濃密な日がごくたまにある。多忙ということだが、ついで主義の筆者はいくつかの用事を作り、あえて多忙を計画して出かけることが多い。
最近は美術鑑賞についてほとんど投稿していないが、先週は14日に展覧会を3つ見たし、19日はふたつ、そして昨日も大阪でひとつ見た。それらの感想をひとつずつブログに書いて行こうと思いながら、たとえば食事をした後、それぞれの食材がしかるべき栄養として内臓の中で分けられるのと同じように、気分の切り替えが必要で、すぐに実行することが出来ない。それは思考する時間が必要であるからと言い訳をしておくが、実際は怠惰による。どのような対象に対しても感想は一瞬で芽生えるもので、それは日数を経ても変わらない。ただし、日が経つと冷静になりやすく、表現が和らぎやすい。展覧会の感想は見た時に一瞬で記憶し、それを書くことはすぐにでも可能だが、何日も経ってブログに書くことは、その記憶以外を分析し、文章として膨らませる、つまりいわばどうでもいいことで肉づけする作業は、筆者のブログのカテゴリーの中では腐心の度合いが大きい。そのようなしんどいことは避ければいいようなものだが、せっかく時間も金も使って見て来たことであるから、何か感想を書いておきたいという貧乏主義から抜け出せない。この元を取ろうという考えはザッパの作曲姿勢にもあって、嫌な経験でも活かした。漫画家の蛭子さんは看板屋で仕事していた時の嫌な先輩を自作の漫画で殺したそうだが、小説家も同じことをしている人は多いだろう。音楽家のザッパは、歌詞を使ってそういう嫌な奴を嘲笑することが出来たが、歌詞のない曲でも同じことが出来ると考えていたことが、曲の題名からわかる。だが、不快な経験を音楽で表現すれば人を不快にするのが普通で、音楽の本来の趣旨からは外れていると思う人がいる。その不快さはザッパの曲を味わう時に立ち塞がるひとつの謎だが、一昨日の夜、筆者はたまたまオットー・ディックスの油彩や銅版画を思い出してネットで画像をたくさん見ながら、不快感を催す芸術に確かな意味があることを再確認した。ディックスは第1次世界大戦に従軍し、その悲惨な塹壕戦をスケッチして数多くの作品を描いたが、それらは美しいと形容することが憚られる、現実の酷さを暴いたものだ。音楽は音を楽しむことだが、不快を楽しむことも人間は出来る。また不快は求めなくても向こうから勝手にやって来るもので、誰しも避けようがない場合がある。それを不条理というが、それはいつでもどこでも口を開けて待っている。そこに絶対に嵌らないと思っていても、自分の意思に反して陥ってしまう場合がある。その最大のことが交通事故に巻き込まれることだ。自分は速度を守って車を走らせていても、酒に酔った馬鹿者が運転する車に激突されることはあり得る。
さて、アレックス・ウィンターから2か月ぶりにメールが届いた。相変わらずドキュメンタリー映画を編集していることの報告だが、今回はそれとは別にアメリカ大統領の中間選挙で忙しいことを書いている。そして、最後には88年にザッパがTV出演した際のYOUTUBE映像を載せている。ザッパは『自伝』の表紙と同じスーツ姿で、真面目に司会者の問いに答えている。当時はレーガン政権で、ザッパは反レーガンの旗印を掲げて同年のツアーを行なったが、選挙人登録を観客に促すことを忘れず、投票することで政治が変わることを訴えた。日本ではアメリカのように共和党と民主党という二大政党が争う図式がなく、ザッパと政治との関係については理解がなかなか及びにくい。それはさておき、アレックスはそのYOUTUBE映像を紹介する文章の題名として「CHECK OUT THE POLITICS PRACTICED BY THIS OAF」と太字で書いている。これを見た瞬間に筆者は中間選挙に臨むトランプ大統領がやろうとしている政治についての発言をチェックしろと言っているのかと思ったが、続く文章との関係からすれば、「OAF」すなわち「馬鹿」や「不器用な男」はザッパのことを指していると読むのが正しいだろう。あるいはどちらにも読めるように意図した表現かもしれないが、アレックスはザッパのように明らかな共和党嫌いを示さない。大統領選に出馬しようとしたザッパは当時音楽雑誌から揶揄されたが、アレックスがそういうザッパをどう思っているかが「OAF」に表われている。ただし、この言葉をどう受け止めるかとなれば、日本で言う「正直者は馬鹿を見る」という意味での「馬鹿」すなわち「馬鹿正直者」であろう。アレックスはそのほかのこととして、スティーヴ・ヴァイの自宅を訪れ、インタヴューしたことを報告しているが、今日の3枚の写真はその際に撮られた。撮影者はアンヘル・デッカという東欧出身の映像作家で、ゲイルへのインタヴューも撮影したという。もちろんそれはアレックスのドキュメンタリー映画に使われるはずだ。アレックスとヴァイとの縁は、アレックスとキアヌ・リーヴスが主演した『ビルとテッド』の2本の映画に遡り、ヴァイは姿を見せずにギターの演奏のみで出演したが、今ネットで調べると今年5月にアレックスとキアヌは27年ぶりに同作の第3作に出演が決まったとある。となればまたヴァイはギターを担当するかもしれない。アレックスはザッパに関するドキュメンタリー映画を完成させた後、その映画の撮影に入るとして、やはり以前からの発言どおり、早くて来年早々にはドキュメンタリー映画は商品化されるのだろう。もう2か月少々だが、それまでの間にもう2,3回はメールがあるだろう。