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●精華大学卒業終了展ライヴ、角矢胡桃
ったいなことをするというのが学生の、特に芸術系大学生の特権だ。その「けったい」の度合いが今はどうなのだろう。「風風の湯」でよく出会う81歳のMさんは酒好きで、数々の武勇伝があるらしいが、昔の飲み友達は酔った勢いで新幹線を何度か停めたことがあると言う。



●精華大学卒業終了展ライヴ、角矢胡桃_d0053294_00435542.jpgMさんも大同小異らしく、そのようなことを笑いながら話すが、今では警察が動き、世間で一斉に叩かれる。それがいいのわるいのか、何事もほどほどがいいと筆者は思う。さて、先週木曜日の夕方に金森幹夫さんからメールがあり、翌日の精華大学で先月西院のライヴハウスで見たHYPER GALのひとりである角矢胡桃さんのノイズの実演があるので見に行かないかと誘われた。ノイズ音楽にほとんど関心はないが、精華大学には行ったことがない。それで行くことにした。今日と明日はそのことについて書く。金森さんは角矢さんの才能を買っていて、彼女の音楽の別の才能を筆者に見せたかったらしい。ノイズと言えば最近では武田理沙さんのCDやライヴで聴いた。彼女の初アルバムは『パンドラの箱』と題し、また角矢胡桃さんの初CDは『脳震盪』という題名で、どちらも過激な騒々しさを形容する。脳がゆったりとくつろぐ音楽ではなく、あまりの激しい音で脳が傷つき、意識障害を起こすというのであるから、きわめて攻撃的だ。ロックはますますそのように変化して来たが、その限度を一気に越えた音楽がノイズで、それなりに歴史がある。土曜日は神戸から大阪に出てライヴを見に行き、これまで三度合ったことのあるKさんと隣り同士になったので、精華大で見た角矢さんのライヴのことを少し話した。Kさんによれば、一昔前に流行したが、最近また新しい人がやっているとのことであった。ここで話を少し変える。1週間ほど前、隣家で資料を探していると、昔売ったと思っていたLPを見つけた。それについてはいずれ感想を書くが、そのアルバムと密着していた別の1枚がある。非常階段の初アルバム『病六の奇病』で、444枚限定の初版ではなく、555枚限定の再販だ。今日の最初の写真がそれで1982年に買った。ただし、一、二度しか聴いていない。全部がギターのフィードバックのノイズであったと思う。これを書きながら聴けばいいが、別のものを聴いている。1976年4月5日に京都府立体育館で行われたジョン・ケージとマース・カニングハムの公演で、筆者はこれをカセットで録音した。前半はほぼ無音で、ケージは徐々に小さな音をマイクを擦るなどして奏で始め、後半はスピーカーから大きなノイズが流れ続けた。男女10数人のダンサーがそれに合わせて踊り、きわめて統制が取れていた。またケージの音楽は山の清水がやがて川から滝となる様子を思わせ、構成が面白い。ノイズではあるが、音色を変えた交響詩と言ってもよい。ケージの音楽はけったいなようでいて、抒情性に溢れることが多い。
●精華大学卒業終了展ライヴ、角矢胡桃_d0053294_00443666.jpg 金森さんはノイズ音楽のルーツはケージにあると言った。一方でトーン・クラスターの話をしたが、それを駆使したペンデレツキの音楽についてはいつか取り上げる。また金森さんは角矢さんのノイズは現代音楽ではなく、ポップスとの位置づけだ。実際彼女はケージやペンデレツキを聴いていないだろう。ではポップスで最初にノイズを始めたのは誰かとなると、日本では先の非常階段だ。このアルバムは当時ザッパのアルバム解説をしていた八木康夫、また後にザッパのアルバム解説をする谷口守といった人々が参加していて、ジャケット裏面はカル・シェンケル風のデザインで、ザッパ的要素が散見される。ただし、音楽は篠原有司男のアクション・ペインティングに触発されたいわばネオ・ダダで、また納豆や生魚、レバーの塊をバケツでぶちまけながらの演奏で、キーボード奏者の女性はノーパンで陰部が見え隠れすることもあり、ステージで小便もしたそうだ。そういう「けったい」かつ破壊的エログロ性はほとんどザッパとは何の関係もないが、当時ザッパの「けったいさ」は日本ではそのように解釈されていたのだろう。だが、非常階段のノイズはザッパの「いたち野郎」の10数年目の模倣拡大で、一方でザッパはケージにはかなわないと言っているので、ノイズの大本はやはりケージになるか。ザッパは71年のジョン・レノンとの共演でも「いたち野郎」と同様のノイズを奏でた。