●「武田理沙~フランク・ザッパ・メドレー関西初演」 武田さんと筆者が10月26日、大阪の神山町のALWAYSにて対談します。
●『リニューアルオープン記念展覧会 堂本印象 創造への挑戦』その2
らりと散歩して途中で自転車が利用出来るのであれば、行動範囲がぐんと広がる。先日の京都のTVニュースで、京阪三条駅で自転車が借りられるようになったことを知った。



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1時間200円ほどだったと思うが、スマホをかざして簡単にロック解除が出来る。スマホを持たない筆者は利用出来ないし、また600円のバス乗り放題チケットを使う方がいい。自転車を使うと便利だが、どの施設でもそれを停めることは出来ないだろう。堂本印象美術館は今回のリニューアルでも自転車を停める場所がないような気がする。改装は建物の外観の塗り替えと、西に隣接する森がかなり伐採されて休憩用のベンチが設置されたことだが、建物の耐震設計に問題がなかったからか、内装はほとんど変化がない。ただし、コーヒーの香りがよく漂う喫茶室が出来て、以前よりくつろげるようになった。館に入ってすぐのグッズ売り場は以前のままだが、品揃えが増えた。これはどの美術館でもそのようになって来ていて、京都国立博物館の新館である平成館ではその面積がとても大きくなった。しかも同館の出口を兼ねた場所に便利堂が入って同じように図録その他を販売している。府立であっても、多少でもグッズの販売で利益が出るのはいいし、また府の財政が悪化すれば、堂本美術館はどうなるかわからない。そう言えば館内で勤める人を募集する要項が書かれた紙が置いてあって、1枚もらって来た。府としては、職員を雇うのではなく、もっと安価で雇える人がほしいのだ。給料はさほどよくないが、きれいな仕事で、美術館の雰囲気が好きな人にはいい。そういう人が決まるまでの措置として、府の職員だろうが、2階の広い展示場の入口に印象のあまりよくない中年男性がいて、欧米人が写真撮影したことに注意していたことは「その1」に書いた。それはさておき、2階の展示室に行くには1階から直線のスロープを利用するが、その片側の壁面に作品が展示されている。今回の企画店ではそれらの10点ほどは50年前の開館当時の作品が同じ順序で並べられた。2階の展示を見ると突き当たりの右手にある階段から3階の「サロン」に行き、そこからまた2階に戻って今度はスロープとは反対側にある階段を下りるが、そこから1階奥の展示室につながっている。その途中の廊下沿いの壁に今回は50年前の開館当時の企画展のために印象が描いた文字中心のポスターの原画が数点展示されていた。そのうちの1枚の「堂本印象美術館」の文字が今回のリニューアルに当たってこの美術館のロゴとして使われるようになった。堂本にはレタリングの才能もあったことがそこからわかる。1階奥の部屋は小さな展示室がふたつあって、それは以前と変わらないが、そこにも監視員がひとり必要で、30歳ほどの女性がいた。つまり館としては最低ふたりは必要で、そのうちのひとりを募集中であったが、もう決まったであろう。
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 3階が狭い「サロン」のみというのはおかしいが、他の部屋は収蔵庫になっているのではないか。あるいはその収蔵庫はそこだけでは足りず、今日の写真には写っていないが、西側の森の北部にあった建物も使っているかもしれない。この美術館は堂本が手元に置いたすべての作品を常に一堂に並べられるほど大きくはない。それで府立になってからのこの20年の間、少しずつ展示替えをしながら見せ来たが、当然堂本が描いた作品の全部を展示していない。それは所蔵先不明の作品が多くて不可能で、また代表作だけで充分とも言える。とはいえ、その代表作がどれほどあるのかが堂本の場合にはわかりにくい。今回の企画店は第2弾が用意されていて、堂本の初期から最晩年までの作品から選ばれて、「創造への挑戦」の足跡が端的にわかるようになっている。それはチラシにも書いてあるように、「古典から抽象まで描きこなす」才能で、時代にとても敏感であったことがわかる。だが、そうであるほどに作品は時代を経るとレトロ感が増すもので、堂本の作品もそのように見えるところがある。ところが、建物の外観がリニューアルされると、また作品が新鮮に見えるから不思議だ。その意味で筆者は見慣れたはずの堂本の作品に対して今回は新たに感じたことがある。それはどのような画家でも同じだが、堂本は独自の筆法を確立しながらも次々にそれを変化させ、しかもそのどれも堂本であるという、日本のピカソと言ってよいほどの多彩な才能を開花させた。