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●『美と技を極めるオスマン古典音楽』
調っぽい旋律だが、五線紙に書けば実際はどうなのだろう。民族音楽のLPやCDを数枚ずつは持っているが、西アジアの音楽はほとんど何も知らない同然だ。イランとトルコの音楽がどう違うのかもわからない。



●『美と技を極めるオスマン古典音楽』_d0053294_00213454.jpgそれらもいわゆるアラビア音楽に属するかといえば、微妙に違うだろう。トルコは東洋と西洋の中間にあり、東欧の音楽にどこか近いところがあるのではないか。そこまで行かずともギリシアとは近いだろう。こうした国の音楽は、西洋の平均律で調律しない限り、西洋の五線紙では音楽を書きとめることが出来ない。民族楽器はそれぞれ独自の音階があり、アラビアの音楽は全音や半音に限定されない微分音があることで知られる。それで、そうした音階を使う音楽は、和音の考えに馴染まず、単旋律主体となるが、それが1オクターブ内の12の音で区別出来ず、もっと音が多いのであるから、旋律は複雑な綾を呈することになる。もっと言えば覚えにくいメロディだ。それが連綿と続くが、これをアラビアの唐草模様つまりアラベスクのようだと西洋の音楽は表現した。ザッパが東欧やギリシア、そしておそらく西アジアの音楽に関心を抱き、60年代末期には「アラベスク」という題名の曲を書き、それを数年後にアルバム『いたち野郎』のある曲に使ったが、12音で出来ているので厳密にはアラビア音楽とは違うが、次から次へとメロディがカラフルにつながって行き、また半音もたくさん使っていて、国籍不明の感じが強い。ただし、全体としてカリフォルニアの明るい太陽を思わせ、いかにもザッパらしい。ザッパがそうした音楽を志向したのは、シチリア移民の二世という自分の血を意識してのことと言える。シチリアは周囲のいろんな文化の影響を受けたが、ザッパはその中でも東方に関心が強かったようだ。だが、ザッパの音楽は平均率に沿ったもので、微分音とは関係がない。そうした音を奏でる民族楽器を操ることが出来なかったからだが、アラベスクのようにメロディがうねうねと続いて行く音楽をギター・ソロでやった。それは教会旋法の援用で、中心となる音がレやファであったりするが、そのことに聴き慣れると、ザッパのある曲のソロが別の曲のそれに交換可能なことに気づく。つまり、ザッパのギター・ソロは旋法的には持ち手がとても少なく、後はリズムやギターの音色、バンド全体の音の違いで個性を出そうとしたものだ。
●『美と技を極めるオスマン古典音楽』_d0053294_00221192.jpg そのことを踏まえて西アジアの音楽を聴くと、前述したように、国や地域の区別がつかないように素人には思える。カラフルさが少ないからだ。民族楽器という限定的な音で演奏するのであるから、それは当然と言えるが、ちょうど西アジアの風景に似ているのかもしれない。砂漠があり、山岳地があり、そして西洋的な町並みといったものが存在しないとなれば、音楽を含めて文化が似るのは当然ではないか。だが、それは猥雑なものが少ない分、純粋で、またそれが気持ちいいと思うことも出来る。そのため、イランやトルコの人たちは、精神の奥底では自国の民族音楽で事足りているだろう。微分音は12音に耳慣れた人には聞き分けられず、また気持ちが悪いかもしれず、それが猥雑の印章を覚えさせるかもしれないが、前述した猥雑は、どぎついカラフルなイメージにつなげてのことだ。さて、全く予備知識なしに、先日内覧会に訪れたMIHO MUSEUMでトルコの民族楽器による演奏を30分ほど聴いた。これが何のために開催されたかと言えば、案内状に同封されていたA4サイズの説明書きにはこうある。「シェイク・ハマド・ビン・アブドゥブラ・アル・サーニ殿下所蔵のオスマン時代の楽器が奏でる悠久の調べ」。カタールの王様はムガール帝国の宝石に関心がある一方、民族音楽の伝統楽器の収集もしていて、今回は7名のミュージシャンを引き連れて来日し、おそらくこの内覧会でのみ演奏した。これほど贅沢なコンサートはめったにない。ついでに日本各地でコンサートをすればいいように思うが、その予定はおそらくないだろう。あればチラシが用意されているはずだ。また、今回のみの演奏であるのは、楽器が貴重であり過ぎるからだろう。となれば、もっと安価の現代の楽器を使っての演奏会を開けばいいが、トルコの音楽という地味さではどこまで人が入るかは疑わしい。
