痙攣のしまくりといった感じの日本だ。昔はアメリカがくしゃみをすれば日本は風邪を引くと言われたが、親分の顔色をうかがう下っ端みたいに、新大統領の発言に戸惑っている。
それにしても日に日にトンデモ大統領であることがわかって来て、これからどんな世界になるのか、恐い物みたさのスリルがある。アレックスからまたメールが届いたが、去年11月にトランプが大統領になって以来、そのことについての発言がないのはどうしてかと思っていたところ、今日のメールは最初からそのことについてのほのめかしだ。ザッパのかつての発言映像によって、トランプのトンデモなさを伝え、また注意を促すといったところだが、メールの題名が「“Beware of the fish people.”」で、これはクォーテイション・マークがあるので、アレックスが発言しているというより、誰かの発言を引用した形だ。『魚人間に気をつけろ』とはどういう意味かと思うが、「魚」には「人を釣るトンデモ意見」といった意味もあり、この場合は大嘘つきの大統領を意味しているだろう。ザッパはニクソンやレーガンをそのように見ていたが、同類はアメリカから次々に登場して来る。それで今回アレックスはザッパが大統領選に出馬を表明した頃、大観衆の前でスーツ姿で語りかけた映像をまず使う。ごく短いものだが、ひとつは直訳してみると、「われわれの無知に対して粘り強過ぎないようにしよう。そのことはアメリカを偉大にする。アメリカがとんでもなく無知でなかったのであれば、どうしてこの8年間は耐えられたんだ?」。最後はわかりにくいが、つまりアメリカが無知であったのでレーガン政権が持続したということで、アメリカは無知を恥じて賢くならねばならないという意見だ。もうひとつの映像は、「狂人たちにここで起こっていることを変えさせてはならない」で、このザッパの発言に観衆は大喝采を送っている。狂人とはもちろん共和党員やその支持者だ。トランプは中西部のプア・ホワイトの票で選挙に買ったが、ザッパはそうした白人をデビュー当時から揶揄していた。レーガンもそんな人々の支持で政治家として大統領に上り詰めたが、今回のトランプは今後どれほどレーガン並みかそれ以上にトンデモ政治をやるのか、それを注意しようというのが、「“Beware of the fish people.”」に込められている。だが、アレックスはそのことをザッパのかつての映像に語らせ、自分の言葉では言わない。それは卑怯ではなく、逆にザッパ・ファン相手のメールであるから、スマートというべきだ。ザッパ・ファンなら誰しもアレックスと同じように、トランプやそれを支持する人たちのことを思うだろう。トランプはアメリカを分断せずに団結しようと言うが、ザッパの『THEM OR US』というアルバム名からもわかるように、アメリカは80年代のレーガン政権で分断されている。それをトランプが受け継いだ。
さて、アレックスのメールとは別に、支援者向きの品物の送付に関するメールも届いたが、2月には発送が始まるとのことだ。ほかに短い映像が3つあり、リハーサルでのギターの試し弾きと本番のステージ、そしてトゥヴァンのホーミー歌手がザッパ家で歌う姿で、どれも未発表のものだ。だが、音に乱れがあるなど、加工が必要で、そうした作業にアレックスは時間を取られている。それはそうと、来月の下旬にザッパのインタヴュー映像を中心にまとめたDVDがソニー・ピクチャーズから発売される。誰が解説を書くのか、あるいは書いたのか知らないが、欧米で話題になった作品がいよいよ日本語字幕つきとなる。アレックスが製作するドキュメンタリー映像は日本のどの会社が発売権を得るのか、まだそれはわからない。一方、ザッパの楽譜集が2冊再販され、若いザッパ・ファンがそれなりに増加している様子がわかる。また、アマゾンを見れば、ザッパのライヴ音源が何枚もCD化されているが、昔なら海賊盤としてこっそり売られていたものが、今では大手を振って正規盤と区別がつかない状態で売られている。ビーフハートの場合はそれがもっとひどく、未発表音源と聞けば嬉しさで痙攣するファンであっても、すべてを買う気にはなれない。