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●京都NEGAPOSI(陰陽)にて、山内弘太
暮れになって頭が冴えて来る筆者は夜行性に近いが、それがあまりよくないこととわかっていながらいつも深夜2時過ぎに眠り、翌日の午前中はないも同然となる。



昨日は2,3年前に3分の1ほど読んで放置したヴァージニア・ウルフの「ダロウェイ夫人」をまた繙くと、最初は早朝の場面だ。50過ぎのダロウェイ夫人は早朝の新鮮な空気を味わいながら、遠い昔の恋人の言葉を思い出し、次の場面では通りを歩く彼女を見つめる男の思いが描かれる……。同小説に使われる「意識の流れ」という手法は、小説を読まなければわからないが、読んでもわかりにくい。意識は誰でも流している。この文章も最後を想定せずに書き始め、意識の赴くまま原稿3枚の1段落を3つ連ねることを目指し、全体として「意識の流れ」だ。出来れば最初の文字「夕」に関係することで落ちをつけたいが、それがうまくいくとは限らない。何度か読み返せば、より満足が行く気はするが、ほとんどそうはしない。また筆者は両手の人差し指2本のみでキーを打つが、先日はそれを話すと信じてもらえなかった。それはともかく、書き始める前に、多い場合は2,3の事柄に触れることは決めていて、書いている間に意識しなかったことが思い浮かぶこともある。それで筆者のブログは半ば即興だが、そこに欠点があることを自覚している。最近またザッパのギター・ソロ曲「SON OF MR. GREEN GENES」をよく聴くが、同曲のギター・ソロはどのように演奏するかをだいたい決めて練習を重ね、録音のよく出来た部分を選んでテープ編集しているはずだ。そうして満足の行った全体のギター・ソロにキーボードを多重録音させ、またドラムスやベースも部分的にそうしたであろう。ザッパはライヴのレコード化には必ず部分を捨て去った。それと同じ思想が同曲に適用されているはずで、同曲は試行錯誤の作品であって完全な即興ではない。全体の構成美を考えると、即興では無駄な部分が多くなる。これは意識の流れそのままでは満足の行く作品にはならないとの考えだが、ヴァージニア・ウルフの「意識の流れ」による小説が成功作とみなされるのは、彼女が意図してその新手法による文体を駆使し、斬新な印象を読者にもたらすからだ。そういう彼女は精神を病み、自殺したことはザッパとは大いに違うが、「意識の流れ」を客観視し、それを小説にまとめた行為はザッパの前曲と同じではないか。誰でも流している意識がそのまま文字化される時代がいつか来るとして、そういう文章に価値があるとは思えない。意識の流れには始まりも終わりもないが、作品にはそれがある。また意識の流れは時間の経過で、不可逆的と思われがちだが、同じ考えを巡らす「堂々巡り」はある。ウルフはそれに陥って筆が進まなかったか。富士正晴は書くべきことは書いたと言った数年後に死んだが、ウルフの自殺もそれと同じであったかもしれない。
 ザッパは晩年に来日要請された時、ひとりで舞台に立つ気はないと言った。アンサンブルの音楽を好み、ひとりでギターを奏でても面白くなかったのであろう。実際ザッパ単独でギターを奏でる曲はない。だが、エフェクターを好み、またシンクラヴィアを使って絵を描くように曲をひとりで多彩に録音出来たので、20年長生きしていれば、ひとりでステージに出てギターでアンサンブル的な音を作ったかもしれない。リズムボックスを使った曲があるからには、それは充分あり得たと思うが、その演奏がどういうものになったかはわからない。ザッパのギター・ソロはある程度起承転結を考え、また長さも10分前後が普通で、20分や30分になることはなかった。これは即興とはいえ、それを繰り返す間にある程度の型が決まって行くことを意味し、またその型が個性と目される。そういうザッパのソロは音色を変調させても、基本的には音階や旋法に沿ったギターの単音の連なりであった。デジタル時代になって、どのような楽器でもその音色を自在に変調可能となったと言えるが、ギターでは演奏時のアタックが音の弾けという特徴となって、エフェクターで音色を変えてもギターらしさは残る。そこで、ギター奏者はエフェクター重視よりも速弾きに向かうか、エフェクターを多用して「ひとりアンサンブル」の世界を目指すかに大別出来るようになり、17日に二番目に登場した山内弘太さんは後者だ。