに感心する。実際、歴史的な大きな出来事に際して芸術家が無力というのは情けない話で、20世紀がピカソの『ゲルニカ』を生み、日本では原爆に対して丸木位里と俊夫妻が『原爆の図』を描いたことを思えば、また小さな空間で小人数の客に音楽を披露するミュージシャンであれば、もっと社会的なことに関わった思いを込めた作品を提示していい。ただし、これは「蒸発都市」を現代の大災害、大きな人災を見据えての名称かと思う筆者の想像で、彼は「遊園地」という名称でもかまわないと思っているかもしれない。そこで彼が何を思い描いて演奏しているかだが、歌詞のない音楽から聴き手が何を思うかは全くの自由で、たとえば彼が東北大震災をイメージしてほしいと言っても、それとは別の何かを思う人もある。そこで筆者は「蒸発都市」の名称とその音楽からジョン・ゾーンの「ネイキッド・シティ」を思い出したが、ジョンのそのバンド名は、アメリカの写真家WeeGee(ウィージー)の写真集の題名からの借用で、またその写真集からギャングが抗争で射殺された写真をアルバム・ジャケットに使っているので、「裸の都市」とは暴力に満ちた殺伐とした街を意味していることになる。そこに「蒸発都市」を併置すると、やはり大災害に見舞われる、見舞われた危険な日本を想像してしまう。そしてそのように思って彼の音楽を聴くと、ホラー映画かギャング映画に似合うようで、それは現在のひとつの交響詩と言ってもよいものだ。ギターを交響させると言えば去年亡くなったグレン・ブランカの作品を思い出すが、百人のギタリストが一斉に奏でるというアホらしくて途方もない彼の作品とは違って、「蒸発都市」はいかにも日本的な質素さで、ひとりでギターをいわば無茶苦茶にかきむしって悲鳴を上げさせ続ける。ギターを女体の象徴とすればそれはあまりにサディスティックな奏法だが、そういう不協和な音でしか日本の歴史始まって以来の大災害時代の真実を表現出来ないとも言える。それは災害に遭った人の、災害を間近であるいはニュース映像で目撃した人の驚きの表現であり、もっと優しい音楽で鎮魂や癒しを表現すべき云々の意見はまた別の話だ。ただし、繰り返すがそれは「蒸発都市」を都市が消えるほどの大災害に見舞われる日本に絡めての想像で、彼の音楽から遊園地のジェットコースターの怖い楽しみを思い浮かべる人があるかもしれない。
●大阪難波ベアーズにて、蒸発都市_d0053294_00420395.jpg 彼の演奏からジョン・ゾーンの「ネイキッド・シティ」や同時代のCDを今日は片っ端から聴き、ビル・フリゼルによるギターの即興に似た部分があることを改めて知った。それらは同時多発テロの7,8年前の1990年代初頭の音楽で、前述のように戦前のアメリカのギャング抗争の写真など、社会の暴力性からイメージを触発されたものだ。また美術や文学に関心が深く、過去のあらゆる名作から題名や曲名を借りているが、筆者はそのスノビズムが鼻につき、肝心の音楽がそうした名作の域に達していないと思って来たが、90年代初頭から四半世紀経って聴き直し、彼の音楽は日本の30代のミュージシャンにそれなりに影響を与えていることを感じる。時代が遠く隔たったことでよく見えて来たのだが、その伝で言えば「蒸発都市」の音楽がよくわかるのは10年後であろう。ところで、ジョンは架空の映画のための音楽を書くことにのめり込み、「ネイキッド・シティ」もそのひとつの活動であったが、音楽で視覚を感じさせたいとの思いは「蒸発都市」も同じではないか。ジョンが関心を寄せた暴力は、セックスのそれも含み、人間対人間のもので、またユダヤ系の彼はホロコーストに大きな関心はあっても、日本のような大地震や大津波に触発された曲はないだろう。それに彼は子どもの頃にギターを奏でたことはあったが、サックス奏者で、一緒に演奏したビル・フリゼルは前衛音楽的な即興演奏を得意とするよりかは楽譜に忠実な情緒を重んじるギタリストだ。これはジョンもそうだ。彼の即興はオーネット・コールマンの曲を倍の速度でコピー出来るほどの技術力で裏打ちされたもので、「ネイキッド・シティ」はメンバーの息が見事に合ったところが聴きものだ。「蒸発都市」のようなひとりでの演奏であれば、また楽譜に数多く作曲し、その演奏でもよく知られるのでなければ、趣味としての演奏と目されるだろう。それがつまらないと言いたいのではない。ギターの即興となれば結局はデレク・ベイリーが先駆けで、現在のようにエフェクターが多種多様でない時代、つまり半世紀前に「蒸発都市」を思わせる演奏をしている。ベイリーは即興を考え続け、実践し続けたギタリストで、その多彩な作品群は今も膨大なヒントがあるだろう。「蒸発都市」は空き缶の蓋をピック代わりに使い、それで指を切るのではないかと思わせたが、ギターの弦をぶった切ってしまいそうなその激しい演奏はひとつの個性だ。先ほど「ネイキッド・シティ」の『LENG TCH‘E』(凌遅)と題する、清朝末期、親を殺した罪で生きたまま四肢を刀で切られる男の写真をジャケットに使ったその音楽を今日は聴きながら、6人で大がかりに演奏している割にやはりつまらないと感じ、一方YOUTUBEで「蒸発都市」の演奏を聴きながら、最近多発している自動車事故や肉親間の殺人事件から命が蒸発するものであることを思った。
by uuuzen | 2019-07-05 23:59 | ●ライヴハウス瞥見記♪
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