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●大阪谷町九丁目 One Dropにて、弦花
眠を貪ることも必要で、人生はメリハリが利いていればよい。弦花さんは眠ることが大好きだそうだ。それが惰眠かどうかはさておき、人間はじっとして何も考えない時がそうでない時の肥しになる。



●大阪谷町九丁目 One Dropにて、弦花_d0053294_23494533.jpg
幼ない頃に親がいろんな塾に通わせるなど、ゆっくりと考えさせる時間を与えないと、たいていは何も物にならない。元来芸術行為はそうせざるを得ない内的欲求があってのもので、強制されて嫌々作ったものに芸術の神は宿らない。それはさておき、4日の夜は弦花さんの演奏を55分ほど通して聴いた。演奏中の彼女の写真を撮ろうとカメラを持参したが、同席したOさんから撮影禁止を知って諦めた。それで、手元が見えない暗闇の中、演奏曲目を順に紙にメモったが、今日の写真の横線から上がニエリエビタさん、下が弦花さんだ。筆者が座ったのは最前列の左端で、1月23日にHARD RAINで彼女の演奏を初めて見た時と同じだ。彼女は曲ごとに短い即興の会話を挟み、またそれは前回とはどれも違っていた。語り口は手慣れたもので、頻繁にライヴをしていることによる慣れと、明るい性質によるだろう。1月の彼女の演奏についての投稿の直後、彼女からツイッターにメールが届いた。筆者はそれに大いに納得し、彼女に関心を抱いた。今回は演奏が始まる前に、ブログにライヴの感想を書く時、そのメールの内容の一部を書いてもいいかと質問したところ、彼女は咄嗟のことで判断しかねたようだ。再度確認してもいいが、今回はメールで知ったことはすべて伏せる。まず、彼女の集中的な音楽活動は、ツイッターを始めた頃と考えると3年ほど前からだ。その事情は今回も演奏された曲「音楽とともに」の歌詞から推察出来る。つまり、生活の事情から長らく歌うことを中断していたが、それから解放されたことで爆発的に作曲とライヴ活動を行なっている。遅れを取り戻そうという気持ちと、多くの経験を経て成熟したことが大きな理由だろう。今後作曲とライヴをどんどん続けるだけだが、その安定の中で新境地を考えるはずで、またそれには新たな出会いや経験をする必要がある。刺激がなければ創作は停滞しやすい。その停滞とはマンネリつまり同じような作品を作り続けることだ。本人はそれを一番よくわかっていて、その苦悩の中にあがく。それは芸術に割く時間が取れなかったことからすれば幸福な悩みだが、本人はそうは思えないものだ。目指すものが高いほど悩みは大きく、彼女がアルバムごとにどういう変化を見せるかは興味あることだ。それは、今は特に女性の活躍が喧伝される時代であり、また堂々としている彼女の曲とその歌いぶりが、生活のひとまず安定つまり精神の落ち着きに由来するものと思えるからで、またそれは筆者にとって、彼女の芸術の質もさることながら、現在の芸術行為全般のあり方を考えるうえでの大きな糸口となるとも思っているためだ。
 もっと噛み砕いて言えば、これは会場で彼女に話したが、作家活動を存分に展開するには、自分ひとりの生活ではなかなか無理であることだ。筆者は家内がいなければ今の自分はなかった。弦花さんがその点においてどうかは歌詞から想像するしかないが、生活に根差した、一種余裕を感じさせる点からは、安定した家庭生活が想像出来る。それは作品の芸術性と無関係と見る立場もあるが、陽の部分に生き物が集まるのは自然の摂理で、精神的な余裕のある状態で生み出される作品は多くの人に歓迎されやすい。こう言ってしまうと、弦花の作品はどれもただ明るく、その意味で底が浅いと受け取られかねないが、多くの襞を持っているところが魅力だ。その襞とは彼女の陰の部分を反映しているのではなく、彼女にある確固たる思いが曖昧さを排除し、かなり断定的に物事を見る意味での、聴き手をドキリとさせる激しさの露呈だ。それは芸術家にはよくあるエキセントリックな部分から説明出来るが、彼女の作品世界はむしろ穏やかな生活感が主調となっている。そうであるからこそ、突如表われるぎょっとさせる歌詞やまたその歌いぶりが強烈で、筆者は1月に聴いた時からそれを感じた。その一例は「りんご」という曲だ。今回彼女は、りんごは歯ざわりが嫌いなどと話し、りんごについての曲ではないと断って演奏を始めた。りんごは大阪の宗衛門町などに跋扈する夜の女をたとえていて、曲の最後で確か「毒りんご」と体言止めで歌う。