●『ZAPPA/MOTHERS - THE ROXY PERFORMANCES』その4
の込んだ編集をし過ぎるようなところがザッパにはある。それは「その3」に書いたようにレコードは客を集めてのステージでの生演奏とは違うものとの考えがあったからだ。



元の素材を切り取ったり、別の音の追加や変更をしたりするなど、その編集作業は「空気の彫刻」と呼ぶにふさわしい。筆者はこのブログを書きっ放しで原則的に読み返さないが、それで誤字はもちろん、間違いも含まれる。読み返すと、粗が目立ち、それを直し始めると切りがないからだが、読み返す場合は言葉を削ったり加えたり、それはザッパのレコード作りと似た作業を行なう。何事も製作とはそういうことで、生演奏の場合でも予めどういう曲をどのように演奏するかを決めて練習するので、推敲作業を経ている。レコードになれば収録時間の関係もあって、あちこち切り詰める必要が生じるが、ザッパのように1曲が長めになる場合は特にそうだ。2分半から「ヘイ・ジュード」のように7分台の例外的な長さというビートルズの曲とはそこが大きく異なる。その意味でザッパの音楽はジャズであり、演奏者の即興演奏を聴くことを醍醐味とする。その優劣に関してザッパは自分なりの判断があって、同じ曲の同じ箇所のギター・ソロであっても優劣をつけ、その最も優れていると思えるものをレコード化した。甲乙つけ難い場合は、もうひとつをたとえばギター・アルバムで発表したが、テープの演奏速度を変え、つまり調性を変えて別の曲のソロとして利用した。そのクセノクロニーの技法の言葉を用いるようになったのは、『ザッパ・イン・ニューヨーク』の「ゴムのシャツ」からだ。「その3」に書いたように、今回の7枚組CDによって『ロキシー・アンド・エルスウェア』の大本となったライヴ録音がわかるようになったが、同作にザッパが書くもうひとつの音源である74年の「母の日」と5月8日のステージは公式に発売されていない。同年の「母の日」は5月12日だが、ザッパはシカゴのオーディトリウム・シアターと書いているので、これは資料本によれば11日の土曜日だ。また8日はペンシルヴァニアのエディンバラ大学で演奏したが、ふたつの会場からどの曲を『ロキシー・アンド・エルスウェア』に用いたかとなると、「その3」に書いた残りの曲「オレンジ州の息子」とそれに続く「モア・トラブル・エヴリィ・デイ」だ。「ダミー・アップ」については触れなかったが、これは明日に書くとして、同作のザッパの文章は、同作の大半は73年12月10、11、12日に録音したとあり、まずこれが今回の本作によって間違いであることがわかる。ロキシーでの演奏は8、9、10日で、また12日のボリック・スタジオでの録音が6枚目後半に9曲が収録されるが、それが全部ではないはずだ。オーヴァーダブの作業をボリック・スタジオとパラマウント・スタジオで行なったとも記すが、前者は12日以降も含むかどうか、また後者はいつであったかはわからない。
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 昨夜と今晩、筆者の投稿にザッパ・ファンから書き込みがあり、『ロキシー・アンド・エルスウェア』の最初の曲「ペンギン・イン・ボンデイジ」のギター・ソロは、資料本に74年5月11日のものと書かれると指摘された。一昨日筆者は『ロキシー・アンド・エルスウェア』におけるロキシーでの演奏曲と本作と聴き比べて、おおまかなその違いを書いた。そして、「ペンギン・イン・ボンデイジ」は10日の最初のステージ・ヴァージョンを元にし、ギター・ソロが違うのでこれは後日のスタジオでのオーヴァーダブとした。これはほとんど1回ずつ聴き比べての直感で根拠はない。書き込み者の内容を筆者は誤解していたが、その言いたいことはギター・ソロのみをスタジオで録音し直したのではなく、背後にルース・アンダーウッドの演奏がないので、ギター・ソロとその伴奏全体がそっくりシカゴでの演奏を挿入したとの意見だ。それで、伴奏を今パソコンで聴き比べると、ふたりのドラマーの音が左右入れ替わっているように感じ、また確かに叩き方が違うと思うが、『ロキシー・アンド・エルスウェア』と本作とではミキシングや音量の差が大きく、何度も聴き返さなければ何とも言えない感じがする。そして、ルースの伴奏は本作ヴァージョンでも筆者には聴こえない。そこで思うのは、「あれを洗ったことがないかい?」のトロンボーン・ソロだ。これが『ロキシー・アンド・エルスウェア』と本作とでは違うことを「その3」で書いたが、それも伴奏込みで74年のライヴ録音から切り取ってそのままロキシーの演奏と代えたとは考えにくい。伴奏はその必要がないほど滑らかで、ソロ・パートになって伴奏の色合いの変化はない。となると、トロンボーン・ソロはスタジオで吹き直したと考えるしかない。書き込みでは、『ロキシー・アンド・エルスウェア』でザッパはソロをオーヴァーダブしたとは書いていないと指摘するが、この段落の最後に触れるが、「しなかった」とも書いていない。それに、オーヴァーダブに2か所のスタジオを使っていることが気になる。ヴォーカルや効果音だけをオーヴァーダブしたのか、それとも演奏者のソロも変えたか。これは74年のシカゴやエディンバラでの録音が発売されなければわからない。74年にクセノクロニーの技術を用いていたとすれば、シカゴやエディンバラのギター・ソロのみを取り出して、それを加工してロキシーの演奏と合成したこともあり得るが、そのような手間をかけるのは自分のマルチ録音機器を入手してからだろう。スタジオを借りての作業であれば、最小限の時間で最大限の効果を狙う。ザッパはスタジオでギター・ソロを加えることを『ザッパ・イン・ニューヨーク』で行なったが、『ロキシー・アンド・エルスウェア』の「ペンギン」のギター・ソロがそうであるか、あるいはそんな面倒なことをせずに別のステージのソロ部分をそのまま置き換えたかは、ザッパが記していないからにはどちらでもいいことであったかもしれない。ザッパの文章の最後にある「どのロード・マテリアルもオーヴァーダブしていない」はロキシー以降のツアー録音という意味で、「ペンギン」や「あれを洗ったことがないかい?」はロキシーであるから、そのソロのみをスタジオでオーヴァーダブした可能性はあるし、また「ペンギン」のギター・ソロを含む部分は74年のロード・テープそのままを挿入したとも考えられる。筆者は書き込み者が指摘する資料本を所有しない。ザッパ・ファンはさまざまで、海賊音源を誰よりも多く集めることに熱を上げる人もあれば、筆者のようにほとんど公式発売のみで充分と思う者もいる。前者は後者を侮るだろうが、何事も自慢することはみっともない。
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by uuuzen | 2018-02-11 00:23 | ●新・嵐山だより(特別編)


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