●骨折りは損か尊か、その4
しむ顔を見るのは辛いが、少しでも立って歩く練習をしなければ折れた大腿骨は治らない。昨日は久しぶりに入院中の母に会いに行った。



一昨日、上の妹から電話があって、三度目に入院した病院に入って1か月経つので、主治医を交えての経過報告のカンファレンスがあると言う。それで腰を上げ、また家内と一緒に出かけた。病院には下の妹も来ていて、何年かぶりに家族が勢揃いした。母のリハビリは順調よく効果を上げ、前回訪れた時は抱き抱えられて30秒ほどしか立っていられなかったのが、昨日は自分で椅子から車椅子に移ったり、平行棒を両脇に抱えながら歩いて往復出来たりするなど、目覚ましい快復の様子を目の当たりにした。病院にはちょうど3か月しかおられず、12月中旬には必ず退院させられるが、残り2か月のリハビリ具合によるとしても、車椅子での生活になる可能性が大きく、絶えず誰かがそばにいる必要があると主治医から聞いた。妹は最近市内の介護老人施設2か所見学に行ったそうで、鷹峯にあるベッド数が110ほどの施設に母を入れたいと思っている。だが、京都市内にある同様の施設はどこも満床で、12月中旬に転院出来るところが今のところない。母が暮らしていた家は車椅子用にリフォームしておらず、また持ち主の妹はそれをする気がなく、鷹峯の介護施設にぜひとも現在の病院から移させたいと考えている。ところが、その施設も3か月しかおられない。その後は老人ホームとなるが、現在の病院からいきなり老人ホームへ入ることは出来ないらしい。カンファレンスは筆者らや主治医のほかに病院側の3人が同席し、30分ほど話し合いが持たれた。入院から1か月後における快復状況の多く項目が数字で表示され、とてもわかりやすかった。骨折した箇所のレントゲン写真も見せてもらったが、かなり以前に骨折した形跡があり、そこをかばいながら母は歩いていたという。また大腿骨と尻の骨をつなぐ、拳大の骨がかなり溶けていて、位置も下がっている。立ち上がる時は右足が痛むので左足に体重をかけるが、おそらく左の大腿骨も同じように劣化しているだろう。下の妹は母の個室に戻ってから、やはり手術をして骨を鉄に交換した方がよかったのではないかと言ったが、それを主治医が聞けば気分を害するだろう。どの病院でも手術はしない方がいいと主治医に言われたし、またネットで調べると6,70代になるとなるべく手術はしない方がいいと読んだことを妹に伝えた。すると、妹は知っている老人が大腿骨を折って手術をし、完全に治癒したと言い返すが、母は89歳だ。骨が溶けて半分は原型を留めていない状態でどのような鉄を埋め込もうと言うのか。手術が成功してもおそらく痛みが生じ、それを抑えるために薬漬けになるだろう。
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 主治医を含めて病院側の4人はみな若く、説明もていねいで、またとても親切であった。そのことに感動した。こういう若い人たちが日本の高齢者の生活を支えている。高齢者が多くなったので若者がその医療や介護に携わる必要が生じて来たから、若い人の職場が増えていいではないかと考えることも出来るが、生身のしかも認知症を患っている老人もいるので、世話は並大抵のことではない。根気よくリハビリを毎日2時間ほどしてもらえるので、母の骨折も思った以上に治癒して来ている。前述した項目のうち、食事は満点で、母の食欲は申し分ない。それどころか、午後3時には何か食べたいと言い始める。カロリーその他を完全に計算した食事を与えられているので、食べ物の持ち込みは絶対禁止だが、昨日は下の妹がたくさんのバナナと飴を買い込んで来て、母に食べさせていた。それが病院側に見つかるとひどく叱られるはずで、また母の認知症は糖尿病が原因でもあり、飴は絶対に食べさせない方がよい。だが、筆者は注意しなかった。病院で喧嘩すれば母も困る。母は早速バナナを貪っていたが、母の欲求を飲んで甘いものを外から持ち込むのであれば、入院している意味が薄れる。それはさておき、母は夕方になると相変わらず帰宅願望が出る。主治医からそのことを聞いて、筆者は空き家にしているわが家の隣りをリフォームして引き取ることは出来るかと質問した。その話を以前、上の妹にすると、話はうれしいが、とてもそれは無理で夫婦の間にもヒビが入ると言い、老人ホームに入れることを主張する。