ところが今回はそれを忘れ、演奏後にそのミスを説明した。曲の最も重要な「落ち」を欠かすのは、いつも以上に緊張していた以外に理由があったのだろうか。ところで、若冲は歌舞音曲が繰り広げられる世界に足を踏み入れず、その点が同じ年齢の蕪村とは大いに異なるが、蕪村の作品が花柳街の香りが濃厚かと言えば、全くそんなことはない。筆者は宗衛門町とは無縁なので、そこにどういう女が棲息するのか知らないが、何事も需要と供給の関係にあって、夜の女を毒と言い切って切ってしまえるものではない。たとえば売春する女子学生は確かに毒りんごだが、彼女らを買う毒男がいて、彼らの中には時として普通の父親も混じる。また夜の世界の女性を毒と言うのは、自分はそうではないという見方が感じられ、聞こえはよくない。というのは、ライヴハウスが酒を提供し、夜に営業するからで、そこで活動する音楽家は歌舞音曲の世界の住民にほかならない。つまり、宗右衛門町にいる女とは全くの別世界に住むとは言い切れない。確かに売春婦と音楽家は違うが、しばしば同じ世界にいることは、最近投稿したオットー・ディックスの夜のキャバレーを描いた百年前の絵画からもわかる。したがって、「毒りんご」の言葉は、白黒をはっきりさせる点で潔くはあるが、単純な物の見方として謗られかねない。ただし、その曖昧さの排除が彼女の持ち味で、自信溢れる姿と見ることは出来る。
 前回に続いて辛口批評になっているが、彼女は謙虚な思いをメールで寄越し、筆者は大いに感じ入っている。それほど彼女は度量が大きく、それは向上心があることを意味する。筆者は他者から好き嫌いがはっきりと分かれる人物とよく言われる。ネットには筆者の悪評がままあり、精神衛生上よくないのでエゴサーチをしないが、弦花さんは筆者に似ているかもしれない。筆者はかなり毒気のあるほうで、気に入らない対象を嫌悪するが、風刺は本来権威に対してすべきで、市井の人に放っては自分に返って来ると思っている。弦花さんの歌は、愛する存在についてものが多く、そういう曲をより鮮やかに浮かび上がらせるために、たとえば「毒りんご」の言葉があるのかもしれない。その一語によって彼女の曲全体が明暗に彩られるほどだが、毒もごく少量を用いれば薬になるという現実を知ってのことかもしれない。そういう効果を狙っているらしいことが想像出来る点が、彼女のしたたかさ、逞しさで、そこにはそれなりの毒気が含まれる。男女平等と言われていても現実はそうではない場面が多く、そういう社会で女性シンガーソングライターが生き残って行くには、独創性の点での逞しさを含めて、まず生き方の態度がそうであらねばならない。それだけ過酷な社会で、表現者は策略を巡らさなければ目立たない。ただし、弦花さんがそういうことを明確に意図しているかとなれば、そこは筆者にはわからず、作品から感じられることを指摘するだけだ。また筆者がそうしたからといって、彼女が方向性を変えることはないはずで、それほどに彼女はもう完成している。ただし、そのうえに今後何を築くかとなれば、他者の目は参考にしてよいし、すべきであろうし、彼女はそれを自覚している。歌詞は作者の思想を伝えるが、それに付随する音楽は本来何も意味しないから、彼女の演奏はどうしても個性溢れる、また飛び切り豊かな声量に載る歌詞に引っ張られがちだが、歌詞と綿密にギターの演奏はつながっていて、伴奏という言葉はあまりふさわしくない。言葉を変えれば、彼女は歌詞の一行ずつを音で表現するにはどうすべきかを考えていて、曲は歌詞と音楽が不即不離の関係にあってドラマティックだ。その意味で他の楽器を交えた編曲を必要とせず、そのことも彼女の曲が断定調に聞える理由で、それは言い換えれば完成度がきわめて高いことを意味する。またそうであるゆえに曲は簡潔で比較的短く、今回のライヴでは13曲を演奏した。これは組曲を手がけると面白いアルバムが出来ることを想像させ、そのことで筆者は密かに思うこともある。また、今後の彼女の新曲を旧知の曲と組みわせることで、新たな組曲も出来るはずで、彼女は着実に曲を増やして自分の世界を広げて行くだろう。次のアルバムがもうすぐ完成するとのことで、それをメインにしたライヴを期待したい。
●大阪谷町九丁目 One Dropにて、弦花_d0053294_00004941.jpg

by uuuzen | 2019-05-06 23:59 | ●ライヴハウス瞥見記♪
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