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●神社の造形―新熊野神社、その5
年を生きる時代の保険というTVコマーシャルがある。超高齢社会で百歳を超える人が今後は増加するだろうが、『ガリバー旅行記』にあるように、二百歳になっても死ねない憐れな病気と似たようなもので、体がよぼよぼ、認知症も出ている状態で、本人は生の喜びを感じられるのだろうか。



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10年ほど前か、TVで外国の初老の男性がひどい蓄膿症かその類の病気のせいで、常に息苦しく、生活が全く楽しくないので、医師に安楽死を求めてそれが許可される様子を伝えるドキュメンタリーがあった。また、これは最近ネットで読んだが、冷凍保存される全身の場合と頭だけの場合の死体がある。死者を蘇らせる技術が確立した時に生き返りたいためで、死者はそのことを遺言し、また保存の費用も遺した。ジョン・レノンが殺された時、その葬儀がなく、遺体がどこに葬られたかのニュースがなかったと記憶するが、ヨーコがジョンを冷凍保存して未来の医学に委ねたのではないかと思ったことがある。そして、仮にその考えが現実のものとなった時、蘇ったジョンはどのように感じるだろうか。喜んでふたたび作曲に勤しむと考えるのはかなり能天気だ。ヨーコやショーンのいない人生では楽しくなく、生き返りたくなかったとばかりに即座に自殺するかもしれない。また世を恨んで大悪人になるかもしれない。あるいはただの凡人になるかだ。これと同じようなことは上田秋成も考えて小説に書いた。江戸時代には食を少しずつ断ってミイラの生き仏になる人がままあったが、秋成はそうした人が仮に生き返った時、本人やみんなの期待に反して仏のような高僧にはならず、欲深い凡夫になると考えた。僧侶が嫌いであったのだ。現在のたいていの高齢者も金や色に欲深いはずで、それゆえにTVで百歳になっても安心なような保険がほしいと考える。長生きは幸福とは限らない。スイフトと秋成は風刺家の点で共通するが、前者は晩年に精神に異常を来たし、後者は妻に先立たれて貧困と孤独に苦しんだ。人間は長生きがいいことばかりではなく、苦痛が多いことを知っている。それで高度成長期にはぽっくりと死ねることを祈願するために社寺を訪れる老人が多かったが、その後はその話をあまり聞かないところ、百歳まで元気に生きることを思う老人が増えたのだろう。それで早朝のラジオ体操を日課にしたり、毎日1万歩を目標に散歩したりする老人がいるが、山登りしたり、また西国三十三か所巡りをしたりと体力にものを言わせて活発に動き回る。筆者の小中学の時の同級生に、長年独身であったのに50半ばで娘ほどの年齢の女性と結婚した男がいる。彼は数年前の年賀状で妻と四国八十八か所巡りをすると書いて来た。熊野三山にも訪れていない筆者には想像すら出来ないことで、寿命が百歳時代になって来ていることを納得する。それはともかく、熊野詣は平安時代に庶民にも流行したようで、それは極楽往生したいという願いもあるが、見たことのないありがたい場所を確認したいという欲求が大きいだろう。筆者が訪れたことのない神社を可能な限り見たいと思うのもそれだ。
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 熊野三山に関心を抱いたきっかけは、三山でそれぞれ発行されている厄除けの御札だ。これは木版画で烏を漢字に当てはめた独特の図案になっていて、その護符を牛王宝印とも呼ぶ。時代によって多少デザインに差があるのは、板木が擦り減るたびに彫り直すからだろう。丸太町の熊野神社にはその御札と同じデザインの絵馬が売られている。それを見るとなおさら熊野三山のそれぞれの護符がほしいと思う。これら熊野三山に行かねば入手出来ないが、たまにネット・オークションに古いものが出る。白山など他の霊山でも独自の似た護符を頒布していて、それらを収集している人もいるが、筆者はそこまで執着するつもりはない。ただ、そのどこかおどろおどろしいデザインを生んだ熊野に行き、その実物を買って来たいと思っている。それらを網羅した本があるのかどうか知らないが、絵文字の系譜に関心のある人はいるはずで、論文ならいくつも書かれているだろう。烏文字の護符は熊野三山のいわば「神社の造形」で、新熊野神社でも授与すればいいと思うが、ホームページを見ると、烏を描いた絵馬はあっても牛王宝印まではない。やはり熊野三山に行くしかないということだ。さて、今日の最初の写真は朽木片に烏が一羽描かれる。これは八咫烏で、神武天皇を樫原宮に導いた熊野の神の化身で、太陽の象徴としても知られる。