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●神社の造形―日吉大社、樹下宮と大物忌神社
けて元の状態がわからなくなってしまうのが生きるものの定めかと言えば、子孫を残し、また記録を残すことでそのことを防ぐことが出来る。立つ鳥は跡を濁さないと言われるが、水鳥も糞をして飛び立つことがあって、人間の引き際が潔いことはいいとしても、何も残さないことはあり得ない。



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大多数の人の生きている間の痕跡は他者にはどうでもいいことなので、その人が亡くなった後は何も残らず、子孫がいても子孫も大多数は同じような人生をたどるが、ごくたまにその中から歴史に名を残す者が出て来る。それがどうしたと考える人は大多数だが、人間は総体として過去の記憶を持っていて、それを作るのも保持するのも人間であるからには、子孫を残さねばそれが不可能となる。そこで思うのは日本の若者が乏しい収入のために結婚したくても出来ないという声だ。結婚は若い頃の突き動かされる勢いがあってするもので、あれこれ打算めいたことを考えると必ずいずれ破綻する。それに、若者が経済的に貧しいのはいつの時代も同じだ。現在の日本の若者に結婚願望が少ないのは生きている充実感が乏しいからと思える。子どものない夫婦はたくさんあり、子をもうけても離婚する家庭が多いが、そのことと子孫を残さなくても悔いはないということとは別問題だ。自分が誰から生まれて来たかを考えればよい。今生きている人の全員に、血のつながった無数の先祖がいる。無数のそういう背後の最前線に立つ自分の存在は、いろんな理由があるにせよ、子孫を作るという本能があったことによる。その本能を持たないのはある意味では精神的欠陥だ。それほどに現在の日本は若者にとって生きにくいという意見があろうが、何と比べてそう断言出来るのか。飢餓状態であっても人は子孫を残そうとするから、子どもが不要との思いはむしろ飢餓の正反対で、食べることに困らず、遊びに困らないからだ。繰り返すと、子孫を残そうが残すまいが、個人の大多数は死ねば溶けて消えるのと同じで誰も記憶に留めないが、子孫がある限りは形あるものの美しさが伝わる。芸術に限らず、人の作った物はそれを愛でる人がいなければ意味がなく、そのためには誰かが子孫を残して行かねばならないし、またそれは自然とそう続いて来ているので何ら問題はないが、金がないと文句を言う若者は「子は宝」という考えを思い出せばよい。それを否定することは自分を否定することだ。それが嫌で自分が大事だと考えるのは大いなる矛盾でバチ当たりだ。1足す1が2と考えるのではなく、1足す1が3やそれ以上になるのが夫婦であって、協力し合えばたいていの困難は切り抜けられる。戦後金満国家になり、そしてそれが持続出来そうにない現在であるから出生率が低いのであって、また貧困国になれば子どもはたくさん生まれるはずで、人口減少をそう心配することはあるまい。
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 日吉大社に関係のないことを書いたが、案外そうではない。神社が千年以上も続き、そこでの祭りもそうであるのは、子孫が絶えないからだ。日吉山王祭では子どもたちが夜に大きな榊の木を引いて歩く神事がある。そういう子どもたちがやがて神輿を担ぐ大人になるが、坂本の多くの若者に結婚願望がなく、子どもはいらないと思うようになれば山王祭が立ち行かなくなる。そういう例が全国の神社のどこかにあるのかどうかだが、人口が現在よりもはるかに少なかった江戸時代やそれ以前でも祭りは行なわれたから、人口減少を憂う声は高度成長期に異様に膨れ上がった財政その他の規模を維持しようとするためのもので、その高度成長期が異常であって、少子化はむしろ正常であると思えばいいではないか。日吉大社も境内に108もあった社が21に減り、境外にあった社もぐんと減ったはずで、時代に応じて何でも規模を合わせればよい。変わらないのは夫婦が子孫を残し、またそのためには食べて行かねばならないことで、日吉大社の祭神には姫神も座し、また竈社もあってそこには奥津彦神と奥津姫神が祀られる。さて、5月25日に日吉大社に行ったのは、3日に家族3人で大阪に出た際、「中之島まつり」の古本市で内藤湖南の本を買ったことも大きな理由だ。そのことは当日のブログに書いたが、湖南のその文章は「近畿地方における神社」と題して今から百年ほど前のもので、日吉大社についても言及している。