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●咲いた花、咲かない花
動になっているお笑い芸人の闇営業だが、不倫や薬物などいくらでもネタがあって、芸能記者は年中特需景気で多忙と思うが、そういう記者の中でも芽が出ない者と売れっ子がいるだろう。



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お笑い芸人は吉本だけでも6000人ほどいるそうで、一花咲かせようと必死になっている若者が日本中から集まる。そういう芸人の中で今話題になっているMは年収1億円ほどとやらで、そういうごく一部の成功者を目指して他の大多数がひしめき合う。ところがほとんど頂点に立って大輪の花を咲かせたかと思えば、昔のスキャンダルで一気に落花する。今の有名人とはそういうもので、芸と呼べるものがさしてない虚飾まみれの人気者だ。またそうなれば、誰も長年培い続けている芸などわからず、また求めもせず、ただただ顔と名前が広く知られると成功者と目され、大金を吸収し、当然のごとく闇社会の連中も寄って来る。Mにしても6000人の中から抜きん出たとはいえ、大きな組織が背後にある。その恩恵で有名になったのであって、代わりはいくらでもいる。その使い捨て感覚がTVの面白くない理由だが、大多数の人々つまり経済的にも教養も貧しい人たちが無料で楽しめるTV文化とは本来そういうもので、TV文化全盛は歴史的に見て貧困が空前の規模で蔓延した時代にほかならない。家内の長男の姪夫婦は子どもがふたりいるが、家にTVがない。どうしても見たいNHKの特別の番組はネットで見るとのことで、生活の中にTVがないので、芸人のこともほとんど知らないし、知る必要も感じていない。最近筆者がよく思うことに、今の日本の有名人で百年後に名を残す者が多くいる分野が何かだ。画家や小説家の時代ではなく、銀幕のスターの時代でもない。ましてや政治家の時代でもなく、学者の時代ではさらにない。そこで思い当たるのが漫才師などの芸人だ。彼らが今の日本を代表する文化人と多くの人は思っているだろう。先日百億円単位を妻にわたして離婚した芸人がいたが、これまで描いた絵画を全部売れば40億円ほどになると本人が発言していた。誰が買うのか知らないが、何でも言った者勝ちで、その言葉を信じて1枚買いたいと思う成金はわんさかいるだろう。芸人の闇営業でまず筆者が思い出したのは、誰の結婚式か忘れたが、30年ほど前、当時大阪の有名漫才師の片方が宴席に現われた。みんな喜んで一緒に写真を撮ったりしたが、その芸人にすればアルバイトであったのだろう。一般人の結婚式であったので問題はないが、呼ばれて行ったところ、変な連中の姿が目立つとはいえ、姿を見せればもう帰ることは無理だろう。つまり、筆者はMに少々同情するが、300万円のギャラのうち百万をもらったというのは、いかに一番有名であっても取り過ぎだ。またそれほどに稼げる間は稼いでおかねば明日はどうなるかわからない商売と彼らが感じているのだとすれば、そこに悲哀がある。
●咲いた花、咲かない花_d0053294_16541948.jpg この芸人による闇営業で筆者はヴェルディのことを思い出した。彼はオペラ歌手たちが老いて貧しい生活を強いられていることに心を痛め、養老院を自費で建てた。若い華やかな頃に人気を博しても、すぐに新しい才能は出て来る。そしてトコロテン式に古い人はお払い箱となって姿を消すしかない。日本の芸能界も似たようなものだろう。それでお笑い芸人は人気がなくなった時のために蓄財するが、そういう将来の保険を考えた生き方は、家庭を持てばそう責められない。日本では長年連れ沿った妻に百億単位の金をわたしても、ヴェルディのように同じ業界で生活に困窮している者を助けるという考えを持つ芸人は皆無で、みんな自己責任の暗黙の了解の下、いかに金を稼ぐかだけの競争になっている。TVの視聴率で評価が決まるとするならば、それは金に換算出来ることで、かくて収入が多いほど当の業界では重要人物で有名人とされる。そして、彼らは内心いずれ歴史上の有名人と評価されると思っているとすれば、それこそお笑いで、日本が終わったという声に納得もするが、ここ30年ほどの日本を見ていると、どの世界が将来も伝えるべき仕事をした人が多く集まるかとなれば、お笑い芸人しか思い浮かばない。そして彼らが何かに対して批判的であるかとなれば、そんな気骨のある者は皆無で、その点においても歴史に何の痕跡も留めないことは明白だが、百年後の人々が「これは本物だ」とその業績を愛でる表現者を多く輩出する世界が今は見当たらない。ザッパはTVに頻繁に登場するタレントをスライムと揶揄したが、同じ事情は日本ではさらに蔓延し、素人芸程度の才能で億単位の金を稼ぎ、本人も時代の寵児と勘違いする。顔を見ても下品な連中ばかりなので、筆者も芸人やタレントの出演するTV番組をほとんど見ないが、一方明治天皇の何とか孫とか自称する男の引きつった顔をたまに見るとTVを叩き壊したくなるほどで、とにかくTVはあらゆるスライムが蠢く世界で、功罪の罪の面が大きくなって来ていると感じる。今日の最初の2枚の写真は今月初めに隣家の裏庭で撮った。最初の写真は左端に少しだけ合歓木、右端に楓を写し込んだが、中央の大部分を占める白い花の香りがあまりにきつく、数日は息をするのも難儀した。去年は咲かなかったと思う。ネットで調べると、たぶん「サワフタギ」の花だ。筆者は初めて知ったが、ほとんどの人もその名前を知らないだろう。知られなくても大昔から勝手に咲いている。そう言えば今年は裏庭のグミの木の白い花がひとつも咲かなかった。そのため、赤い実も望めない。3枚目は3日前に玄関脇で撮った。茶色の枯れた花は去年のもので、老いと若さを同居させている。10年ほど前には3年分の枯れた花を同居させたこともあるが、この写真は先日紹介したオットー・ディックスの絵画「VANITAS」を思ってのことでもある。
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by uuuzen | 2019-06-23 23:59 | ●新・嵐山だより
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