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●京都木屋町UrBANGUILD(アーバンギルド)にて、児玉真吏奈
語の歌詞を自分で書いて歌う日本のシンガーソングライターは今後珍しくなくなるだろう。いや、筆者が知らないだけでもうかなりいるのかもしれない。



日本語の歌詞の中に英語を2,3行混ぜることは60年代からあったと思うが、スピード・ラーニングの教材が日本ではおそらく爆発的には売れず、英語熱が高くあり続けている割りには話せない人がほとんどだ。音楽家は聴覚が優れているので英語の上達は早いはずで、シンガーソングライターがどんどん英語で歌詞を書けば、それは日本の英語上達のひとつの牽引となるのではないか。若い女性シンガーソングライター自作の英詩の曲を歌い、それが大ヒットすると、それを聴いて育つ子どもたちはもう英語は苦手ではなくなるどころか、積極的に話すだろう。韓国のアイドルの人気が日本では高く、そのために韓国語を学ぶ若い女性が少なくないと聞く。それと同じことで、日本のアイドルが語学ブームを作るとの考えは的外れではない気がする。さて、一昨日のライヴでは二番目に児玉真吏奈さんが出演し、休憩を挟んでドラムス担当のsenoo rickyさんとジャミングがあった。ふたりはこれまで何度か演奏していて、デュオとしての名前を「マリッキー」と言うとのことだ。そのデュオの演奏について先に少し触れておく。当夜は誰の子どもか、3,4歳の女の子がステージに上がってドラムスを叩く遊びを続けた。関係者がしきりに客席に戻そうとしたが、彼女はスティックでさまざまな音が出ることの楽しみを覚え、言うことを聞かない。それでリッキーさんは彼女を抱きながら演奏を始めた。次に女の子は児玉さんのところに移動してキーボードを弾きたがった。そこで児玉さんは彼女を抱えて演奏することになった。また女の子はマイクに自分の声を向けるなど、いつの間にか3人によるジャム・セッションが開始された。面白かったのは、女の子の出鱈目な発声を児玉さんが受け取って模倣し、さらにその意味不明の短い声をルーパーにかけたことだ。そうしておきながら児玉さんはそれに別の声を重ねたが、その自然に始まった即興の歌と演奏にリッキーさんはどこか戸惑い気味に味付けをし続けた。その様子は完全に児玉さんがリードし、リッキーさんは一瞬の百分の一ほど遅れて次にどういう音を発するかを注意深く試行錯誤しながら奏で続けた。もう少しリッキーさんがリードする場面があってもよかったが、児玉さんの圧倒的な迫力の前ではそれはなかなか難しい。それほどに彼女は堂々としている。そのことをリッキーさんは畏敬しながら、自分らしさを添えることに喜びを見出しているという感じだ。もしリッキーさんが児玉さんの彼氏や夫であれば、児玉さんは遠慮したかもしれないが、リッキーさんは児玉さん好みの美少年、美青年ではない。それゆえふたりはよくデュオで演奏するのだろう。
 筆者は去年10月28日に大阪北堀江のFUTUROで児玉さんの演奏を初めて見た。その時は彼女を白百合にたとえただけで、演奏については触れなかった。だが、一昨日は二度目のそれに接して彼女の個性がよりわかった。FUTUROで彼女は最初、「テスト、テスト」と小さな声で、マイクの音量を試し、それから歌い始めた。その「テスト、テスト」の声が筆者にはどこかわざとらしく思えた同時に、それがすでに演奏の始まりであることを知って、奇妙な感覚に捕らわれた。浮遊感覚と言ってよい。通常なら、たとえばリッキーさんの演奏のように、まずは客に語りかける。児玉さんもそうするが、発声練習をしたかと思えば演奏が始まっている場合が目立つ。またその発生練習は練習ではなく、しっかりと作品の導入部になっている。これは自分で気分を落ち着かせるためには効果的で、また自宅での練習そのままと言ってよいだろう。ということは、彼女には練習も本番も同じということだ。もっと言えば、生活することがそのまま作品だ。そのことに筆者は一昨日気づいた。もっと言えば、ほとんど意味のない断片的なささやきをループさせながらの導入部を持った曲は、筆者にはスケッチに思える。スケッチは本画の下位にある準備、練習の素描だが、それゆえに本画にない味わいがあって、却って画家の個性を強く表わす。児玉さんのウィスパーを序とする楽曲もどこかそういうところがある。