また湖南は「神社と思想問題」という観点は苦手で、歴史上から捉えるが、それでもたとえば京都の平野神社の祭神が百済の神を祀るという湖南の考えは、思想上から今も是認したくない人は多いだろう。筆者は神社の造形に関心があって、思想にも歴史にも深入りしない。思想は時代によって大きく変わり、また歴史も大きな声の学者その他によって書き変えられる。造形もそうだが、湖南が書いているように、以前から祀られている神を完全に撤廃すると祟りがあると信じられて来たので、かつては威容を誇った神社はとても小さな社に姿を変えてもそのまま伝わっている。何事にも勢力闘争はあり、神社もその例に洩れず、権力者の庇護を失うと氏子の範囲を広げるなど、時代に応じて存続を図る。災難が振りかかってもしぶとく生き抜こうとするのはきわめて人間的で、祭りを持続させるのは人間で言えば子孫を作ることにたとえてよい。その子孫の中から祟りを信じず、また社会の矛盾を糾弾して大きな変革を起こす人物が現われる可能性はあるが、大多数の人々は大きな変化を望まず、一個人によってこれまでの歴史や文化が根底から覆ることはあり得ない。外国に制服された時は征服者の考えによってどうなるかわからないが、おそらく外国の神を取り込んで神社は存続するだろう。その方が征服者にとってもつごうがよい。
●神社の造形―日吉大社、樹下宮と大物忌神社_d0053294_23462104.jpg 東本宮に入って真正面に見えるのは本宮の拝殿だ。それが今日の最初の写真で、石垣が積まれた一段高い場所にある。写真の左に少し見えているように、建物の庇が目に入る。その建物を真正面から撮ったのが2枚目だ。「樹下神社」という摂社で鴨玉依姫神を祀る。「樹下」とはどの木を指すのかと言えば、明日写真を載せるが、東本宮のそばに雌椰、楼門の近くに雄椰の2本の椰(なぎ)の巨木がある。これは西本宮の桂の神木と対を成すだろう。その大きな椰の木の下にあるので樹下宮と名がついたとすれば、木が神で、また木を植えた後に社を建てたということになるが、実際のところはわからない。またこの塀で囲まれた東本宮は西本宮のように整然としておらず、小さな社があちこちに点在し、付け足し感が強い。撮影するのに右往左往し、帰宅して神社の名前を調べればよいと思ったほどだ。なぜ西本宮のように、東本宮とその拝殿、そして楼門のみを一本の縦軸に沿って配置しなかったのだろう。最初はおそらくそうであったのが、後に祀る神が増えたと想像する。その神を西本宮に増やさなかったところに、西に比べて東が低地であることや、増えた神の社が本宮より段が低い土地にあることが理解出来る。つまり、より低い土地へと神を増やした。今日は境内の西側の社を紹介するが、3枚目は上が「樹下若宮」、下が境内西北角の「大物忌(おおものいみ)神社」で、写真では社の大小が逆で、当然「樹下若宮」が小さい。4枚目は「新物忌神社」で、東本宮の西にあって東に面し、「大物忌神社」とは90度向きが違う。「樹下神社」と「樹下若宮」、「大物忌神社」と「新物忌神社」はそれぞれ関係があることは明らかで、WIPKIPEDIAによれば「樹下神社」は妃、「樹下若宮」は子、「大物忌神社」は父、「新物忌神社」は母とされ、「大物忌神社」が東本宮のすぐ西北の背後に位置して同じく南面することが納得出来る。先の想像に戻ると、境内に夫婦和合の象徴である椰の木が2本あり、それを象徴したのがこれら4社と考えるのは間違いなさそうだ。妃の社があって皇太子のそれがないのは、外に働きに出て忙しいのだろう。今も昔の日本の夫は家にいる時間が少ないということで納得するしかなさそうだ。それでも子をもうけてそれが父母の近くにいるというのは理想的な家庭の姿とされたようだ。今の若い世代はこういう家族のあり方を東本宮で見てそれを否定するだろうか。一生独身でよく、子どもはほしくないという考えは自由としても、動物でも植物でも必死になって子孫を残す。人間は他の動物と違い、植物とも関係がなく、もともと精神的に壊れた異常な動物という見方もあるが、いつの時代も男女は子孫を残し続けて来た。その最先端に位置する人が親が産んだことに抗議するなら、日吉大社の猿が死期を悟って猿塚の穴の中に入るようにこっそりと死ねばよい。
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by uuuzen | 2018-08-09 23:59 | ●神社の造形
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