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●京都NEGAPOSI(陰陽)にて、加納良英&サマーエッグス
椋池の干拓は昭和になってからで、それ以前は湖と呼んでいいほどの巨大な池が消えることは予想もされなかったであろう。大阪の堀江地区は江戸時代の埋め立て地で、現在の規則正しい街路は運河であったが、それが今は車と人が往来している。



さて、筆者は1月に梅田のライヴハウスHARD RAINに行ったが、金森幹夫さんのメールにその店長がトリオとして出演するとあった。そして演奏終了後に金森さんはその店長の加納良英さんと筆者を引き合わせた。10分ほどの間に筆者はいくつかの質問をし、その最後でライヴハウスに出たい若者が増えているかと訊いたところ、ヒップホップに行く人が多くて減っていると言った。流行が変わるからポピュラー音楽であって、60年代以降のあらゆる傾向の音楽の後継を目指す人がいる一方、アメリカの最先端の流行を真似る者が多いのは当然だ。ヒップホップのダンスを授業で教える中学校を以前ニュースで見たが、教育委員会は楽器を弾いて歌うという自己表現よりも、音楽のリズムに合わせて激しく踊る方が健康的とみなしているのだろうか。筆者が中学生の頃はフォークダンスであったが、当時でもそれは生ぬるくて気恥ずかしく、家ではTVに合わせてゴーゴーダンスをみんな踊っていた。筆者のような世代が教師になって、時代遅れのフォークダンスよりもヒップホップのダンスをと思ったのだろう。学校でそれが教えられると誰よりも上手になりたいと考える者やプロを目指す者が現われる。一方で子どもが毎年減少し、シンガーソングライターを目指す若者が年々少なくなっていることは想像出来る。そうなればライヴハウスの経営も徐々に大変になる。これも質問して知ったが、HARD RAIN級のライヴハウスは大阪では10か所に満たず、また東京は圧倒的に多いが、東京で活動すると埋もれやすく、あえて地方を選ぶミュージシャンもいる。また、ライヴハウスでの演奏者はどのように決まるのかと訊くと、HARD RAINでは加納さんが選ぶとのことだ。人選は店の経営に大きく関係すると思うが、今後伸びそうな経験の浅い人から老兵まで目を配りながら、また加納さんの好みも加わるのだろう。ともかく、彼は大阪を中心としたライヴハウスで演奏する音楽家に関してはかなりの生き字引であるはずで、また自分の音楽を書いて演奏する、いわば大立者だ。彼は席を立つ時に「もう若くなくて48ですよ」と言ったが、その若くないという自覚は若手への責任を感じていることでもあるだろうか。ライヴハウスの経営者であればなおさらだが、普段は別の仕事をして主に休日にライヴハウスで演奏するミュージシャンが大半であれば、その責任もあまり感じる必要はないかもしれない。それはさておき、48歳ではどういう音楽を聴いて来たのだろう。またそれが彼の音楽と深い関係にあるかと言えば、好きな音楽家と同じ傾向の音楽を目指すとは限らない。
 加納さんは今回のトリオでのネガポジ出演は初めてで、彼は演奏の合間にオーディションと言い、それに受かりたいと二、三度繰り返した。それはライヴハウスへの出演が店側から求められなければ、シンガーソングライターとしては立つ瀬がなく、出演したい人が出演出来るステージよりも多いことを意味する。となればライヴハウスは巨椋池と同じ運命をたどらず、まだまだ安泰と思えるが、賃金の現状からは若者の頻繁なライヴハウス通いは無理だ。加納さんと話す少し前に金森さんから紹介してされた三木さんという男性ともしばし話したが、彼はレザニモヲのさあやさんが親父キラーで、中年男性に人気があると言った。若くてかわいい女性の演奏する姿を間近で見られる機会が、飲食代を含めて数千円で見られるのであれば、居酒屋やキャバレーに行くよりはるかに得と思う中年男性は少なくないだろう。本当は出演者よりも若い世代の人がライヴハウスに詰めかけるべきところが、親父の世代も目立つ。この「パパ活」に似た状況は演奏者にとってはひとりでも多く来てほしいという思いからは仕方がない。また若い女性を応援する気持ちからライヴハウスに駆けつける中年男性に世間で言われる「パパ活」の思惑があるかと言えば、筆者の見る限りそれはない。音楽好きが新しい音楽に関心を抱き、また健気に頑張っている姿を見て活力を得たいのが本音で、また機会があればもっと有名になる何らかの手助けをしたいと思っているだろう。