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●京都NEGAPOSI(陰陽)にて、ジャップカサイ
が何かをしてくれることはなく、民が勝手に活動していることは無数にある。そしてそういう民の中から官がお墨付きを与えることがあるが、今まで放っておいたのに何を今さらと思う場合と、ありがたや節を歌いたくなる場合がある。



後者を狙って活動している芸術家は多いと思うが、官の誰が芸術がわかるというのだろう。わからないから官になったとしか思えない人が多いのではないか。それはいいとして、ライヴハウスは民のもので、官が介入すればろくなことはない。とはいえ、官が介入せねばと考えるほどに過激思想の音楽家がライヴハウスに登場するだろうか。音量は過激そのものでも、全存在は至ってまともで、また繊細で傷つきやすい者たちが自分の思いを音楽に託し、わずかな客でもその前に立とうとする。それは見方によっては自己陶酔が最大の目的で、そのことで幸福感が得られ、生きている実感を味わっていると言えまいか。それは悪いことではない。自分に惚れることのない根がネガティヴな人は自殺するであろうし、そういう社会的損失からすれば、自己表現を人前で行なうことはきわめてポジティヴで、そのことに癒される人がいる。ライヴハウスに通う人はそうだろう。さて、西院のネガポジで最後の4番目に登場したのは、ジャップカサイという細身で長身の男性だ。安来節を踊るかのような身なりで、演奏が始まる直前に同席の男性が、「とても変わっていますよ」と言った。確かにそのとおりだ。またとても面白かった。ネットで調べると、「ジャップカサイ」は睾丸マッサージを指す言葉で、YOUTUBEではそれに関連する映像がたくさん表示される。どうにかふたつ見つけたが、どちらも1分に満たない。それでも、そのわずかな映像と音でおおよそ雰囲気はわかる。また、ツイッターにアカウントがあって、そこでは自作のカセットを販売している。たまに路上でも演奏するようで、それをいつか見たいと思う。カセットを買うとすればその時だ。ジャップカサイという名前は、笠井か河西といった苗字で、それにJAPを足したものかと思うが、睾丸マッサージに連なることを目論んでもいるだろう。それは快適さを求めるということだ。つまり、自作の音楽によって陶酔したいために作曲し、披露している。そうとしか思えないほどに、彼の演奏する姿は「ひとり盆踊り」で、新たな日本的ダンス・ミュージックを追求していると言ってよい。彼が盆踊りもどきの仕草で機器を操りながら踊っている姿を見て、筆者は蕪村の発句「四五人に月落ちかかるをどりかな」を思い出した。盆踊りが夜を徹して行なわれ、いつの間にか4,5人が残って傾く月明かりに照らされている。一方、ジャップカサイはひとりで演奏して踊り、部屋の中では月明かりが見えない。蕪村がライヴハウスの演奏を見ればどう思うだろうか。
 金森幹夫さんは以前にジャップカサイの演奏を見たことがあるようで、「どうせなら南京玉すだれでもやればよい」と言ったが、それをそのままというわけにはいかない。何しろジャップカサイの音楽は演歌など日本の歌から誰しも耳馴染んでいる2,3秒のオノマトペの歌声を抽出し、それをところどころに鳴らすという、盆踊り的サウンド・スケープで、彼の踊りはそれに見合って即興かつ型に嵌らない。そのため、演奏と踊りは、見事と言ってよいかどうかは別にしてぴたりと合っているし、また夏の野良仕事をするような身なりも曲調にふさわしい。つまり、彼は盆踊りを憧憬しているが、金森さんの意見は金森さんが夏場は河内を初め、盆踊りを見るために各地を訪れていることから理解出来る。金森さんにすれば、本物の盆踊りが日本各地に根強く残っていて、それを適当かつ勝手に引用し、「もどき」に作り変える行為にあまり意味がないと思っているのかもしれない。わが自治会に筆者と同じ年齢の仏師のOさんがいて、彼は三橋美智也の歌声に今さらに痺れると言う。それは筆者にもわかる。筆者が小学生の頃はさんざんそれが流れていた。そういう日本的な歌謡曲のひとつの本質である盆踊り的な味わいが、ロックが全盛になっても感動する若者がいることは想像出来る。ジャップカサイの音楽経歴は知らないが、最先端の録音再生機器を使って自分の脳裏にある懐かしい日本的な音楽の神髄をコラージュし、それに合わせて踊ることで陶酔したい思いがあり、またそれは他者に伝染するとも思っているだろう。