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●京都NEGAPOSI(陰陽)にて、Ondrej Zajac
味か鉄味か、エレキ・ギターの弦を舐めると味がするだろう。最近また聴いているジョー・サトリアーニは、悟りの兄のごとく相変わらずギターを自在に操り、時に歯で弦を弾く。



●京都NEGAPOSI(陰陽)にて、Ondrej Zajac_d0053294_23535467.jpgギターのボディは女性の体の象徴と言われるが、ギターをステージで叩き壊したり火を放って燃やしたりするギタリストは、きっと星印が5つのSの性格だろう。ザッパはそんなことをせず、むしろジミ・ヘンドリックスが燃やしたギターを入手して修復し、それを愛用した。これは女性に優しいことを意味しそうで、ギターの扱いで女性への愛撫の方法がわかるかもしれない。一方、ギターや女性がどのように愛撫されたいかは千差万別で、M気質が極端な女性の場合、昔新聞で読んだことがあるが、全身を芋虫のようにロープでぐるぐる巻きに縛ってほしいという意見があった。それでは女性の裸は見えず、男はどう愛撫していいかわからない。それはともかく、そのような変な趣味はギターでも試され、エフェクターの種類の多さとともに複雑な音楽が作られ続ける。その一例を17日は2番手に登場した山内弘太さんに見たが、最後に登場したのは、スロヴァキアから来日したOndrej Zajac(オンドレイ・ザヤックと読んでおく)という男性ギタリストで、彼のエフェクターを数多く使う演奏は山内さんの演奏ときわめて似ていた。それを知ったうえで当夜は山内さんとの組み合わせが実現したのではないか。ところで、チェコとスロヴァキアというふたつの共和国が出来た頃、最晩年のザッパはプラハに招聘されてハヴェル大統領に面会し、また同国のロック・バンドと共演してギターを弾いたので、チェコとスロヴァキアの人々にとってザッパは有名だ。当時オンドレイ氏は数歳の子どもであったはずで、ザッパがプラハで演奏したことを知ったのは青年になってからだと思うが、ギタリストになったのはザッパの影響を少しは受けたと考えると面白い。というのは、彼の演奏はザッパ22歳の1963年3月のTVショーへの出演を思い出させるからだ。その「スティーヴ・アレン・ショー」はYOUTUBEで見られるが、ザッパは自転車を2台用意し、それをドラムのスティックや弦楽器用の弓で奏でる。番組後半では背後のカーテンが開いて楽団が現われ、ザッパとアレンの自転車の演奏に合わせて現代音楽風の「自転車協奏曲」がしばし奏でられる。自転車はギターとは違って女性の比喩にはならないかと言えば、佐伯俊男が描くように、スケベエな男は女にパンティをつけさせずに自転車に乗せたがり、自転車にはマンディアルグの小説『オートバイ』にあるのと同じほどのエロさがある。その自転車を楽器として使うザッパの発想はそれ以前にはなかったと思うが、ザッパはアレンやスタジオの客を笑わせながら、きわめて真面目だ。そしてバンドに即興演奏させる後年の特質がすでに見られる。
●京都NEGAPOSI(陰陽)にて、Ondrej Zajac_d0053294_23542852.jpg ザッパは自転車の鉄のチューブであるハンドルの端から息を吹き込んで管楽器のように音を鳴らしたり、車輪のスポークを弦楽器の弦とみなしてそれをスティックで叩いたり、また弓で擦ったりするが、伝統的な楽器では出せない音が発せられるので、それを録音し、加工すれば独特の音楽が仕上がるだろう。そういう発想は電子音楽の分野で芽生え、「サウンド・スケープ」の概念を応用した音楽とも馴染みながら、デジタル時代になって誰もが手軽にあらゆる音を録音し、それを加工して曲を作ることが出来るようになった。エフェクターの多様化はその歴史と並行して来たが、ザッパの「自転車協奏曲」の面白さは、主に眼前で繰り広げられるパフォーマンス性にあり、また発せられる音をエフェクターで加工してもあまり面白くならないだろう。そう考えると、エフェクターで多彩化される音の連なりは、結局はどれもンセサイザー・ミュージックのように聞こえ、誰がどのように演奏してもみな似ていると思われかねない。そこでたとえば山内さんやオンドレイ氏の演奏を間近で見ると、そのパフォーマンスの差がよくわかり、改めて音楽は一回限りのもので、演奏する瞬間から消えて行くことを認識するが、それがライヴの楽しみで、彼らのその演奏を録音して後で繰り返し味わうことは全く別の関心と楽しみをもたらすと言ってよい。