●フランクフルトの思い出、「ユーハイムの洋菓子店」
済みとなったものは悲しい。その「もの」に心があればの話だ。ファスビンダーの映画『13回の新月のある年に』では、主人公がその境遇にあって自殺する。



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「物」のような心を持つとそんなことをしない。そういう心を「鉄のような」と形容するが、鉄が錆びるのは悲しいからとも考えられる。昨日取り上げたマイン川右岸の河川敷にある線路は、本当は用済みでとなったが、剥がして屑鉄にするのではなく、年に数回は列車を走らせることになった。それを提案した人は、用済みのものでも使い道があると考えた。何でも用済みとなるが、ある人にとっては有益に思えることがある。かくて用済みとなる存在は皆無だ。1億年前に生きた恐竜の骨が発掘された場合、それは用済みとは正反対の扱いを受ける。人間でも死ねば用済みかと言えば、臓器提供という、他者にとっては大いに有益な方法がある。たとえば『13回の新月のある年に』の主人公エルヴィンが自殺しても、ドナー登録していれば、その死は有益となる。そのように考えて自殺する人はあまりいないはずだが、大きな借金を抱えた人が自殺すれば多額の保険金が支払われることが頭をよぎることは珍しくない話のようで、人間は生に絶望しても何かの役に立つことを思う。さて、今日もグーグルのストリート・ヴューからダウンロードして加工した写真を使うが、話は昨日に関連する。最初の写真はマイン川右岸から南方を向いている。ほとんど同じ場所から北を向いたのが2枚目だ。この場所に立ってのことだったと思うが、3枚目の小径であったかもしれない。2枚目の撮影点は3枚目から100メートルほど下流で、どちらの小径も市役所の際とマイン川畔をつなぐ。1枚目の写真では左端に福音教会の尖塔が見える。これは『13回の新月のある年に』の冒頭場面でも映る。ファスビンダーがカメラを回した場所は2、3枚目辺りの河川敷だが、1枚目の写真には昨日言及した線路がはっきりと写っている。また、観光船の発着場所であることがわかるが、フランクフルトに訪れた観光客がマイン川を最も間近に感じるには最適の場所と言ってよい。筆者もこの観光船を見たが、それよりさらに印象的であったのは、波止場のどこかからかなり大きな音でジェファーソン・エアプレインの『あなただけを』が鳴りわたっていたことだ。それをしばし聴きながらヨーロッパを感じた。同曲の発売から25年も経っていたので、懐メロを聴く気分だったが、日本で聴くのとは違って味わいが違い、感慨深かった。河川敷に降りてくつろいでいた若者が大きなラジカセを鳴らしていたのだろう。誰かに注意されるまではそのように大きな音で音楽を鳴らすことは、日本でもよくある。そう言えば25年前のフランクフルトは、街中の偉人の銅像の台座に落書きが目立った。今もおそらく同じと思う。
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 フランクフルトの市役所の建物の外観は中世そのままだが、内部は現代的に改造されているかもしれない。日本では電線が街中の空を覆うことはあたりまえの風景になっているのに対し、欧米ではよほどの田舎でない限り、それは珍しいだろう。フランクフルトでは電柱はないが、それよりも筆者が感じたのは、車が街の景観に溶け込んでいることだ。車を発明した欧米ではみなそうかもしれない。日本の街並みでは電柱と車にどうも違和感がある。京都に住んでいればなおさらだ。電気や車を発明した民族とは異質な伝統を長く培って来たからだ。電柱はもう日本の風景に溶け込んでいる伝統と見る向きもあるが、祇園では電柱を撤去して江戸時代のような景観を取り戻すことにした。今のままでは中途半端で、自動車を乗り入れさせないことだが、車の便利さを捨て去ることは難しい。それで、車がなかった江戸時代のままの京都の狭い道を今後も車はわが者顔で走る。そのグロテスクさに京都が気づけばいいが、車を走らせないとなれば、日本の輸出産業に物言うことになる。妥協策として、日本的ないし江戸時代の京都の街並みに似合うデザインと大きさの車を発案することだ。それは日本ならではの小型車という、もう伝統になっている考えと言えないこともない。それはさておき、市役所が面する有名なレーマー広場からマイン川畔に出る道として、2,3枚目の写真に見える小径があり、2枚目はストリート・ヴューではその小径沿いの建物が確認出来ないが、3枚目は例外的に40メートルほど北の突き当たりまで車が入れる。