人気ブログランキング | 話題のタグを見る

●神社の造形―日吉大社、西本宮楼門まで
中の聖なる場所は塀で囲まれるが、日吉大社は山裾の起伏のある土地に広がっていて、大宮橋をわたって西へ直進すると、100メートルほどで突き当りに着く。



●神社の造形―日吉大社、西本宮楼門まで_d0053294_20574597.jpgその右手つまり北側に西本宮の楼門がある。そこから西本宮に入って順次東へと進んで東本宮に至り、時計回りに境内を一周することになる。受付でもらったパンフレットに載る「散策ガイド」には、山王鳥居を過ぎてすぐ、北に向かう道があるが、それには気づかなかった。そこに踏み入ると左手に「子安子立社」と「惣社」がある。前者は京都の街中によくある地蔵の祠程度の大きさだ。後者は幅も高さもその倍はあるが、それでもあまり目立たない。ただし、社の前は広々としていて、多くの人が集まれるようになっている。「惣社」は総合の社の意味で、多くの神をまとめて祀る。ネット情報によると、「山王上七社、中七社、下七社」の神々を合祀するから、これら二十一の社がある。また明治の神仏分離令以前には、千年少々前に建立された「根本大塔」があって、その塔のそばに「塔下惣社」という末社があった。塔は撮影されているはずで、絵はがきなどからその様子はわかるだろう。日吉大社も廃仏棄釈の嵐に巻き込まれ、歴史的価値のあった建物を失ったが、「惣社」の前が広いことはなるほどと思わせる。「根本大塔」はもちろん延暦寺の「根本中堂」からして仏教の塔だ。それが日吉大社の境内にあることが許されなかった。では明治になって山王鳥居が現在のような三角形の破風がついていたかとなると、一旦取り除かれたのではないか。これも写真が残っているだろう。山王鳥居のある位置は東西の本宮の中央で、日吉大社の中心だが、そのすぐそばに塔があったことは、日本の神が仏教にひれ伏している様子を具現化していると明治の人には思えたのだろう。実際そのとおりだが、それを言えば比叡山の頂上に延暦寺があって、日吉大社が山裾に追いやられているところからして圧倒的に仏教の力が強く、廃仏棄釈の考えは無理無茶もいいところであった。外国のものをそれほど憎んだのに、戦後はアメリカの51番目の州のようなことになっても平気で、明治の人は節操のない日本になったと自嘲するのではないか。山王鳥居をくぐってすぐに撮ったのが今日の最初の写真の上で、下は50メートルほど先の右手だ。木彫りの馬を置いた神馬舎は珍しくないが、それに隣接して神猿舎がある。金網で囲ってあって、中に大きな猿がいた。本物の馬は世話が大変だが、猿はたくさんいるし、一匹くらいはいいと考えられているのだろう。猿にすれば充分な餌を与えてもらえはするが、網から見える豊かな緑を見ると檻の外に出たいだろう。この神猿舎は昔からあったのかどうかだが、現在の頑丈な金属製は無理であったはずで、悪さをする猿をつかまえて山に放つよりも飼った方がいいと考えられたのではないか。
●神社の造形―日吉大社、西本宮楼門まで_d0053294_01084568.jpg 神猿舎の真正面に鉄筋コンクリートの立派な社務所や参集殿があり、猿の世話はしやすそうだ。「散策ガイド」には全部で8つの数字入りの赤丸印があって、その1番目は山王鳥居の少し東にある「猿塚」となっている。これは古墳の石組の蓋が露出したものだが、境内には70基ほどの古墳が確認され、出土品から6世紀半ばから後半のものと推定されている。「猿塚」と呼ばれるのは、この古墳の穴が唐崎まで通じていて、死期を悟った猿が自らこの古墳の中に入って行くという伝説があることによる。それほど日吉大社は猿と縁が深いということで、これはパンフレットの最初に掲げられる駒札の写真の文言を引用するのがよい。「当大社は平安の都・京都御所の表鬼門にあたり、鬼門・厄魔除の守護神と崇敬されて参りました。日吉山王大神第一の使が神猿さんです。御所の鬼門を「猿ヶ辻」と呼び、魔去るさんの木像がまつられています。人間の全ての厄魔を取り去ってくれるのが、日吉の神猿さんです。家の新・改築には神猿さんを祀りましょう」。赤丸2番が「神猿舎」だが、それを過ぎてすぐ、また北への道が分かれている。その奥を見ると今日の2枚目の上の写真のように突き当たりに立派な社が陣取っている。これは「白山社」だが、初めて訪れる人は先の「惣社」と同じく、そっちへ向かって歩を進めることはまずない。そのまま西進すると、すぐにまた右へ折れる道がある。そこで撮ったのが2枚目下で、「宇佐宮」だ。これらの社へは西本宮を見た後に自然に導かれる。「宇佐宮」を遠くに臨んだ後、さらに西に進むとすぐに突き当りで、眼前は鬱蒼とした森と道路下の渓流の水の空気を充分に感じるようになる。大宮川には小さな橋が架かっているが、立ち入り禁止だ。地図を見ると少し先の川沿いに「日吉山荘」という休憩所があるが、「散策ガイド」に記されず、そこまで行く人はいないだろう。