●「武田理沙~フランク・ザッパ・メドレー関西初演」 武田さんと筆者が10月26日、大阪の神山町のALWAYSにて対談します。
●『LUMPY GRAVY PRIMORDIAL』その4
の上のアホ」をポール・マッカートニーが録音したのは1967年の秋だろうか。TV用映画『マジカル・ミステリー・ツアー』では長いコートに身を包んで丘に立って歌っているので、10月くらいかもしれない。



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『サージェント・ペッパー』の後に2枚組EPとして日本盤が出たのは68年の1月だったと思うが、それを近くの商店街にあったレコード店で買った時の筆者は、当時のアメリカでラジオから流れる以外のどのような音楽が作られているかを全く知らなかった。また知ったとしても魅力をあまり感じなかったかもしれない。情報に乏しかった時代のさらに情報に乏しい中学生にとっては、ラジオや音楽雑誌で紹介されるいわゆる流行音楽が「有名でよき音楽」の基準であり、その一方で学校で教わるクラシック音楽が古めかしい権威であると認識していたが、それは音楽好きに限る場合の話で、特に後者についてはほとんど無関心の子どもが多いのは今も同じではないだろうか。先日、タクシー代を支払って家の中を見せてもらうというTV番組で、「レコード・ストア・デイ」に東京のどこかの店に買いに来ていた14歳の少年が紹介された。なかなかしっかりした顔で、筆者の息子の半分以下の年齢であるのに、もっと大人の雰囲気があり、すぐにでもTVの人気者になれそうな気がした。父の影響でビートルズの音楽が大好きで、ジョン・レノンの真似をして「アイ・フィール・ファイン」のギター・リフを巧みに演奏するなど、筆者の14歳の頃とは格段に違うビートルズ・ファンぶりで、もう2,3年すれば自作のアルバムを発表しそうな早熟ぶりであった。ところが、学校ではビートルズ・ファンがおらず、話が合わないようで、その点では筆者が中学生であった頃とほとんど同じ状況で、ビートルズが世界的に有名になっても、中学生では熱心になることは稀のようだ。その少年は小遣いでLPレコードを買い、父と一緒にビートルズの曲を演奏するなど、音楽への強い関心は父からの影響が大きいようで、また絵に描いたような幸福な家庭ぶりが伝わったが、ザッパの音楽を聴いたことがあるのかどうか、また聴いたとしてどう思っているのか、筆者はそのことが多少気になった。少年の持つレコードの中『サージェント・ペッパー』があったので、今は容易にそのジャケットをパロディにしたザッパのアルバム『ウィア・オンリー・イン・イット・フォー・ザ・マニー』の存在を知ることは出来る。だが、知ってもそれが当時どれほど世間で評判になったか、つまり流行の度合いを確認した後、『たいしたことのない音楽、少なくても今の自分には不要』と思う確率が高いのではないか。その少年はどういう音楽が格好いいか、またその格好いい音楽を自分が愛好していることに自分の格好よさを確認しているはずで、格好いい基準から外れる音楽は無視するだろう。
d0053294_22513034.jpg その少年の大人びた、それでいて素直な雰囲気から、いずれオリジナルの曲で人気者になる可能性が大きい気がするが、筆者は一方で彼の限界を想像する。その限界は日本に生まれ、日本で生きて行くことで必然的にまとわりついて来るものだが、それなりに有名になり、また金も得て創作活動が続けられるのであれば、当人にとっては何の問題はない。それどころか、無数にある音楽の中からビートルズを中心としてそのほか自分が好きなミュージシャンの音楽を聴いて来たことに感謝するだろう。筆者が思う限界とはそのことでもあるが、それを言えば日本の音楽界全体が限界があることになる。この「限界」とは、「面白くないこと」と言い換えてもよい。ここまで書くと筆者が今日は何を言いたいかがわかるだろう。ザッパがキャピトルのスタジオで本作を録音したのは67年5月で、『サージェント・ペッパー』の発売1か月前だ。ザッパは早速そのアルバム・ジャケットを風刺した新作アルバム『ウィア・オンリー……』の録音に入るが、5月に録音した本作の発売に対してザッパが契約していたヴァーヴ・レコードが横槍を入れ、ザッパは再編集の上でヴァーヴから出すことにした。そして『ウィア・オンリー……』とは対の作品という形にされたが、ザッパがそう思っているだけであって、全く別の内容のアルバムだ。