より理解するには、まずライヴを鑑賞し、その録音を繰り返し聴くことがよく、そのことで奏者の「意識の流れ」とまた自分のそれもわかって来る。筆者は彼らの演奏を録音しておらず、一回聴いただけの感想を綴るしかなく、的外れを書いてしまいかねないが、ともかく先を続ける。チェコやスロヴァキアは人形劇やアニメで有名で、凝った作品が世界的に知られる。それは神聖ローマ帝国のルドルフ2世の治世下のプラハで博物学や錬金術が盛んであったという文化的な伝統の蓄積が豊富であることによる。そういう一種迷宮のような国の気質が最晩年のザッパを呼び寄せたが、オンドレイ氏もその気質を持っているとみなすことは許されるだろう。また彼も日本で演奏するからには、ことさら意識しなくても、自国の伝統が滲み出ると思ったはずだ。その点、日本には世界でも稀に見る独特で豊かな文化があるが、戦後はアイデンティティに関しては意識が希薄化し、多国籍、無国籍風になって来た。そのことは一昨日の山内さんの演奏について書いた時にも触れたが、彼が逆にスロヴァキアで演奏すると、日本的な個性を認められるかもしれず、筆者がオンドレイ氏の演奏にお国柄を思うのは色眼鏡かもしれない。その懸念を抱えながら、なお彼の演奏に東欧の中世の香りのようなものを認めたいのは、ギターを数多くのエフェクターと結びつけ、そこに可能な限りのパフォーマンス性を付与するその演奏が、ロボットと人間の合体を思わせるからで、つまりはヨーロッパの伝統上にある。
●京都NEGAPOSI(陰陽)にて、Ondrej Zajac_d0053294_23545602.jpg
 オンドレイ氏は山内さんとい違って立って演奏したが、今YOUTUBEで彼が椅子に腰を下ろして演奏している映像を見た。おそらく10個以上のエフェクターを眼前に置くのは同じで、また山内さんと大きく違ったのは、エフェクターの横に弦楽器用の弓や金属片やプラスティックや木材の小さな破片などが用意されていたことだ。最初に彼はごく普通にギターのリフを奏で始め、すぐにその音形をループさせ、そこにさらにギターの音を足しながら、以前のループ音形の音程を上げ下げし、やがてフェイドアウトさせるとすでに新たな音形が始まっているというミニマル音楽的な演奏を繰り広げたが、エフェクター操作に忙しく、ギタリストというよりは「ダイヤル・プレイヤー」に見えた。20分ほどの演奏の中間部では、弦楽器の弓で低音弦をゆっくりと擦り、その音もルーパーを使って重ねたが、ヴィオラの音のようでいて金属ギター弦のざらつきが混じっていた。弓を使うのは彼の特徴のようだが、やはりプラハの中世や東欧を強く感じさせた。それは視覚的と言い変えてよい。どういう映像に似合うかは聴き手次第だが、あえて言葉を挙げれば、荒涼、陰鬱、牢獄、極寒の旅、死神といったもので、「環境音楽(アンビエント・ミュージック)」のその環境は山内さんの音楽から感じられるものとは大いに違う。弓を使い終わると、今度は弦に息を吹きかけ、ザッパの「自転車協奏曲」にさらに近づいた感があったが、その後はギターを床に横たえ、細い棒をカポタストのように使って弦を固定し、そこにさまざまな破片を弦に挟み込んで音を出した。その夾雑物の使用はジョン・ケージの『プリペアド・ピアノのためのソナタとインタールード』の手法から着想を得ているが、ケージはピアノの音色を変えるために小さな物体をピアノの弦に挟み込んだのに対し、オンドレイ氏はそれを基本にしつつ、エフェクターの多用とその瞬時の切り替えによって、ほとんど狂気とも思える奇妙なごく短い音の連なりを発し続けた。その時、氏は弓を使ったゆったりとした演奏とは打って変わって、エフェクターのスイッチを両足でタップ・ダンスをするかのように忙しく切り替えた。そこまでする必要があるのかと思ったほどだが、ザッパなら録音テープを短く切ってつなぎ合わせたそういう多くの音色のコラージュの手法を、ライヴで提示するにはそのような忙しい動きをするしかない。そのそれぞれ違った音色の短音の連鎖は、狂った動きを見せる人形や使い手の意思を無視して勝手に行動するロボットといった感じで、ルドルフ2世時代のマニエリスムの美術を連想させた。氏は最初はエレキ・ギターでごく普通に演奏していたのだろう。それに飽き足らなくなったのは、エフェクターによって俄然音色が豊富になり、それらを組み合わせて音楽を「意識の流れ」のように作り出せることに思い至ったためであろう。
by uuuzen | 2019-05-23 23:51 | ●ライヴハウス瞥見記♪
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