それよりも西本宮の楼門前に着き、誰もがその威容に圧倒される。今日の3枚目の上の写真は楼門と大宮川の中間にある「大威徳石」で、玉垣で囲ってあって触れてはならない神石だ。「大威徳」は憤怒の形相をした仏像で、五大明王の一明王だが、戦勝を祈願された。それでこの石が大威徳明王が宿るとして礼拝の対象に今もなっているのかどうかだが、そばで絵馬は売られておらず、また仏教の大威徳明王であるから、この大きな石は神仏習合時代の名残として保存されているのであろう。少し手前に同じような「祇園石」もあった。これは祇園の神、つまり牛頭天王が鎮座するとされるもので、祇園祭が疫病の神を鎮めることが目的であるからには、この石も病の治癒を祈願するものであろう。これも神仏習合時代の遺物と言ってよく、それが西本宮の楼門前にあるのは、昔からそうなのか、あるいは本宮内にあったものを移動したのかと気になる。
●神社の造形―日吉大社、西本宮楼門まで_d0053294_01091588.jpg 3枚目下は楼門前の手水舎で、なかなか立派なものだ。後ろ姿は手を洗おうとする家内だ。左手奥に「古神札納所」の文字が見える。以上のように楼門前は誰もが一旦立ち止まるようなものがいろいろとある。それはJR坂本駅からひたすら坂を上って西へと直進し、その突き当りに着いたという安堵の気持ちや、また息を整えてから楼門をしばし見上げ、そしてそれをくぐるという段取りにうまく沿っている。書き忘れたが、「散策ガイド」は正しくは「神猿さん散策ガイド」で、境内の神猿探しに役立つものとなっている。赤丸3は西本宮楼門の軒下4隅にある神猿の彫刻で、これは今日の4枚目の楼門の写真からは見えない。建物を造った後にその木像を置いたのではなさそうで、ギリシア神殿の柱が女神を象っていることを思わせ、門と同じ赤い色で着色され、また軒材にぴたりと嵌り込んでいる。赤丸4は同じく楼門の蟇股で、これは2階中央にあって、3匹の神猿が松の木の上で遊ぶ様子が彫られている。着色されていたのだろうが、写真では褪せて見える。ついでに書くと赤丸5は猿柿で、これは「宇佐宮」を臨む分かれ道近くにある。グーグルのストリートヴューで確認すると、45度ほどに傾いていて、棒で支えられている。この1本では実の数はしれているから、もっと植えればいいと思うが、そうなると猿が増える。それに山の中には自生する実のなる木がいろいろとあるだろう。さて、パンフレットの裏面は「日吉大社の神猿さん エトセトラ」と題して5つのこぼれ話が載るが、前述の御所の「猿ヶ辻」の写真を載せるのが「その1」で、「京の都を守る神様」との題がって次のように書く。短いので全文を引く。「延暦13年(794)、都が平安京に遷都されました。このとき、京都の東北の鬼門に比叡山があり、鬼門に山があるのは地相が悪いと反対の声が上がりました。しかし、鬼門である比叡山にはすでに日吉大社と延暦寺があり、日吉の大神によって守られていることからこの問題は解決し、京都が都に選ばれました」。こうした風水の考えを迷信として一蹴する人があるが、人生でそう何度もないような大事であれば、古くからの言い習わしにしたがおうとするだろう。また風水は日照や風の向きを考えるもので、体や精神を健康に保つには気をつけるべきことだ。植物を見ればわかるが、同じ植物でも日当たりが悪いと成長が遅く、また枯れることがよくある。人間もそれと同じで、鬼門の考えはそれなりに意味がある。それはそうと、伏見人形に猿が多いのは、京都の鬼門を守ってくれている日吉大社の神猿を思ってのことだろう。また筆者が最近気になっているのは、東山にある新日吉神社だ。有名な女子大が近くにあり、まだまともに訪れていないが、本家の日吉大社と同じように神猿の像が境内にあるのだろうか。
●神社の造形―日吉大社、西本宮楼門まで_d0053294_01095110.jpg

by uuuzen | 2017-08-05 22:59 | ●神社の造形
●自転車で往復2時間のロング・... >> << ●『FRANK TALK Th...

 最 新 の 投 稿
 本ブログを検索する
 旧きについ言ったー
 時々ドキドキよき予告

S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
以前の記事/カテゴリー/リンク
記事ランキング
画像一覧
ブログジャンル
ブログパーツ
最新のコメント
言ったでしょう?母親の面..
by インカの道 at 16:43
最新のトラックバック
ファン
ブログトップ
 
  UUUZEN ― FLOGGING BLOGGING GO-GOING  ? Copyright 2024 Kohjitsu Ohyama. All Rights Reserved.
  👽💬💌?🏼🌞💞🌜ーーーーー💩😍😡🤣🤪😱🤮 💔??🌋🏳🆘😈 👻🕷👴?💉🛌💐 🕵🔪🔫🔥📿🙏?