それゆえ67年のザッパがどのように多面的であったかがわかるが、『ウィア・オンリー……』は日本盤が出たのに、『ランピィ……』は無視され、また二作とも日本ではほとんど話題にならなかった。あまりにも当時の日本ではビートルズ人気が大きく、ザッパの音楽がラジオで頻繁にかかってもザッパを格好いい存在と思う少年はいなかったであろう。それは今もほとんど変わらない。レコードをたくさん売るにはアイドル的な見栄えが重要であることをザッパは痛切していたが、少年は「格好いい顔や表情をしているので音楽も格好いい」と思うもので、「格好いい音楽を書けば格好いいと思われる」と確信するのは真に大人になってからだ。そしてそういう真の大人は少ない。『ウィア・オンリー……』と『ランピィ……』は最初のCDでは1枚のディスクに前者、後者の順で収められた。それが1992年のライコディスク発売のザッパ承認盤CDでは分けられ、2012年のユニヴァーサル盤では初めて『ランピィ……』が『ウィア・オンリー……』の前作として位置づけられたが、これは2008年の『LUMPY/MONEY』に倣ってのことだ。これが『MONEY/LUMPY』と題されていれば、ジャケットの「LUMPY」と「MONEY」のロゴが上下に並べられる様子は、笑顔ではなくなり、怒り顔を表現するようになった。それもザッパらしくてよかったのではないか。
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 『ランピィ……』が『ウィア・オンリー……』の前作とするのは、キャピトル盤すなわち本作が『ウィア・オンリー……』よりも早く録音されたからであろうが、二作とも紆余曲折があってどちらが先かは判断し難い。そしてザッパはアルバム・ジャケットの吹き出しでは『ウィア・オンリー……』をPHASE1、『ランピィ……』をPHASE2としている。もちろんPHASE3は遺作『文明、第3期』で、これら3作がザッパが考える代表作だ。話を戻して、『ランピィ……』の92年盤は、LPのA面に相当するパート1とB面に相当するパート2がそれぞれ初めてザッパによって12曲と10曲に分けられた。各曲とも表示のみで、時間はわからないが、曲名によって容易にその区切り箇所がわかる。また、各曲の長さは均一気味ではなく、パート1,2ともに後半部をわずか2,3曲が占め、各面とも終盤に長い曲が集まる。これは各面とも最後に近づくにつれて聴かせどころがあるとの考えだろう。『LUMPY/MONEY』ではその各曲表示はなくなり、またユニヴァーサル盤でもそうであったので、92年盤の各曲表示は貴重だが、このようにどの盤も少しずつ他の盤とは違い、熱心なファンの収集意欲をそそる。『LUMPY/MONEY』のディスク2の最初に収まる84年の『ランピィ……』は、ブックレットの説明によれば、『オールド・マスターズ第1巻』のプロモーションLPにのみ収録された3分1秒の「ランピィ・グレイヴィ(抜粋)」という曲の全体を含むそうだが、それがどの部分に相当するのかは筆者はそのプロモ盤も所有しないのでわからない。それはともかく、84年の『ランピィ……』は音が加えられ、リミックスもされて68年の古臭い感じが払拭されている。ザッパはその音を前述の「抜粋」の形でのみ発売したが、機会があれば正式に全体を発表しようとしていたのだろう。それが没後の『LUMPY/MONEY』で実現したが、今後はLPとして「レコード・ストア・デイ」に発売されるかもしれない。ついでに書いておくと、84年の『ランピィ……』は他のどの盤よりもパート2が1分半ほど長い。これは92年盤に表示される曲目で言えば「JUST ONE MORE TIME」で、男女の会話が長くなり、背後にドラムスを中心とした密やかな演奏が加わってもいる。さて、本作のジャケットでは手品師のザッパの姿が大写しされる。ザッパは録音を手品と考えたであろう。現実を録音してその音を重ねたりつないだりすれば、どのような非現実でも表現出来る。その非現実は悪夢に近いかもしれないが、悪夢は現実ではなく、怖がることはない。観客の前で怖気づく人に対して、「カボチャが並んでいると思えばよい」とよく言われる。ザッパならそれをマフィンだと思えばよいと歌うが、67年にはすっかり自信をつけたザッパは、ビートルズの新作も驚くに値しなかった。
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by uuuzen | 2018-05-18 23:59 | ●新・嵐山だより(特別編)


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