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●京都深草Annie‘s Cafeにて、PUBLICS.
村も都会もカー・ステレオを鳴らしながら車は走る。今夜梅津のスーパーに行った帰り、大音量で音楽を流す車が四条通りを走っていた。自分だけが聴くのは物足りず、周囲に聴かせたいのだろう。



●京都深草Annie‘s Cafeにて、PUBLICS._d0053294_01364873.jpg
車から数メートル離れていてもライヴハウスで聴くのとあまり変わらない音の大きさで、車内では耳栓なしでは聴覚がおかしくなる。頭もおかしいのでそんな傍迷惑なことをするが、田舎でも同様の連中はいるだろう。それはさておき、100年ほど前に陸軍の第16師団が創設される前の深草は、その名前のとおり、草が深く生い茂る農村であった。今は家が建て込み、ライヴハウスが地下で営業する。ライヴハウス同士の交流はあるようで、24日は大阪のHARD RAINの店長の加納さんが来店した。金森さんによれば同店のスケジュールがいっぱいなので、加納さんはあるバンドのAnnie‘sへの出演を依頼したとのことだが、それが当日演奏した4つのバンドのどれかはわからない。また当日は西院のネガポジの店長も来店しているとのことで、彼は最後に登場した3人組の「PUBLICS.」のひとりであった。ライヴハウスの店長がミュージシャンであることは珍しくないようだが、店長の音楽の好みが出演者の選択に反映するかとなれば、それはわからないが、特定のライヴハウスに2,3年、毎日通えば、おおよそその店のある都市で演奏するミュージシャンに出会えるのではないか。毎日は無理な話で、またなるべく初めて見るミュージシャンの演奏を当てにするのであれば、ピン・ポイント的に狙って出かけたほうがよい。筆者はほとんどどういう演奏をするのか知らずに出かけるので、未知の音楽にたまたま触れる驚きがある。「PUBLICS.」についても予め何かを知っていれば、また彼らだけのライヴであれば、出かけなかったと思う。それゆえ、たまたま見聞出来たのでこうして文章を書いて考える機会が得られた。4つのバンドで金森さんが筆者に薦めたかったバンドがどれかは知らないが、金森さんのお薦めを筆者が気に入るとは限らず、またその反対もあり得るので、知る必要はないとも言える。バンドの出演順が経歴や人気の順かどうかは知らないが、「PUBLICS.」は最後に登場しただけの貫禄があった。ヴォーカルの男性は白のスーツ、そしてパソコンを扱う西院ネガポジの店長とドラムスは全身黒の衣裳で、全員決して笑顔を見せず、客に語りかけず、演奏を始める前は30秒ほどを動きを止めたまま無言であった。3人ともサングラスをかけていて、それは白黒の抽象模様の映像の眩しい映写を演奏中にまともに受けるためにも必要であったが、白黒のみで自分たちの姿を見せるというダンディズムの様式美の徹底は、彼らを禁欲的かつ別世界の人種と思わせるのに効果的であった。そういう視覚性、見栄えの重視はライヴハウスで演奏するミュージシャンには珍しいのではないか。
●京都深草Annie‘s Cafeにて、PUBLICS._d0053294_01371388.jpg どのライヴでも同じ衣裳であれば便利で安上がりだが、YOUTUBEで彼らの3年前の演奏を見ると、ヴォーカルの男性の髪型やサングラスが違う。また7月末の真夏であるせいか、スーツを着ていない。同年10月の演奏ではバックのふたりは赤シャツと黒シャツで、白黒にこだわっていないこともわかる。衣裳よりもまず目を引いたのは、ヴォーカリストの踊りだ。ブレイクダンス風だが、体を蛸のようにくねらせながら歌い続け、その堂に入った動きはライヴハウスに出演するミュージシャンにありがちな、どこか素人的な含羞は一切なく、見事なプロ根性を見た気がした。踊り歌う歌手はミック・ジャガーやデイヴィッド・ボウイなどがいるが、日本でとなれば「PUBLICS.」に似た音を出すバンドがあるのだろうか。筆者の息子世代ではヴィジュアル系と呼ばれた有名なバンドがいたが、その系譜について筆者は知識がない。そのため、「PUBLICS.」が影響を受けた音楽がわからないが、ヴォーカルは曲によっては声を変調させる機器を使い、伴奏はさまざまなノイズを利かせたリフの連続で、80年代のスラッシュメタルの延長にあると思える。ただし甘美さを全く排除したハードコアだ。またこの3人組はヴォーカルが一番目立っていて、顔から次第に汗が噴き出る様子がよくわかった。