3枚目の写真に見える現代的なデザインの店は「マインカイ(マイン川畔)カフェ」という名前で、筆者の記憶にはない。これの以前の姿はわからないが、ユーハイムの菓子店ではなかったか。先に書いた「あなただけを」を、川を見つめながらしばし聴いた時、後方にユーハイムのロゴを掲げた店があった。筆者の立ち位置が2枚目か3枚目のどちらであったか記憶にないが、2枚目は奥に少し引っ込んだ西側に、筆者の記憶にあるユーハイムの菓子店とよく似たドイツ料理の店がある。ひょっとすればその古めかしいたたずまいの店が1992年はユーハイムであったかもしれない。フランクフルトに馴染みのユーハイムのロゴを掲げる店があることにとても驚き、数回はその前を通った。ただし、看板を撮影しなかった。日本に帰って調べればいいと思いながら、そのままとなったが、TVでたまにユーハイムが取り上げられた。今ではその気になればネットで調べられる。ユーハイムはドイツ人の苗字で、夫妻が最初は横浜で洋菓子店を経営した。関東大震災で店がつぶれ、その後紆余曲折があって神戸で店を開いた。夫妻には子孫がいなかなったので、日本人が跡を継ぎ、今に至っている。
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 ユーハイムの菓子は関西に住んでいると、誰でも一度は食べたことがある。筆者はほとんどの商品を死っている。箱や缶に「YUCHHEIM」の大きなロゴがデザインされていた時期があり、そのロゴは今も変わっていない。フランクフルトでそのロゴを掲げる店を見かけた時、筆者は神戸のユーハイムの本社がドイツにあるのかと思った。それは間違いで、日本のユーハイムが大きくなって、ドイツに出店したのだ。ユーハイムのホームページを見ると、1976年にゲーテ・ハウス内に店を出したとある。2,3号店もフランクフルトに出来たようだが、それらの場所はわからない。レーマー広場の南を少し入ったところで筆者が見たのは、その2,3号店のどちらかであろうか。また、現在その店がないのは、この25年の間に撤退したことを意味する。それは充分あり得る。バブル時代を過ぎて、日本のユーハイムの経営に翳りが出たのかもしれない。あるいは年数を限っての出店であったか。それはともかく、日本のユーハイムがドイツに店を出すことは、ユーハイム夫妻へのはなむけの意味もあったのか、フランクフルトと日本が意外に近いことを感じさせる。ネット時代になって2000年以降の写真はたくさん検索で出て来るが、それ以前となると極端に少ない。フィルムで撮影された写真が膨大に存在するから、それらをスキャンしてネットに載せる人がこれから増加し、1976年以降2000年頃までのドイツのユーハイムの看板写真もいつかは簡単に検索出来るようになるかもしれない。そうなった頃には、たとえば今日の3枚目の「マインカイ・カフェ」は建て変わっているなど、街の様相の変化は留まることがない。さて、ゲーテ・ハウス内にドイツのユーハイム第1号店が出来たが、76年から16年後にゲーテ・ハウスを訪れた筆者は、そのような店があったという記憶がない。16年の間に撤退したことはあり得る。それはそうと、ゲーテ・ハウスに向かう途中で面白いガラスの彫り物が大きなウィンドウの中に飾られているのを見た。その店は今日の4枚目の写真の右手で、古めかしい夫婦の白黒写真が飾ってある場所にそのガラス彫刻があった。それは、LPジャケット2,3枚分の横長長方形で、中央に若い美女の正面顔が彫られていた。その眼差しは、筆者が歩くにしたがって追いかけて来た。分厚いガラスを抉って表現した作品で、全体は凹んでいるにもかかわらず、美女の顔は浮き上がって見えた。それが不思議で、鮮明な記憶になっている。またその店からゲーテ・ハウスまでは上り坂であったこともよく覚えている。その様子は4枚目の写真からでもよくわかる。ゲーテ・ハウスは左のビルから数えて奥へ3つ目の建物だ。中で買った日本語の解説書は今でも新品同様に手元にある。ほとんど読まないままに用済み同然となっている。ファスビンダーはゲーテに関心がなく、読みもしなかったであろう。だが、ファスビンダーの映画を筆者は京都のゲーテ研究所(ドイツ文化センター)で見た。
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by uuuzen | 2018-01-10 23:59 | ●新・嵐山だより


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