三本足とされるが、写真は二本足として描かれ、矢をくわえている。八咫烏は日本サッカー協会のシンボルでもあるので、誰でも一度は耳にしたことがあるだろう。2枚目の写真は薪割りしたような、それのみで立つ木材で、それぞれが2面に絵があり、右は「(神)発心門王子(仏)梵天」、左は「(神)滝尻王子(仏)帝釈天」とある。右の木材の右面に神、左面に仏を描き、左の木材はその反対になっていて、仏を中央に、神を両脇に置いているが、木材は左右が取替え可能で、ホームページの画像ではそのようになっている。どちらにしても木材の左右の面一対は神仏習合を示すのにちょうどよい形を利用している。また右の木材は紅葉の楓、左は桜を描いてどちらも日本的だ。それは元はヒンズー教の神である梵天と帝釈天の表現にも言えるが、王子を少年の像として描くからには、それに合わせる柔和な表現がいいと考えられたのであろう。熊野の紅葉と桜が美しいことは定評があるが、その豊かな自然を味わうために熊野詣をする人が多かったのだろう。ホームページによれば発心門王子は仏法の入口つまり熊野信仰の世界に導く神で、滝尻王子は熊野の入口に鎮座し、家族や家庭を守る神とされる。そのように御利益を解かれると、なおさら人は行きたいと思うが、今ではどの神社もあらゆる御利益を謳い、祀られる特定の神について詳しく知るという人は少数派ではないか。またたとえば発心門王子が梵天と同一とされると、広大な仏教世界の知識も要求されるし、発心門王子が梵天とされるようになった経緯にまで関心を抱くと、どういう書物を読むべきか、また読んだところでいろんな意見があることを知って、明確なことはわからないだろう。
●神社の造形―新熊野神社、その5_d0053294_02263468.jpg キリスト教に強い関心を持っていた従妹が筆者にいて、聖マリア信仰は本当はおかしなことだと筆者に言ったことがある。キリスト教はキリストがいての宗教で、キリストの母は関係がないとの考えだが、マリアに人気があって、それを讃える考えはよく理解出来る。カトリックでは街それぞれに守護神があるし、仏教でも釈迦だけを拝むのではない。阿弥陀さんや薬師さん、それに観音さんなど、信仰の対象は多い。観音さんにもいろいろあって、西国三十三か所の観音信仰の観音像も確か7,8種類ある。三十三間堂には千躰の千手観音があるが、それを飾るのではなく、釈迦如来に限るべきという意見を聞いたことがない。ヒンズー教の影響を受けて造形的に多様化した仏教の像は、曼荼羅で系統立てられたが、真言密教におけるその多種多様な仏の像は多種多様な生き物が生存する熊野にはふさわしい。自然を神とみなす日本ならではで、南方熊楠が熊野に籠もって研究したことは熊野信仰とつながっているだろう。今日の3枚目の写真は曼荼羅で、東寺の両界曼荼羅のように整然とはしていないが、円形内部にシンメトリカルに描かれた仏像が星座のように配置される。ホームページによると、熊野本宮の八葉曼荼羅を元にこの神社が考える神の世界を描くという。まず、正方形の枠は結界で、その内部に紐で結ばれて吊られている木片の配置数は九で、この神社の境内を表現している。八葉曼荼羅は中央の円形区画内に大日如来、その周囲を取り囲む八つの蓮弁区画にそれぞれ如来を描くが、3枚目の写真でも中央に大きな円形が位置している。正式の八葉曼荼羅のように整然と描かないのは、木片の形がそれぞれ異なるために仕方のないことでもあるが、この神社の境内の社は完璧に整然と並んでいない。また、円形内の如来坐像は「仏」であり、そのそれぞれに対応する「神」もちゃんと周囲に描かれていて、神仏習合を提示することを忘れていない。ここは神社であるから、三十三間堂のような数理的で整然かつ厳密な仏の世界の視覚化は求めていないということだ。4枚目の写真は熊野本宮八葉曼荼羅で、右の木片は中央に八葉曼荼羅で、これは9体の仏で、その上部に役の行者と八大童子、下部に五体王子を初めとする王子たちが描かれる。ケース内の左は八葉曼荼羅の仏を梵字に置き換えたもので、密教独特のものだ。この梵字曼荼羅は熊野信仰を最小の単位で抽象化したものと言ってよいが、それはまた夢魔の熊野三山の小さな模型としての新熊野神社にもふさわしい。ただし、梵字は仏像より馴染み難く、やはり赤や緑など色鮮やかな彩色で描かれた仏像、神像がよい。熊野の森に映える朱色の神社として熊野三山がある。
●神社の造形―新熊野神社、その5_d0053294_02265648.jpg

by uuuzen | 2018-03-25 23:59 | ●神社の造形
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