 案内チラシの裏面は「美と技を極めるオスマン古典音楽」と題し、「ネイ」という笛を持つ髭面の男性の顔写真がある。Kudsi Erguner(クジィー・エルグナー)という名前で、オスマンのスーフィ古典音楽を世界に紹介したことで知られ、100枚を超えるアルバムがあり、5月に世界ユネスコ芸術家として推薦されたとある。アマゾンで早速調べると、100枚はないが、CDが何枚も表示される。それらを購入して書けばいいが、多忙を理由にコンサートの簡単な印象を書くに留める。さて、奏者7人の奏でる楽器は、トルコの民族楽器名を知らない者には何を指すのかわからない。簡単に言えば、葦で作った笛のネイが主旋律を担当し、ヴォーカリストがひとり、大きなタンバリンのようなわっぱに皮を張った打楽器がひとり、そして最晩年のザッパが好んだハンガリーのツィンバロンとそっくりなカーヌーンと弦楽器3人だ。その中でも棹の長いタンブールが大変見物だそうで、18世紀後半のものというが、実物が見られる機会は皆無に等しいと言われている。これらの楽器はステージ上の手前に置かれていて、筆者はその前を通りながら、そのままレストランに行って食事をした。それが終わってステージ前に行くと、まだ楽器はそのままであったが、ステージ前の椅子に人が集まり始めていて、撮影するのがはばかられた。結局撮影せず、またじっくりと眺めることもしなかったが、タンブールとケマンチー(ケマンチェ)はチラシに印刷されている。ケマンチーはタンブールとは違って弦を擦って音を出す。それらによって演奏される音楽は、エレキ・ギターに耳慣れた者からすれば、はかないと言うか、微分音ならぬ微妙な音で、一度聴いただけでは覚えられない。奏者の前に楽譜立てが据えられていたので、それが見られればよかったが、どういう楽譜かはわからない。またほとんど即興演奏で、音楽がかもし出すムードを楽しむというものだろう。もちろんそれは西洋の音楽も同じだが、作曲家の自己の主張がない、あるいは少ない分、聴いていて映像が浮かんで来る。
●『美と技を極めるオスマン古典音楽』_d0053294_00341864.jpg
 演奏は3曲であったと思うが、最初の曲で筆者は「コンドルを飛んでいく」を連想した。笛のメロディが大空を飛ぶ鳥を思わせたからだ。アンデスの音楽とは全然違うが、素朴な点では共通性がある。チラシには、「12世紀から約600年続いた多民族国家、オスマン帝国は、アラブ、ギリシア、インドなどの多彩な音楽を取り入れて発展をとげ、宮廷の人々を魅了してきました」とあって、この一文から連想されるイメージどおりと言ってよい。チラシにはまた「西アジアの悠久の調べ」とも書いてあるが、これもそのとおりで、西アジアの音楽に全くつまびらかではない筆者にはどう文字で表現していいかわからない。ネット時代になって西アジアでも欧米のポップスが民衆に歓迎されていると想像するが、耳に染みついた民族音楽特有の節回しはそのままで、そこに欧米のポップスが用いる電気楽器を使うことが主流だろう。それは日本でも似たようなところがあって、どこかに自国らしさが残る。強いて残そうというのではなく、それが一番馴染むからだ。その一方で純正の民族音楽は大切に保存しようという考えがまたあるはずで、今回のコンサートはそういうもので、日本の雅楽などに似ているかもしれない。そして雅楽はほとんどの日本人にとって実態を知らないものであるのと同じく、今回の演奏は現在のトルコ人が普段聴くものではないだろう。「宮廷の人々を魅了してきた」ととなると、民間人には無縁のものであったかもしれない。だが、民衆にも音楽は必要で、宮廷音楽家と同じ楽器を使って、卑俗な曲を演奏していたか、それとも音楽は贅沢なもので、生活には必要とされなかったか。筆者はところどころにザッパを思わせる箇所があるなと思いながら聴いたが、それもそのとおりだ。そして、ザッパのそういう特徴をたとえば日本のミュージシャンが模倣すると、同じような曲が出来るだろうが、そこにどれほどの必然があるかとなると、ザッパは笑うだろう。シチリアという血脈と風土を意識したザッパがやるならまだしも、地中海とは何の関係もない国の者が真似しても奇妙なものが出来るだけだ。そう思う筆者には、西アジアの音楽が手の届かない遠いところのもので、またそれだけに独特の魅力を持っているなと肯定はするが、毎日聴きたいものではない。それは幼ない頃に聴いたことがなかったからで、その伝で言えば、筆者は日本独特のヨナ抜きのメロディや、小学校で教わった唱歌が心の中心にあるのかもしれない。
●『美と技を極めるオスマン古典音楽』_d0053294_00230215.jpg

by uuuzen | 2016-10-03 23:59 | ●展覧会SOON評SO ON
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