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●『太陽の塔からみんぱくへ―70年万博収集資料』その1
究の資料として実物が最も大事だ。論文が書かれるのはその実物あってのことだ。先月5日に万博公園に家内と行って来た。今年1月24日に「太陽の塔」の内部公開にネットから申し込んだところ、2か月ほど先まで予約が埋まっていた。



●『太陽の塔からみんぱくへ―70年万博収集資料』その1_d0053294_00020880.jpg筆者は自由業であり、いつでもつごうはつくので、桜がまだ咲いている頃と思い、予約が皆無ので最も早い4月5日の見学を申し込んだ。そして、当日はついでに民族学博物館(みんぱく)の企画展を先に見た。1か月以上経ってしまったが、これらの感想を今日から3、4回に分けて投稿する。本展のチラシやチケットに採用される写真は、韓国の鳳山仮面劇の「放蕩者」だ。みんぱくは世界各地の仮面を数二千点は集めていると思うが、この仮面が本展の顔となったのは、岡本太郎が気に入り、万博時の太陽の塔内部の地下に展示されたという理由もあろうが、何と言っても芸術的な価値を考えてのことだろう。筆者はこの仮面を昔からほしいと思い、韓国を旅行した時に入手出来ないかと思ったが、数日の滞在で見つかるはずがない。それは日本でも同じで、たとえば海外の芸術愛好家が下調べをほとんどせずに来日しても、目当てのものに遭遇出来る確率はきわめて低い。ネット社会になってその点は大いに改善されたかもしれないが、ちょっと凝ったものとなると見られる場所はごく限られ、また旅行者用の商品にはなっていない。筆者がこの仮面を写真図版でまともに知ったのは、今日の最初の写真に引用する、1981年に各地で開催された展覧会『変幻する神々 アジアの仮面』の図録を兼ねた本による。その説明には人間国宝が作っているとある。これは旅行者が土産に買おうとしても、数万円では無理であろう。大阪鶴橋辺りの焼肉店でこれらの韓国の仮面を店内の装飾として用いているのを昔TVで見たような気がするが、つてを頼らないと入手出来ないだろう。また、本展のチラシとその図録の図版を比較すると、細部が大きく異なり、作り手が何人かいるのだろうか。鳳山は現在の北朝鮮にあって、南北分断によって鳳山仮面劇がどのように変化しているのかいないのかを含めて、この「放蕩者」ひとつ取っても面白い研究が出来そうだ。韓国の仮面劇は基本的に劇が終わると仮面を燃やすことになっていて、古いものがほとんど残っていないが、日本の万博で展示されたことで韓国が価値に気づき、それで作り手を人間国宝に指定したのではないか。日本で言えば郷土玩具の素朴な味わいで、人間国宝でなくてもほとんど同じものを作ると思うが、価値を社会的に認めて今後も保存して行くのであれば、人間国宝という権威を作った方がよいとの考えだろう。筆者は韓国の人間国宝にも関心がありながらまだ調べていないが、人間国宝を指定するようになったのは日本の万博頃からではないか。日本の人間国宝との違いを知れば、日韓の芸術の差がよりわかる。またそこには「もの作り」の素材や装飾に対する考えの違いも反映している。そういう研究は日本や韓国でもまだないように思う。
●『太陽の塔からみんぱくへ―70年万博収集資料』その1_d0053294_00023572.jpg アジアの仮面を現在MIHO MUSEUMで開催中の『猿楽と面』に並ぶ日本の仮面と比較対象する展覧会があってもいいが、『変幻する神々 アジアの仮面』では日本の仮面は紹介されなかった。太陽の塔の内部に展示されたのは、「日本万国博覧会世界民族資料調査収集団」(EXPO7‘ ETHNOLOGICAL MISSIN、略してEEM)が当時の予算で6000万円を費やして約1年要して集めた2500点の仮面と彫像の中から、岡本太郎が1282点を選んだもので、日本で集めた124点もそれに加えられた。EEMが集めた資料がみんぱくの展示品の基礎資料になったが、それが太陽の塔の内部で展示する仮面やで彫像であったのは、岡本太郎のアイデアであった。これは太陽の塔が彫像で、またそこに仮面としての顔が合計で4つあることと関係している。岡本は世界各地の仮面に人間の本質を見たが、ヨーロッパがすでにアジアに目をつけてそうした民族学の実物資料を大量に集め、有名な博物館がすでに各地に出来ていた。日本はその点で大いに出遅れ、もう良質のものは残っていないのではないかという懸念があった。それでもともかく現地調査し、買い集めようという号令がかかった。これは本当に英断で、みんぱくはアジアが誇る民族学博物館だ。