●『リトルプリンス 星の王子さまと私展』その1
つの不思議は時代によって違うが、コンピュター・グラフィックスを使ったアニメーションはたいていの人にとっては不思議なものだろう。



d0053294_23343584.jpg大画面に精彩に映し出されるその映像を見ていると、どういう原理で出来ているのか、高齢者なら誰しも驚嘆し、またどうしてそのような映像が作られるのかと首をかしげたくなる。その一方、パソコンの登場時代からその画面を見て来ている人、あるいはたとえば家庭用コンピュータ・ゲーム機の画面に馴染んで来ている人は、当初は輪郭などの表現にぎざぎざが見られたものが今ではそれがないことに気づき、コンピュータの発達によって現実感が増したことを知っている。そして、その延長上に、もはやコンピュータで作った画面とは思えないほどの現実的な映像が生まれることを予測する。そうなれば、タイムマシンに乗ったように、昔死んだ俳優と現在の俳優が一緒に演技するような映画が登場することにも思い至る。肖像権の問題をクリアすればそういう映画はどんどん作られるのではないか。そういうことはそっくりさんを起用して行なうしかなかったが、もはや実物の人間は不要だ。そしてそうなれば、俳優は職を失い、監督が思う演技をCGで表現する映画も作られる。そういう映画が楽しいかどうかが問題と考えるの、旧い人間だ。そういう映画が増えるとそれが自然と思う人が多くなる。そのことを如実に示しているのがCGアニメの映画だ。昔は線描のアニメ以外では、キャラクターの立体を作り、それを少しずつ形を変えては撮影するというストップ・モーションによるアニメーションがあたりまえであった。それならば原理はよくわかる。人形劇を駒撮りするのと同じであるからだ。だが、世界は思わぬところから根本的に以前に仕組みを変えるように動く。ストップ・モーション・アニメのその各ストップ・モーションの画面をCGでコンピュータ上に作り出し、それをパラパラ漫画の原理で動かしてアニメを制作する動きが出て来た。今でも日本の漫画家でTVアニメを作ったことがある人は、そういうCDアニメを人間味がないと言って一蹴するが、CGアニメを見慣れている人からすればそのような発言者は老醜を晒しているようにしか思えない。新技術が登場すると、それを使った新しいものが生まれて来る。CGアニメを否定する漫画家も、昔は年配の漫画家から仕事を否定的に見られたこともあるだろう。それを忘れて新時代のアニメをけなす。だが、いつの時代でもそういうもので、時流に乗れない者は消えて行く。ただし、消えてもある程度の年月が経てばそれなりに作品の評価は決まる。
d0053294_23345327.jpg 今日は去年12月21日に京都の高島屋で見た展覧会について書くが、期待していたのではない。サン・テグジュペリの『星の王子さま』がアメリカでアニメになったことは知っていた。その紹介ならば見ておこうと思った。本当は映画を見るべきだが、それはまたの機会として、制作現場の裏話が期待出来そうな展覧会をまずと考えた。会場は思ったほど人は入っていなかった。映画の人気が今ひとつなのかもしれない。CGアニメと言えば筆者はディズニー/ピクサーとばかり思っていて、今回もそうだと疑わなかったが、制作はワーナー・ブラザーズであることを知った。会場ではグッズもたくさん販売され、ディズニーがまたいいところに目をつけたと思っていたのに、ワーナーはディズニーにひとり勝ちさせてはならないと考えたのだろう。とは言いながら、筆者はアメリカの娯楽CDアニメ映画をさほど知らない。本作の監督はマーク・オズボーンという人で、筆者は見ていないが、以前にもCGアニメの映画を作っている。今回は高島屋で舞台裏の様子を紹介しようというのであるから、日本で大きく売れることを狙っているのは間違いない。『星の王子さま」は民族学博物館でも多くの外国の翻訳本が展示されていて、世界中で人気のある小説だが、日本での人気が世界一ではないだろうか。『星の王子さま』展が10年近く前にあったし、原画の1枚は日本が所蔵していて、確か「星の王子さま美術館」があった。それほどの人気ならば、映画も日本向けを多少意識したであろう。話を戻して、『星の王子さまは童話と呼ぶにはあまりに子ども向きではないし、また小説と呼ぶには詩的過ぎる。だが、絵本と言えば当たっているかもしれないが、文章量が多い。挿絵もサン=テグジュペリが描き、その素人っぽいところがまた大きな魅力になっているが、物語は子ども向きの映画になるほど起承転結には富んでいない。それでアニメ映画をとなると、本を読んだことのある人はまず無理だと思うだろう。無理でなければ、一般受けしないものになるしかないと思う。筆者が本展のチラシを見て思ったことは、ハリウッドがまたどういう具合で金の匂いを察知して『星の王子さま』を手がけるのかということであった。わざわざ映画にせずとも、本を読めば充分ではないか。また本の内容以上の映画が作られると考えること自体、冒涜だ。