そうでなければライヴハウスで演奏することはないし、たとえば筆者がたまたま演奏に接してこのように書くこともない。ところで、演奏を見ながら筆者が思ったことは、「間」だ。その取り方は彼が操作する機器のつまみをどう操るかにかかっているが、つまみを操作して絶妙な音が即座に鳴るのではなく、1,2秒は遅れるようで、そのいわばいつ鳴るかわからない音形を待つ間、また鳴った途端の彼の動きは、しみじみとその音を味わっているという思いが伝わる。つまり、自分が収録ないし合成、あるいは引用した音を自分で鳴らすのだが、楽器を演奏するのと違って扱いにくさがある。それだけによけいにその音を愛しく思っている様子がある。シンガーソングライターやソングライターとは言えないが、予め用意した複数の音形を組み合わせ、またそれを変化させるというミニマル音楽的手法によって楽曲を構成する点で、作曲家兼演奏家だ。それは美術で言えば、街中で見つけた気に入ったものを集めてコラージュする作家だが、日本の風景を表現する点で外国の電子音楽作曲家に注目されるだろう。それは盆踊り的な音以外に、前述した「間」がよく考えられているからだ。同じような「間」を西洋人が作っても、そこには盆踊り的味わいは出現しないはずだ。
 3年前だったと思うが、京都文化博物館でヴェルナー・ヘルツォークが映画化したフランスの先史時代の洞窟内部を、白黒写真で撮影し、洞窟を再現するように合成した写真展があった。それを見たことで、ヘルツォークの映画がよりわかったが、筆者がそのことよりもとても気になったのは、真っ暗な展示室で鳴り響いていた日本人による電子音楽だ。30分ほどそれを聴き続けたところ、ある低音の音形は5分ほどの間隔でリピートされていることがわかった。それは無音状態からゆっくりと大きく鳴り、また無音に戻って行くという形だが、毎回絶頂になる時の音量に著しく差があった。展示室全体を揺るがすほどの大音量であるかと思えば、ずっと静かなままで終わる場合もあって、当日は録音を使ったにせよ、その低音の音形を操作するつまみの操作を5分ごとに全く変えたことになる。そしてそのような音形は10はあったと思うが、それぞれが別の長さを持ち、また毎回どのような音量で推移するかを操作するのであれば、たとえば1時間や2時間のまとまった長さを1秒たりとも同じ音を繰り返さずに済む。それと同じことがジャップカサイの音楽にある。彼がそれぞれ違う音の入ったつまみをどう操作するかは、演奏を始めた時から最後まで即興で行なうはずで、たとえば20分演奏するとして、どの瞬間も同じものになり得ない。その面白さを客は味わう。それはジャップカサイも同じで、うまく「間」を調節しながら、いくつかの音形をうまく混ぜ合わせ続ける。それは実際の盆踊りでも同じとの考えがあるのだろう。というのは、盆踊りは客が参加して意味を成すもので、先の蕪村の発句のように、客は増えたり減ったりし、同じ瞬間は二度と訪れない。ジャップカサイの音楽はHYPER GALとは違うミニマル的なもので、また日本の風景を感じさせながら、ジャップカサイの自己陶酔的踊りを見ながら客も陶酔するところに持ち味がある。三橋美智也の歌声に痺れるOさんが聴けばどう言うか知りたいが、おそらく仏像を彫りながら決して邪魔にはならないだろう。つまり、環境音楽なのだ。ミニマル・ミュージックにはそのようなものが多く、ジャップカサイの曲は現代音楽の中の電子音楽において評価出来る一方、演歌や盆踊りに接している点でもっと民の中で聴かれるべきだが、ライヴハウスという狭い閉鎖空間で鑑賞されるところに、現代にしか生まれない、個性的ではあるが孤立した自己陶酔の典型と思える。それが一旦たとえばNHK-FMの音楽番組で放送されると、全国から問い合わせがあるだろう。筆者はスティーヴ・ライヒの音楽よりも聴きたいと思う。またノート・パソコンほどの機器ひとつを操る姿を見ると、音を集めて各音形を操作することでサウンド・スケープ的な音楽が割合簡単に作れそうなことを思い、そっちの方に興味が湧いた。
by uuuzen | 2019-01-19 23:59 | ●ライヴハウス瞥見記♪
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