ぐんと春めいて今日から新年度だ。朝パソコンのメールを見ると、ザッパ・ムーヴィー・チームとアレックスから同時に一通ずつ届いていた。エイプリル・フールかと一瞬思ったが、メールを開くとそうではないことがわかった。

それどころか、これまでのアレックスのメールでは最上の内容だ。ヴォールト・パスがついに利用出来るようになったのだ。ザッパ・ムーヴィー・チームから今日送られて来たパスワードを入れると、今日の写真の画面が表示され、下方のAUDIOとVIDEOSの二つのピンク色のボタンからアクセス出来る。予想したように、量は多くなく、ヴォールト(ザッパのテープ収蔵庫)に保存されていた未発表の音源や映像の数百分の1にも満たないはずだ。これまでのアレックスがメールでたまに紹介していた音源や映像とのだぶりはないが、それらと似て断片的紹介と言ってよい。つまり、今後アーメットが商品化するCDやDVD、あるいはアレックスが制作中のドキュメンタリー映像作品のほんのわずかなサンプルだ。音源は全部で10、映像は12で、これらは筆者のように300ドルを支援した者だけではなく、もっと小額の人でもアクセス出来るのだろう。サンプルであれば出来るだけ多くの人に鑑賞してもらって、期待を大いに沸かせた方がよい。とはいえ、勝手にネットに公表すると裁判沙汰になるかもしれない。音源の最長は18分程度だが、だいたい10分より少し長い。ただし、演奏ばかりではなく、インタヴューもある。映像の方は最長が7分ほどだが、数十秒のものが目立ち、平均すると2,3分だろう。音源も映像もダウンロード出来るが、筆者は後者についてはこれまで経験がない。そのため、ダウンロードしてそれをどのようにDVD-Rに焼きつけられるのかわからないが、そこまでして保存したい映像はなさそうだ。音源は最初の3つまでを聴いたが、PLAYのボタンを押しても演奏が始まらないものがある。何度試してもそうで、これは筆者のパソコンが悪いのか、アレックス側が悪いのかわからないが、演奏の始まらないものは他にもあって、それらはダウンロードして聴いた。映像はまだひとつしか見ていないが、画質は期待出来ないだろう。最初に聴いた音源は「STUCCO HOMES(ALTERNATE EDIT)」で、15分24秒と長い。これは『黙ってギターを弾きな』の3枚目のB面に入っていて、9分ほどの長さだ。それが15分とは編集前の長いヴァージョンかと大いに期待したが、そうではなかった。「STUCCO HOMES」は1枚目のA面最後の「WHILE YOU WERE OUT」と同じく、スタジオでギターのウォーレン・ククルロとドラムスのヴィニー・コライユッタとの3人で録音されたが、今回の15分24秒は、「STUCCO HOMES」の演奏の後に「WHILE YOU WERE OUT」をつないだだけのものだ。そのつなぎ箇所は不自然であるから、本来はスタジオではおそらく前者の演奏を途中でカットし、後者をつないだのだろう。つまり、この2曲は本来一連のものか、あるいは休憩を挟んで同じ日に演奏された。カセット音源とのことで、当然マスター・テープの複製だ。パソコンの小さな音でまだ2回しか聴いていないが、アルバム・ヴァージョン以外の音は含まれないと思う。そのため、今回の題名は誤解を与えかねず、「STUCCO HOMES~WHILE YOU WERE OUT」と表示するのがよい。また曲の終わりの人の声はなく、それはスタジオで後日ザッパが挿入した。そしてその様子の一例は今回の12の映像のうちのひとつからわかる。「CANASIE」の冒頭のザッパの声を、自身のギター・ソロの最初に重ねる様子を撮影したもので、ザッパはミキシング・コンソールを操作しながらえらくご機嫌で、笑い転げている。