万博が開催されなければ、また岡本太郎にお祭り広場の企画が委ねられなければ、みんぱくはなかった可能性が大きい。岡本が太陽の塔を設計する一方、若い研究者たちは世界各地に派遣され、限られた予算の中で最大の効果を上げようと奮闘した。そして、数多い仮面や彫像を太陽の塔内部の地下の展示場に揃えた時の岡本の喜びは、芸術家として絶頂の醍醐味を味わったであろう。当時岡本以外にそれが出来た画家ないし彫刻家がいたかとなると、日展その他の団体にそれぞれ大物はいたが、世界的な視野で物事を見る才能は乏しかった。岡本は型にはまることが大嫌いで、自分が属する団体のために動くといった小さな考えは持たなかった。それは日本では敵を多く作りやすく、援助を得にくいが、岡本が抜擢されたのはどういう政治の意図が働いたのか、また当時の佐藤栄作首相と個人的に懇意であったのかどうか、調べれば面白いことがわかるかもしれない。だが、何よりも岡本がフランスに学び、フランスの美術界に通じていたことが大きな理由ではないか。万博の10年前にフランスでは先史時代から現代まで世界中のあらゆる美術造形を網羅する美術叢書の刊行が計画され、60年代半ばにその刊行が始まった。アンドレ・マルローがその中心人物であったが、マルローの美術に関する著作は日本で50年代末頃から紹介されていて、日本はそのマルローの思想に万博に美術的な面で応じようとしたのではないか。そうであるならば岡本太郎くらいしか適任者が思い浮かばない。
●『太陽の塔からみんぱくへ―70年万博収集資料』その1_d0053294_00031873.jpg 本展はEEMの収集活動とその収集品の展示が中心となっていて、万博という機会がその後の民族学博物館にいかに大きく貢献したかがわかる。日本はこれ以外にはないと言ってよい時期に万博を開催し、集められた仮面や彫像はもう数年遅れれば手に入らなかったであろう。1968年から翌年というのは時代が大きく変わろうとしていた時期で、筆者はそれをビートルズの音楽の変化から感じる。万博のイギリス館ではきのこ型のひとりが入れるブースに頭を突っ込むと、ビートルズの『アビー・ロード』が聞こえたことを以前に書いたが、70年になるとロックの世界も新たな時代を迎えようとしていた。当時の筆者より10か20歳年長はビートルズには無関心で、また万博への関心がどうであったかとなると、ほとんどの人は万博はマスコミが喧伝する単なる大きなお祭りで、一度は見ておこうという程度の関心であったろう。ただし、あまりにパヴィリオンが多く、10回訪れても全部は見られず、大混雑の中、思い出の大半は人の多さで、それを批判する意見も多かった。筆者は半年の会期中に3,4回訪れたが、ほとんど何を見たのか記憶にない。空前の規模で世界中の名作を集めた万博美術館があったことも知らず、その展示目録を入手したのは10年以上経ってからだ。「後の祭り」を地で行く歯がゆさを覚えた人は筆者だけではないだろう。またそれほどに空前の規模で開催された万博が70年であったことに戦後日本の一種異様な威容を思う。当時美術に関心の強かった人たちが、万博美術館の展示や太陽の塔の内部の仮面群をどのように思ったのかという声を知りたいが、そういう意見を文章で見たことがない。前述のように、アジアの仮面がまとめて展示されたのは1981年で、万博から11年経っていた。太陽の塔の内部で仮面や彫像は岡本太郎制作の「地中の太陽」を取り巻く、いわばインスタレーションとして展示され、また塔の地下内部は薄暗かったこともあって、仮面の見所を鑑賞するにはふさわしくなかった。そのこともあってせっかくEEMが集めた仮面は、1977年に民族学博物館が出来てそこで展示されるまでは一般には馴染みのうすいものではなかったかと思う。つまり、アジアの仮面が一種のブームとなるのは80年前後からで、またその頃から海外旅行もしやすくなって、世界が狭くなり始めたと言ってよい。本展はみんぱくが開館して40周年を記念するもので、この40年の間にみんぱくは建物が増築され、また別館が建つなど、規模が大きくなって来ている。それは今後も続いて行くが、すでに世界中の実物資料を集めていて、洩れがあるとすればどういう時代のどういう地域のどういうものなのか、全体像を知らないので気になることではある。
●『太陽の塔からみんぱくへ―70年万博収集資料』その1_d0053294_00035949.jpg

by uuuzen | 2018-05-09 23:59 | ●展覧会SOON評SO ON
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