椅子に座ってひとりで演奏する彼の姿を見ながら、筆者がまず感じたのは1月の同じ会場でのジャップカサイさんの演奏だ。彼はギターを使わず、予め録音した演歌などの日本的な音源を、両手と上半身の踊りを交えて操作したが、「ひとりアンサンブル」の点では山内さんと共通する。彼は日本らしさを目指さしておらず、それが外国人には日本的と感得されるはずと思ってのことかどうかは知らないが、世界中どこでも同じものが入手可能なギターとエフェクターを使って単独演奏する時、その奏者は他の同様の人の演奏にそれなりに注目するであろうから、技術的には誰しも似たものになりがちで、結局は個性が重要になる。その個性は技術に大きく負い、またザッパのギターのように旋法や独特の音階をほとんど使わないので、無国籍風になりがちだ。そこにどれほどの芸術性があるかは聴き手次第として、筆者が感じたのは再現不可能な即興性だ。それは何度も演奏する間にある程度の型となりはするが、奏者がそれを望んでいるかどうかは、一度限りライヴに接する者にはわからない。CDがあれば、それを繰り返し聴き、その曲が即興演奏であっても、完成形として受け止める。それは聴き手が安心を得ることでもあるが、その安心のうえに聴き手はライヴで同じ演奏に接してCDとの差を認識してまた楽しむ。ザッパには同じ曲に多くのヴァリエーションがあるが、そのことが山内さんの演奏にあるのだろうか。
 山内さんがCDとして曲を固定化して聴かせたいのか、あるいはライヴごとにあえて著しく演奏を変え、完全な即興を続けることを目指しているのかだが、これは筆者にはわからない。山内さんの演奏はイーノの環境音楽の系譜上にあるが、以前別のカテゴリーに取り上げたアルヴィン・カランのCD「磁場庭園」と表面的には似ている。同CDはアナログ時代の1973年の発売で、今では似た音楽はひとりで簡単に作り得る。そのため、同CDを評価しない若者は多いと思うが、筆者が同CDで面白いと思う箇所は、ミニマル的でありながら、きわめて映像的で、またその映像が抽象ではなく、かなり具体的なことだ。同CDがどのように録音されたかは知らないが、ごく短いある音が一度だけ鳴ってしばらく経つと、その音が何度か鳴り続け、やがてその音が洪水のように豊富になる。その布石的手法に舌を巻くのだが、それは「意識の流れ」を意図しながらも全体の構成を予めよく吟味していることであって、即興性よりも構成の重視が伝わる。山内さんの演奏は、最初はギターで短いフレーズを奏で、それをルーパーによって繰り返し、そこにさらにエフェクターで変えたギター音を重ねて行くもので、もちろん途中で停止されるルーパー音もある。エフェクターはたくさん使い、そのうちのひとつに足で車のブレーキを操作するような装置があった。それはビートルズの「YES IT IS」でジョージが使って発した特徴的な音色と同じで、そのことからわかるように、山内さんの音楽は夏の朝のような静謐さを感じさせる。あえて言えばビル・フリゼルの世界に近い。そのため、カランと同じくその音楽は視覚性に富むかもしれないが、カランのように土地に根づいたものには感じられなかった。YOUTUBEによれば彼は舞鶴出身で、オーストラリアで演奏したこともあるが、日本的な何かにはこだわりがないように感じられる。また「意識の流れ」にしたがってと言うよりも、先に奏でた音から次の音を直感で発っし続けることを繰り返し、作品の完成した「型」にはこだわっていないのではないか。どの演奏にも彼らしさがあるとすれば、それはデレク・ベイリーの音楽を想起させるが、ベイリーのような難解さを目指さず、「ひとりギター・アンサンブル」としてどれほど複雑で多彩な音の世界を繰り広げるかに関心がありそうだ。ただし、それは起承転結はなく、どこでどう終わってもいいようなもので、初めと終わりを意識した厳格な構成美はなく、前述のカランの音楽における布石的な面白さはない。そこでヴァージニア・ウルフはある小説を書き始めた時、結末を決めていたのかどうかだが、「ダロウェイ夫人」を最後まで読まねばそれはわからない。文章における「意識の流れ」は、即興演奏におけるそれよりも百年近く早かったが、ある音楽にどのような映像を思い浮かべるかを音楽は規定することが出来ない
by uuuzen | 2019-05-21 23:59 | ●ライヴハウス瞥見記♪
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