格差社会と言われるが、格差はいつでもどこでもあった。それに、経済的な格差ばかりが言われるが、金持ちは金持ち同士交際しているかと言えばそうとも限らない。貧乏という言葉を経済だけに結びつけることを筆者は好まない。

億単位の年収があっても本を一冊も買ったことがない人がいる。それは金持ちであっても最も貧しい部類の人だ。つまり、格差社会は人間が完全に同じ収入を得て平等になっても存在する。ところで、日本の芸能人は経歴の長さで先輩後輩が決まるようだが、どれほど売れて収入を得たかによって格が決まる側面もあるだろう。これが厄介で、歌手ならば大ヒット曲があるか、またレコードやCDの売り上げ枚数という指標があるが、お笑い芸人や俳優は何で比べるのだろう。それでも一般人には何となく彼らの格づけがわかっている。昨日は42歳のお笑い芸人と33歳の女優の結婚が発表された。筆者はふたりの顔は知っているが、名前は覚えておらず、またその女優のどこが美しいのかさっぱり理解出来ない。どちらを格上と見るかで一般人の意見が違うが、筆者はお似合いのカップルだと思う。また話題を提供するのが彼らの仕事なので、そのうち別れるとの憶測は正しいだろう。またそうあるべきだ。そしてその女優は48歳になった時、24歳の一般人男性とまた結婚すればよく、そういう相手はいくらでもいるだろう。そう言えば、今朝は71歳の男が80歳の女性の乳を揉んで逮捕されたというネット・ニュースを読んだが、一般人のコメントの中に「肩を揉んであげてください」という秀逸なものがあった。今年は稀に見る空梅雨で、猛暑でもあって毎日のように老人が暴走する事件があるが、格差があっても誰にも等しく老いは訪れ、また認知症にもなる。その嫌な不安を抱えながら、年金だけでは生きて行けない世の中とのことだ。そう言えば今日届いた国民年金のはがきを見ると、毎月天引きされる介護保険料がかなり高い。いずれ自分も介護されるので仕方ないと言えるが、老人介護施設に入居するのに2200万ほど、また毎月10数万円支払っていた高齢者が死後2週間で発見されたというニュースがあった。一体何のための介護施設だろう。毎日生きているかどうかを確認することくらいは簡単なはずなのに、大金を使ってもそのサービスがない。これなら自宅で死んだほうがましだ。とはいえ、自宅に住んでいてもいろいろと金はかかる。それで「風風の湯」の常連の81歳のMさんは、よく笑いながら話す。「悪いことをして刑務所に入ったほうが食事も出るし、家賃もいらんし、高齢になったらそれが一番でしょう」。そう言えば1か月ほど前、女性のみの刑務所のドキュメンタリー番組を見た。高齢者が多くなり、囚人が囚人を介護している。刑務所の居心地がいいので、出所してもすぐに戻って来る人が多いとも言う。

3月26日、筆者は家内と福島を訪れた。その話はいろいろあるが、今日はひとつだけ書いておく。JR福島駅ビルの東西を横断するには、地下道しかない。これを往復した。東の端に行くと、地上に出る階段の下の空間にひとりの男性のホームレスがいた。70歳くらいだろう。その男性と目が合った。病気がちには見えず、段ボールで小屋のようなものを作っていた。危険な感じはなかったが、地下道は薄暗く、夜間ならば女性は歩きにくい。その男性がホームレスになったのは東北大震災の影響ではないか。これは当日別の人から聞いたが、放射能が風に乗って運ばれて来たので、除染が徹底的に行なわれたそうだ。そのために地元に多額の保証金がもたらされた。ただし、放射線を計測して危険度の大きな家に多額が支払われたであろう。そのことが地元住民に不公平感をもたらしたことは、その人の口ぶりからわかった。地下道のホームレスは保証金を受け取ったのに、それをギャンブルか女に使うかして、文無しになったのではないか。放射能が降って金が湧いたのはいいが、そのことに翻弄されて正気を失う人がいたことは充分想像出来る。地下道の両側の壁には数メートルごとに背後から照明が当てられた広告のウィンドウがあった。それをひとつずつ見ながら興味深かった。その中に花見山の花が満開の写真があった。その満開日にはまだ10日ほどは早く、筆者らは訪れなかったが、後日TVでその山の満開具合が放送されたのを見た。地元観光や地元商店の広告に混じって、コンサートの案内が2か所あった。リチャード・クレイダーマンとクリストファー・クロスで、どちらも一世を風靡した。彼らが東北でコンサートをするとすれば、世界中で演奏出来る都市は1000以上あるだろう。ビッグ・ヒットを放ったビッグなミュージシャンは、数十年経っても需要がある。そのおいしい夢を見てミュージシャンを目指す若者が毎年湧いて来る。クリストファー・クロスの1980年の大ヒット曲「風立ちぬ」は、いかにもヒットしそうな覚えやすいメロディに甘い声だ。それくらいなら自分も書けると思う若者は多いだろう。だが、才能とは別に運が大きく左右する。先のホームレスは運がなかったのだ。本人はきっとそう思っている。「風立ちぬ」は、殺人を犯した男がメキシコまで風のように逃げて行くことを歌う。運がよければ死刑にならない。筆者の息子はこの曲を含むCDを昔買った。家にLPがあるのに、親との対話が少ないのでそれを知らなかったのだ。ところで、
ザッパは81年にアル・ディ・メオラを招き、歌はボブ・マーティンに任せてこの曲をステージでカヴァーした。息子にそれを教えてもオリジナルがいいと言うだろう。確かにクリストファーは頭が禿げて太り気味だが、声は衰えておらず、ギター・ソロもうまい。筆者の風邪は昨日ようやく治った。まだ扇風機は出さず、団扇を使っている。是内輪話也。