それは一言すれば、「意匠力に優れていた」ことになるが、つまり京都らしい画家で、表現は全く違うが若冲ともつながっている。「意匠」は「装飾」と重なるところが大きく、元来心を楽しませるものであり、明るく幸福なものと言ってよい。堂本の芸術の本質はそれだ。今回まず目を引いた作品は、2階展示室の出入口の前に展示されていた「高山寺縁起絵巻」だ。これは和歌山にある高山寺の縁起をやまと絵に倣って描いたもので、若い頃の堂本が貪欲に日本画のさまざまな技法を吸収しようとしていたことがわかる。巻物であるので全部を広げた展示は無理だが、それでも特徴はわかる。筆者はその絵巻の「絵」は、古典の勉強の跡がよくわかっていいのだが、「詞」の部分、つまり書に不満であった。「絵」と「詞」は確かに同じ人物によるものとわかるが、「詞」には「絵」ほどの力の入れようがなく、たどたどしさが目立つ。堂本はレタリング・デザイナーではあったが、書道家ではなかった。書も「意匠」と見ることは出来るが、江戸以前の有名な能書家の書を見ると、「意匠」や「装飾」に囚われない迫力と美がある。そういう書としてのみ鑑賞出来る本物の書に堂本は関心がなく、おそらく書の作品はないだろう。その意味からも、堂本は江戸時代の文人画家とは無関係と言ってよく、その伝統を継ぐ思いもなかった。
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 今回初めて見た作品があった。2階展示室の左手を占める最高裁判所から依頼された壁画「豊雲」で、長さ11メートルもある。その小下絵との見比べが出来たが、絵よりも額縁に筆者は関心を持った。説明には小下絵にしたがって金工職人が造ったとあったが、それは腑に落ちない。下絵はかなり粗く描かれていて、額縁の金工意匠はそれをそのまま拡大した仕上がりとは全く違うからだ。堂本の亡くなる1年前の作品であるので、実物大の額縁の下絵を描かなかった可能性が大きいから、金工職人は堂本の意を汲み、かなりの創作力を発揮して大きくて特異な額縁を作ったのだろうが、それは「職人」ではなく明らかに一流の「作家」の仕事だ。だが、堂本の注文を受けた仕事であるので、名前を出さず、「職人」としての位置づけに甘んじたのだろう。それほどにこの額縁はよく出来ている。技術は当然のことながら、意匠の案出の点においてだ。今でも最高裁判所を飾っているのかどうかだが、先ごろの東大の食堂の壁画が廃棄処分されたことから推して、40年ほども経てばもう用済みとされ、元の場所から外されたのではないか。肝心のその絵は屏風で言えば11曲という変則だが、額縁は中央の一扇の上辺のみ多少飛び出た形になっている。旭日が上る雄大な景色を抽象的に表現したような作で、琳派の影響を受けつつ、フランスの墨一色の太い線で描かれた抽象画の感化を受けている。日本の前衛書道の墨象とフランスの抽象画家、たとえばアレシンスキーは50年代から交流したが、堂本は京都の前衛書道家の動きに魅せられていたのではないか。「墨象」の作品は伝統的な書とは違って、瞬発力、即興、偶然が左右しつつ絵画のような造形感覚が必要だが、伝統的な書をおそらく苦手とした堂本は、書に対する負目を「墨象」やスーラージュのような書道的抽象絵画を咀嚼することで解消しようとしたのではないか。一方でモンドリアンのような抽象画もあるが、その厳格な構成主義性よりも即興性を好み、刷毛で描いたような太い黒の線がたくさん重なる作品が晩年には目立つ。これは具象をさんざんやって来た果ての行為で、それほどに堂本はあらゆる絵画を飲み込んだ。そしてそれらすべては「美しい」というにふさわしく、「装飾」の言葉に思い至る。堂本は「器用」と呼ばれることを嫌ったと思うが、前述の巨大な壁画作品「豊雲」の一風変わった形の金属の額縁は金工家の優れた技術によるもので、それに収まる堂本の絵ととてもよく釣り合っていて、筆者には額縁が職人によるものであれば、絵もそのものに見える。堂本は抜群に器用な、そして意匠性に優れた職人的な画家であった。それは光琳に通じている。最後に簡単に今日の写真を説明すると、最初の写真は出入口付近から西の森すなわち庭園を見た。2枚目はその東端辺りで、3枚目からは庭園が急な斜面であることがわかる。4枚目は一番高いところから南を見下ろした。無料であるのでぶらり散歩の途中で休むことが出来る。
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by uuuzen | 2018-06-08 23:59 | ●展覧会SOON評SO ON


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