また素描は本画とは違って一色で描くのが普通だが、その単色の中に本画の多彩性が見える場合がある。児玉さんの曲もそうだ。色っぽい水墨画のようでいて、それが一瞬のうちに多色画に変貌するスリルがある。実際多彩に変貌するのだが、あくまでも全体のトーンは淡い単色だ。それは彼女の静かな声と落ち着いた物腰に強く負っているが、筆者は今ふと彼女は普段はもっと弾けて騒いでいるのではないかと想像しながら、すぐにその映像は萎んだ。それほどに彼女は自分の個性を強く自覚し、普段からそれを崩さないのだろう。そのことが小柄で静かである彼女にもかかわらず、混じり気を拒否した一種神聖さを、演技性抜きで醸し出すことを容易にしていると思える。つまり、筆者が白百合の花を連想したのは正しく、その第一直感を曲げる必要はない。白百合は筒状の花弁が若干透き通っていて、枯れ始めるとそれが急に加速化するが、その白い筒の中には湿り気を帯びた雌蕊や赤茶の雄蕊がある。児玉さんの淡彩画的な楽曲が次第に盛り上がって行くのは、その蕊が露わになる様子を思えばよい。では、彼女のどの自作曲も淡彩画のようかと言えばそれは違う。筆者は彼女のCDを聴いていないが、ライヴの曲目だけで彼女がマグマのような強い力を秘めていることがよくわかる。それはいくつもの鱗片で出来ている百合の球根が地上に向けてクラスター爆弾のように放射される様子に似て、ロック・ファンが胸を躍らせる瞬間だ。
 彼女は初めてなのか、英語で歌詞を書いたと説明しながらその曲をキーボードを弾きながら歌った。「窓から見ている」といったごく単純な歌詞をまとめたもので、賢い中学生でも書くようなものだが、その単純な歌詞を彼女が歌うと、前述の本来持っている淡彩の強みに重なって、とても完成度が高いように感じられる。実際60年代の英米のポップスやロックは単純な内容の歌詞がほとんどで、それらはメロディにどこか無理やり合わせた感もあった。ロックはリズムが命で、歌詞もそれに沿う必要上、意味を優先しない言葉遊びが多くなる。児玉さんは英語の歌詞を書いた理由として興味深いことを話した。先に書いたように、彼女は脳裏に浮かんでまだ言葉にならない言葉の断片を口ずさみながら作曲することが多いそうだが、そのようにしてメロディがまとまりかけると、そこにどういう歌詞を適用すればいいかと考え始める。その時、英語の方がしっくり来る場合があるそうだ。これはリズム強調のロックの歌詞と同じと言えそうだが、児玉さんの曲は激しいロックほどにはリズムが強くはない。それよりもルーパーを使うことからもミニマル音楽風で、そのためにも楽曲が淡色ないし単色を思わせるのだが、彼女はミニマル音楽をよく聴くよりも6、70年代の耽美系のロックを聴いているのではないか。耽美系と言っていいのかどうかわからないが、去年10月28日彼女と少し話した時にエディ・ジョブスンが好きと聞いたので、「美しい顔」が好みだ。そこで筆者は『ヴェニスに死す』を思い出すが、それは中年男性が美少年に魅せられ、後を追いながら息絶える物語で、同性愛が主題だ。では児玉さんはそれに関心があるのかと言えば、彼女は美しい女性には興味はないだろう。それは自らが体現しており、それに釣り合う男を彼女の本能は求めている。そうであるから、彼女の歌声は男に心地よく届くのだと思うが、男を意識した色気はむしろ感じさせない。彼女は自己に充足していて、歌声は息をするのと同じように自然と出て来る。それは他者を拒絶した自己愛に近いかと言えば、そうとも言えない。その空気の濃度差で作ったようなシャボン玉のような一瞬の彫刻としての彼女の楽曲は、白百合の花弁がそうであるのと同じように、たぶん年齢を重ねるほどに透明感が増すだろう。ただし、それは完全に枯れて地上にへにゃりと落下するような白百合の花とは大いに違って、共演者を怖気づかせるような気迫がより増したものとなるはずで、そういういわば前人未踏の音楽を彼女は大成させる気がする。金森幹夫さんもそういうことをどこかで思っているのではないか。彼が筆者を彼女のライヴに誘ったのはそういうことを書かせたかったのかもしれない。さて、以上を推敲いっさいなしに即興で一気に書いた。それは彼女の自然発生的な曲に倣ってのことでだ。
by uuuzen | 2019-03-20 23:59 | ●ライヴハウス瞥見記♪
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