筆者の場合は、突如目の前に現われる初めての音楽にどう反応し、ブログにどう書くかに最大の関心がある。それは自分の感覚を試すことと、漂う思いを決まった字数で形にすることの格好の機会だ。しかもそれはほとんど一発勝負でまた綱渡り的な行為だ。以上は前書き、以下本論。加納さんの雰囲気は筆者の自治会に住む仏師とそっくりだ。まずそう思った。また彼の顎は少々しゃくれて長く、そのことによる舌の長さとその動かし方のために、声とその出し方に特徴がある。目は澄んでいてまた若々しい。ところで、ライヴハウス経営という夜の世界の仕事であっても、若者を出演させるからには信頼関係が欠かせない。それは音楽性にも表われる。加納さんは「and young...」というバンド活動をしていると金森さんから教えられたが、6日はそれとは違うバンドだ。バンドごとに違うレパートリーを演奏しているのかどうか知らないが、そうだとすれば自作曲が豊富にあり、それらをさまざまに響かせたいという編曲の才能に長けている。ただし、他のメンバーの奏でる音を加納さんが逐一譜面に起こしているのではなく、かなり自由にさせているだろう。そのことは6日の演奏から伝わったし、またそういうことが可能であるのも共演者との間で信頼があるからだ。それにもちろん即興演奏が出来るテクニシャンが必要であるのは言うまでもない。
 「サマーエッグス」は、「サマー」がクラリネット担当の愛称「なっちゃん」、「エッグス」がドラムスの「たまご」さんだ。「たまご」は「玉子」という名字かと思うとそうではなく、由来はわからない。「なっちゃん」は三味線を弾く人がいる「おかちめんこ」というバンドの一員であると金森さんから聞いた。小柄で眼鏡をかけた彼女は漫画のキャラクターのようで、ステージ左端に陣取って終始加納さんを向いて吹いた。ハンチング帽子を被ったドラマーの男性は手堅い技術を職人を感じさせ、燻裕里さんが在籍したバンドの一員とのことだ。多彩という表現がぴったりな熟練した奏法によって、加納さんの演奏を最大限に引き立てる役割に徹していることが伝わった。つまり、音楽の匠職人だ。このふたりをしたがえた加納さんの演奏で5曲演奏されたが、最初の曲はニエリエビタさんを連想させた。彼女が去年12月9日に大阪のコーナーストーンバーで演奏した時は、夏から一緒に練習したというヴァイオリンとサックスのふたりが加わった。彼女も加納さんもソロで演奏する時はギターを弾きながら歌うが、時に他の楽器を加えて自作の響きがどう変化するかを楽しみたいのだろう。ただし、加納さんのギターはカッティングがよく利いたストロークがほとんどで、またそれが1小節の頭だけという特徴的な曲もあった。その点でフォークよりもロックに近く、筆者はニール・ヤングを思った。また歌詞を明瞭に歌い、またその発声の抑揚は筆者には日本の70年代フォーク調を思わせたが、前述のようにそれは彼の舌の長さにもよる。アップテンポの3曲目は出来立たばかりの曲で題名が決まっていなかったが、詞が世間に反応してのものであるといった説明がなされた。これはあたりまえのようだが、その曲は個人の内面のみを凝視するのではなく、社会の中での自分を見るという眼差しだ。元来フォークソングとはそういうものだ。社会の矛盾や常識では考えられない歪みを、短く単純な歌によって世間に広める意識をアメリカの5、60年代の音楽家はみな持っていたし、それは日本にも波及した。その伝統が今はどうなっているのか知らないが、加納さんの年齢ではまだ記憶されていて、またそれを継ごうとする思いもあるだろう。ポップスは娯楽であり、また誰からも格好いいと思われる曲を少しでも多く作りたいのがどのシンガーソングライターの夢でもあるはずだが、現在は過去と切り離せず、過去には名曲がある。その現実を前に、また未曾有の大災害があった平成時代を経ようとして、歌詞のネタは無数にある。あり過ぎて手も足も出ないかもしれないが、シンガーソングライターの役割は巨大だ。特に加納さんの世代はそうだ。たかがポップスであっても命を賭ける価値があると信じる者は昔から絶えない。あの世に行った時、先人たちと対等に話せる仕事をしたいものだ。
by uuuzen | 2019-03-09 23:06 | ●ライヴハウス瞥見記♪
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