●『ZAPPA/MOTHERS - THE ROXY PERFORMANCES』その6
名人は有名人とつき合うものかもしれない。そう言えば昨日の最後の話に続きがあって、金持ちは金持ちとしかつき合わないそうだ。貧乏人とつき合うと、ひがまれるし、奢るばかりで貧乏神に取りつかれると思うからだ。



そういう金持ちに「金はなくても精神的な金持ちがいる」と言ったところで聞く耳を持たない。精神的な豊かさの追求は単なる道楽と思っているからだ。ザッパも『自伝』で有名で金持ちのミュージシャンとそうでない場合との差を面白おかしく書いていた。その伝で言えば、ツアーした時の宿泊するホテルの格が違う。ザッパは70年代後半までは5つ星ホテルにはほとんど泊まらなかったと思うが、80年代になるとそうではなかった。それはもしもの場合に身を守ることがより保証されるからであったろう。明日は本作の最後として、その5つ星ホテルで出会ったミュージシャンについて書くが、今日はブックレットにある3つ目の文章がらみとする。その前に話を戻すと、ロキシーで映像を撮ったバリー・ファインスタインは、ザッパより9歳年長で7年前に亡くなった。彼は写真家でもあって、ボブ・ディランのアルバム『時代は変わる』やジャニス・ジョップリンの『パール』、バーズの『ミスター・タンブリンマン』、ジョージ・ハリソンの『オール・シングス・マスト・パス』のジャケット写真を撮った。つまり、ザッパは実力のある有名人に撮影を依頼したが、バリーはすでに1966年半ばにシュライン・オーディトリアムでのマザーズの演奏を撮影していた。その様子は未発表の68年の映画『ユー・アー・ワット・ユー・イート』に収められたらしい。それは66,7年のハリウッドやニューヨーク、サンフランシスコのハイト・アシュベリーにおけるカウンターカルチャーの様子をドキュメントすることに焦点を当てた作品で、マイク・バトラーとPPMのピーター・ヤーロウが撮影を依頼した。筆者はこの映画の存在は以前から知っていたが、今YOUTUBEを調べると、去年11月に投稿されている。70分の長さがあるが、残念なことに音がない。ザッパは最後の3,4分にわずかに登場し、ストロボ・ライトが点滅する中、ステージ上でギターを弾き、観客は踊り狂う。最後のクレジットでは0.3秒ほどの表示でカール・フランゾーニやザッパの名前が順に表われる。ザッパの演奏する姿の最も初期のもののひとつで、騒々しいダンス・ミュージックを提供していた様子がわかるが、一方で三流のモンスター映画への関心があって、ロキシーでの演奏を撮影して映画を作ろうとした時、10年前とは違って巧みな演奏を鑑賞してもらい、またフリーキーなダンスをゲストや観客たちにさせたいとの思いがあった。だが、その巧みな演奏による音楽は、奇妙なダンスと相似の関係にあって、誰もやらない、やれないことをザッパは追求し続けた。それは予算的には安くても、最上のものを提供するという覚悟のうえにあって、チープニスでは全くない。最初の言葉で言えば、精神的な金持ちの考えだ。
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 ブックレットに解説を書くジェン・ジュエル・ブラウンはメルボルン郊外からの出身で、ロキシーでのライヴを見た。先日は間違ったことを書いたかもしれない。彼女は観客のひとりで、当時10代後半であったとして、今は60歳くらいだろうか。パメラやGTOSのようなグルーピーではなかったであろう。解説の後半はロキシーやその周辺の当時の記憶が中心になっていて、ザッパのメンバーの経歴やツアーのデータは目新しくないので、そういう個人的な思い出は当時の熱気を伝えて面白いが、先の映画『ユー・アー・ワット・ユー・イート』と重なる印象があって、本作を聴くだけではわからない視覚性が想像出来る。今も営業を続けるロキシーは、当時は特に飛び抜けて洒落た場所でもなかったが、舞台からごく近いところで演奏を楽しめた。そのことは『ロキシー・ザ・ムーヴィ』からよくわかる。ザッパはロキシーで演奏したミュージシャンとしては6番目とのことで、これは先見の明があったということか。ジェンは、ロキシーの隣りにあったバー・アンド・グリルでは、ソニーとシェールのソニー・ボノがうろつき、女の子に囲まれたジェフ・ベックが仲間とハーモニーについて議論するなど、客たちはサテンやデニムを着たロック・スターたちに驚きながら、フラミンゴをかたどったプラスティック製のスターラーをガチャガチャと鳴らしてカリフォルニア・サンライズやマイタイといったドリンクをもったいぶって飲んでいたことを書いている。ロキシーではドリンク・カードが必要で、ウェイトレスはニューヨークの摩天楼群よりも多い飲み物をトレイに載せて運んでいたとあって、『ロキシー・ザ・ムーヴィ』からはわからない客からの視線が生々しい。また、パメラのダンスのことにも触れるが、彼女がどういう姿でどのように演奏中のマザーズに絡んだかは、『ロキシー・ザ・ムーヴィ』のボーナス・トラックで紹介された。そのパメラの踊る姿もCDでは絶対にわからず、ザッパがロキシーでの演奏を「ショー」すなわち見世物として映像化することに意欲を燃やし、ゲストを招いていろいろと試そうとしていたことがわかる。『ロキシー・ザ・ムーヴィ』にはモンスター映画からの引用があるが、ザッパはもっと独自の凝った場面を挿入したかったのではないか。ジェニはザッパが愛したモンスター映画としてたとえば1958年の『フライ』を挙げているが、この映画は8日のサウンドチェックの際、ドン・プレストンが被った大きなハエの仮面や、ザッパが10日にスプレーで描いたプラスティックの袋をふたりのローディに被せたことのヒントになっているのだろう。映画は映像の印象が強く、音楽は記憶されにくいが、一方で音楽から実際のステージの様子を想像する楽しみがある。ただし、音とそれに沿う現実との間には「やらせ」という贋の行為が存在し得る。その一方で音楽も部分を削除したりスタジオで音を重ねたりすれば、それは現実に一回限りであったこととは言えない。結局生涯に何度も反芻する記憶は、ジェニが書くような実際に見聞した光景に限り、レコードや映画はグーグルのストリート・ヴューを見るのと同じような、仮想現実を楽しむ行為に過ぎないだろう。ショーなどにうつつを抜かすのではなく、つまり道楽などせず、自分の現実を凝視して生きろとザッパは思っていたのではないか。
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by uuuzen | 2018-02-14 23:59 | ●新・嵐山だより(特別編)


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