d0053294_23351145.jpg その点は監督も最初は思ったらしい。そこで採った手段が面白い。また仕方のないことでもある。肝心の『星の王子さま』の原作部分はストップ・モーション・アニメで制作し、その部分を包み込む形で、原作とは全く関係のない、つまりサン=テグジュペリが知りようのなかった「今」の物語を創作し、それをCGアニメで作ることにした。二重構造だ。これは原作の世界は忠実に動画として再現し、それと差別化しつつまた関連を持たせる物語を視覚的にも全くことなるCGで作るというもので、うまい具合に考えたものだ。これならば原作の世界を壊さずに済む。ただし、その新たな物語が誰が見ても面白いかどうかだ。それは無理な話で、子ども向きの物語として、親子で映画館に足を運んでもらうことが興業的にも絶対条件だ。ということは、原作を子ども向きに解釈したことになりそうで、そのことがチラシに見えるCDアニメ部分のキャラクターからもわかる。つまり、大人が原作に味わった世界をより深く楽しみたいのであれば、映画は面白くないとの想像が出来る。となると、二重構造にしろ、原作をアニメ化することは無理があるということになる。それでも制作したいと考える監督や人々がいたのは、金儲けになるとのドライな考えのほかに、やはり原作をより多くの人に知ってもらいたいとの考えからだろう。『星の王子さま』の本が存在することくらいはどれだけ本を読まない人でも知っていると思うが、今さら手に取るのが面倒という人も多いだろう。筆者は息子が10代半ばの頃に読めと奨めたが、どうせ数歳の子ども向きの他愛ない童話だろうと言い返され、それ以降手に触れたこともない始末だ。読む気になればすぐ読めるのに、先入観があるのだ。それは『星の王子さま』という甘ったるい邦題だ。これについてはこれまでも賛否があったし、今後もそうだろう。ガリマールの原著の題名を直訳して『小さな王子』でいいと思うが、星の世界が出て来るので、それを説明するために「星」が使われた。だが、「さま」はよけいかもしれない。これをつけると途端に子ども向きになる。確かに子ども向きの本だが、子どもの心を忘れていなかった大人が書いた本で、同類の大人に向けたものでもある。そのことは監督も当然知っていて、それで「今」の物語の筋立てを考えた。
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 さて、会場に入ってすぐに薔薇の花のトンネルがあった。紙製の赤い薔薇がたくさん咲いていて、そのうち最も形がよさそうなものを写真に撮った。会場内は撮影が自由で、7,8枚撮った。本展については2回に分けて投稿するが、会場の最初の展示物は赤い薔薇で、それで昨日は「薔薇の肖像」を投稿した。『星の王子さま』における赤い薔薇は、その本を読んだ者なら誰でも知っている。その物語の象徴となっている赤い薔薇の造花を、その本に描かれているように、しかも美しく見せることは難しいだろう。展示物の紙薔薇はアメリカで作って持って来るのは不経済なので、日本で作ったと思うが、そういう仕事はお手の物だ。薔薇のトンネルを潜ると、円柱のガラス・ケース内に1本の赤い薔薇が入っていた。これも紙製で、『星の王子さま』に描かれるものを意識したものだが、絵よりもうまく出来ていて、もっと薔薇らしい。原作ではガラス・ケースは出て来ないが、砂漠に咲くその薔薇の孤独さや純粋性を表現するには、外界と隔絶して展示するのが効果的だ。この薔薇を見て振り返ると、高さ1.5メートルほどの小惑星の模型があった。星の王子さまの惑星で、これは原作本の表紙に描かれているように紫色だ。紫は青味と赤味があって、原作のイラストでは青味だが、世界の翻訳書ではみな少しずつ微妙に違っていて、日本では赤味を帯びている。前にも書いたことがあるが、中のイラストも全部日本の岩波書店版では原作の色に忠実ではなく、日本的な色合いになっている。それはそれで今となっては味わいがある。日本語に訳されて日本で読まれるのであるから、挿絵も日本的な印象をもたらす色合いがいいに決まっている。話を戻して、この小惑星はところどころに噴火口がある。展示された模型ではそこが覗き穴になっていて、中に玉座の王様や今日掲げる写真のように目玉が見えた。原作とは関係のないアイデアだが、展示を楽しんでもらおうとするには、覗き穴は昔の縁日にあった覗きからくりと同じで、今の子どもは喜ぶだろう。またこの小惑星も日本で考えて作ったものではないか。高島屋とワーナー側がどのように費用を負担し合ったのかはわからないが、映画の宣伝になるのならと、すべてはワーナーが経費を出したように思う。
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by uuuzen | 2016-01-04 23:59 | ●展覧会SOON評SO ON | Comments(0)


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