またその最中にヨーコ・オノは袋にすっぽり入り込むパフォーマンスをしたが、ヨーコとケージは同じニューヨークでつながりがあった。70年代から80年代、そしてデジタル時代になると、ノイズは多様になり、また誰でも作れるようになった。そうなるとノイズに個性が出て来る。角矢さんは大学の先生に面白いノイズの音を出すというので勧められたらしいが、ドラムを叩いたりキーボードを奏でたりする一方でノイズの世界に魅せられている。金森さんは昨日も一昨日も大学で角矢さんの演奏に接したが、2日目の一昨日は角矢さんはギターを使ったノイズ演奏をしたそうだ。これは武田さんのライヴを見て知ったが、ごく小さな卓板にたくさんの丸いつまみがついていて、それを回すことで音色や音量の変化が生まれる。その仕組みを筆者は知らないが、予め記憶させているノイズを即興で変化させるのだろう。となれば、楽器を使うジャズと同じで、その時の雰囲気や気分でノイズが変わる。連続した騒音であるので音階はないが、それを作ることも出来るのだろう。またノイズと楽音の差は曖昧で、筆者は時々ザッパのギターの音色を騒音そのものと思う。確かにそうで、それが明確な音階に沿っているので楽音として聞こえる。ただし、ロックに慣れない人はそれを騒音と感じるはずで、角矢さんのノイズと区別がつかないかもしれない。またロック好きでもノイズとなると聴く人はごく限られるはずだ。
●精華大学卒業終了展ライヴ、角矢胡桃_d0053294_00450660.jpg 精華大で染色を教えていた大久保直丸先生は、いわゆるきたない作品を嫌っていた。きたなさの中に美や真実が宿ることもあるので、筆者は全否定しないが、先生の思いは作品からよく理解出来る。先生が精華大を辞めたのは、「絵を描くのが好きで入ったのに、ちっとも描きよれへん」という、学生に対する失望が大きな理由だったと思う。精華大の授業料は年に140万円というが、社会に出ていつ元が取れるかとなるとなかなか厳しいだろう。筆者は絵や音楽の才能のある者は大学に行かなくても、いずれその道に進むと考えている。またそうでなければひとかどの人物になれない。大学が無駄だとは言わないが、学歴を過信するとハングリー精神旺盛な者にやすやすと追い越される。角矢さんの話に戻す。彼女は美人でまた当日はきれいな花柄模様のワンピース姿で、ヴィジュアル系のノイズ・ミュージシャンとして注目されるかもしれない。そしてすでに各地でライヴをしている。そのノイズ音楽を大久保先生が聴けばどう思ったことだろう。先生とは音楽の話はしたことがないが、騒音は嫌ったに違いない。アルバム『脳震盪』を筆者は買わなかったが、別の部屋ではそのアルバムの各曲を1台ずつのプレイヤーで同時にエンドレスで流していて、誰でもそれら11曲の各音量を自在に変化させてブレンド具合を変えることが出来た。金森さんはそのアルバムにはメロディのある曲も含まれると言ったが、角矢さんはただの騒音に聞えそうなノイズに、苦みのある珍味の酒の肴のように独特の滋味があると思っているのだろう。聴き慣れるとそのとおりと思うが、劇薬はほんの少しだけごくたまに使うことで充分だ。それで筆者は武田さんのアルバムのノイズ曲や非常階段のアルバムもほとんど聴かない。騒音をステージで演奏する行為はそれなりの曲としての構成や起承転結が必要だが、角矢さんの30分ほどの演奏には確かに意図した変化があった。それは楽譜に書かれたような正確なものではなく、場の雰囲気に合わせての即興が大きく占めると思うが、おおよその方向性をもって臨まねば、満足の行く演奏にはならないだろう。また最後はスピーカーの前にマイクをかざしたまま部屋を出てフィードバック音を聴かせ続けるというザッパの「いたち野郎」と同じ行為があって、ノイズ音楽の先端にいたいという気概は感じられた。それは彼女の音楽の一面性で、その他の面と合わさってノイズも変化して行くだろう。筆者はポップス界の多様性はTVで知るのとは大違いということを再確認したが、ノイズはけったいな音楽として隙間産業的な位置づけで、今後も少数の人は演奏を続けるだろう。金森さんは角矢さんに若冲の話を少ししたが、彼女はその名前を知らなかった。少しでも若い時に多くの芸術に関心を持つことは将来の大きな糧になるし、それをするしか芸術の錬磨はあり得ない。若さはすぐに消えるが知的さはそうでないからだ。
●精華大学卒業終了展ライヴ、角矢胡桃_d0053294_17162272.jpg

by uuuzen | 2019-02-18 23:59 | ●ライヴハウス瞥見記♪
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