ネガポジの店長は彼より長身で、少し背後に立って影武者のように黙々とパソコンを操っていたが、その打ち込みの音に合わせるドラムスはあまりに強く叩き過ぎるので、途中でシンバルが外れることもあった。それにかまわずに叩き続けたのは、パソコンから流れる伴奏に遅れることが出来ないためであろう。このいわばロボットが精確に奏でる爆音に合わせてドラムやシンバルを叩くことは、完全な人間相手とは言えないだけにストレスを感じるのではないだろうか。ドラムスもパソコンから流せばいいようなものだが、そうすると今度はヴォーカルが大変だ。またそうなればヴォーカルもパソコンでということになって、生演奏の意味がない。そんなことを考えながら筆者は、パソコンから発せられる伴奏を人間が生演奏すればどうかと思いを巡らせた。それには最低でもベース、ギター、キーボードの3人が必要だ。そうなればありふれたアンサンブルとなりながら大所帯となって、活動は難しい。6、70年代ならあたりまえであったそういうバンドが、パソコンの登場で人材が少なくて済むようになった。それは便利ではあるが、貧しく、味気なくなったとも言える。そこでミュージシャンは少なくて済む人数ならではの音で個性を発揮しようとする。「PUBLICS.」が選択したのは、ヴォーカルとドラムス以外はいわゆるカラオケだ。カラオケの出現によってバンドメンの仕事が激減した一方、いつも同じ伴奏が得られ、バンドのイメージを硬質化出来ることとなった。
●京都深草Annie‘s Cafeにて、PUBLICS._d0053294_01373958.jpg
 それに音楽活動がやりやすくなってライヴハウスに出演出来る垣根が劇的に低くなった。ただし、カラオケは省エネや安っぽさに結びついているので、「PUBLICS.」の演奏を間近で見ていると、何となく騙されている気がする。そこを避けるためにドラムスとヴォーカルが全力投球し、しかも映像や独特の踊りを含めた所作、それに白黒のみの全体のイメージという演出を凝らしている。つまり、ロボットと人間の複合音楽でありながら、完全なロボット化を拒否していて、おおげさに言えばそこに現代の日本社会の縮図がある。人々はあまり意識しないが、切符を買うのもそれを改札に通すのもロボットが引き受けている。車のメカニズムもいつの間にかコンピュータだらけで、家電製品もそうなって、もうすぐ電化製品はスマホですべて遠隔操作出来るようになる。そういう時代に音楽がすべて人間の生演奏に頼らねばならないということはない。それが豪華であるのはわかっているが、ライヴハウスで演奏する場合、10人までが限度だろう。そして便利な機器を使えば生演奏では不可能なことも出来る。そのようにしてロボットと人間が馴染んで来て、またそのことにミュージシャンも客も別段違和感を覚えない。さて、「PUBLICS.」というバンド名だが、この意味は簡単明瞭のようだが、最後にドットがついている。また複数形で、これは大衆の中でも問題意識を持ち、政治を左右する力を持った人々のことを意味するが、「PUBLICS.」のヴォーカルの歌詞が政治的かどうかはわからない。たぶんそうではないと思うが、彼らは大衆音楽をやっているとの自覚はあろう。ヘヴィメタルは労働者階級に歓迎された。爆音を奏でるバンドはだいたいそう思ってよく、知的なイメージからは遠い。そのことを思っての「PUBLICS.」というバンド名だと想像するが、では彼らの音楽が知的ではないかと言えば、たとえばメタリカのようなバンドの、演奏中はずっと同じリズムをギターが奏でるといった大味さとは違って、パソコンから流れ出るメロディは途中でごく短い休止とヴォーカルのシャウトをしばしば挟みながらリズムを変化させ複雑なものだ。彼らの音楽が大衆を代表するものとなるには、爆発的人気が出て日本中に知られる必要があるが、AKBに代表されるアイドル商法とは別の個性的な音楽を個人が作って発表する方法がライヴハウスにある。そこに真の問題提起を行なうミュージシャンが集まり、また彼らの音楽を聴く少数の人々がいることは、日本の大衆音楽界にもPublicsと呼べる一群の人々がいることを示しているであろう。ただし、今の日本の若者は頻繁にライヴハウスに行く経済的余裕がない。大衆の貧困がもっと深刻化すれば、ライヴハウスの音楽がどう変わって行くのか。さらにロボット化するのではなしに、ロボットの機能をどう使うかという新たな方法論が生まれるだろう。
by uuuzen | 2019-05-30 23:59 | ●ライヴハウス瞥見記♪
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