また主治医に対する筆者の意見を聞いた下の妹は、母が帰りたいと言っているのは、骨折するまで住んでいた妹の近くの家であって、筆者の隣家ではないと主張したが、それは言い過ぎだ。母は明らかに入院していることを理想的とは思っていない。昨日は筆者らの顔を見て母は泣いたが、それほど気弱になっているのは、入院が長引いて情けないからだろう。母にはそのくらいの認識はある。それに医者相手に冗談を発し、周囲を大いに笑わせたが、それは筆者らがいることゆえの安堵感からだ。一番いいのは筆者や妹が自宅に引き取ることだが、24時間見続けることは不可能だ。そこで入浴などのデイ・サーヴィスを織り交ぜるが、そのように暮らしている人が近所にいる。24時間は無理でも筆者は隣家の母の横で仕事することが可能で、そうなれば母は夕方になっても帰りたいとは言わなくなるだろう。母の思いに立てばそれが理想ではないか。だが、認知症が今後進み、筆者の顔もわからなくなるかもしれない。また、隣家の1階を車椅子生活のためにリフォームするのにたぶん200万から300万は必要で、今の筆者にはその余裕がない。母の年金は上の妹が管理しているが、かなり貯まっていると聞くから、そこからつごうしてもらえると今年中に引き取れるが、妹は反対だ。
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 主治医は筆者の発言に耳を傾けるだけで意見はしなかったが、母が何歳まで生きるかわからず、家族と同居してもちょっとした隙に倒れてふたたび骨折することはあり得るので、そこをどこまで覚悟が出来るかという面持ちであった。確かにそうだが、目を離した拍子に倒れることは病院にいても同じで、前々回に訪れた時には、少し目が悪そうな女性が車椅子から自分で立ちあがった途端に倒れ、大きな音を立てて壁に体を打ちつけたことを目撃した。幸い傷を負わなかったが、10人ほどの看護士や介護士がやって来て騒ぎになった。また、頻繁にニュースになるが、介護士が施設で高齢者を傷つけたり殺したりする事件があり、他人任せが理想的とは限らない。筆者がよく思うことは、現在のように老人用の病院や施設が少なかった時代、体の言うことが利かない高齢者は自宅でどのように過ごしていたかだ。布団に寝たまま放ったらかしであったかもしれないが、自宅という安心感はあったはずだ。それが日本は経済大国になり、また家族が少なく、夫婦ともに外で働くからには、家で寝ている高齢の親の面倒を看られなくなった。「風風の湯」でよく話をする81歳のMさんは、絶対に病院や老人ホームには入らないと言い、生きたまま少しずつ食を断って生き仏になることが理想で、あるいは悪事を働いて刑務所に入った方が若者もいて老人ホームよりはるかに暮らしやすいはずとも言う。結局どちらも出来ずに体力を少しずつ失って行くが、母を見ていても人間はあっと言う間に年を取ることを思う。主治医が、母が何歳まで生きるかわからないと言ったことの裏には、食欲が旺盛でまだ10年ほどは大丈夫ではないかとの思いがあるように感じられたが、10年経てば筆者は77歳だ。隣家に母がいるとすれば全くの老々介護で、家内は筆者の方が先に寝た切りになっているかしれないと言う。実際それは大いにあり得ることで、高齢の親の問題は思うほど簡単なことではなさそうだ。一方、母が今後介護施設や老人ホームに入るとすれば母の年金のみで足りなくなるかもしれず、そうなれば子ども3人で分担することになるが、億万長者の妹はいいとしても万年金欠の筆者の生活が破綻するかもしれない。今日の写真は前回訪れた今月3日に撮った。最初は母の個室からの空、2枚目は病院を出て西を見た。3枚目は四条河原町まで歩いた途中で撮った。とてもきれいな夕焼けであったのに、筆者のカメラではその色合いが出ていない。夕焼けが美しいのはごくわずかな時間で、それが過ぎると雲は黒くなる。今の母のまだ夕焼けで照っている雲だ。それが子どもらの顔や名前がわからなくなれば黒い雲と形容していいかもしれないが、それでも生きているからには他に代えようのない存在だ。
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by uuuzen | 2018-10-17 22:45 | ●新・嵐山だより


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