人気ブログランキング | 話題のタグを見る

●当分の間、去年の空白日に投稿します。最新の投稿は右欄メニュー最上部「最新投稿を表示する」かここをクリックしてください。

●神社の造形―野々宮神社の黒木鳥居
は先日投稿した櫟谷宗像神社の「イチイ」と読むが、「クヌギ」とも読む。前者は針葉樹で後者は落葉樹なのに、なぜ同じ漢字が充てられたのかは知らないが、どちらが珍しいのだろう。



●神社の造形―野々宮神社の黒木鳥居_d0053294_23233451.jpg

クヌギはどんぐりが出来るし、筆者はクヌギにより馴染みがあるが、今調べるとイチイは赤い実が食べられるそうで、人の役に立つ意味ではどちらも変わりがない。これも先日書いた齋明神社の新調された大鳥居は、何の木か気になるが、朱塗りではなく、樹皮を剥いて表面を滑らかに仕上げたままを使っていて、材木の専門家でなければ品種はわからないだろう。また、同神社では毎回同じ品種の木を使っているのか、また使う必要があるのか、筆者にはわかりようがない。木の種類によっては鳥居ひとつの材の価格はかなり異なるはずだが、高価であるから長持ちするというのでもないだろう。白木のままでは風化しやすいから、材木の希少価値や価格に関係なしに、とにかく長持ちするものを選ぶのではないか。あるいは、神社はそういうことを考えず、20年に一度は全部建て替えるくらいの寿命の短さを欠点とも考えないのかもしれない。その点は寺とは違うだろう。寺ももちろん建物が老朽化すれば建て替えるが、神社のような式年遷座はないか、あっても20年という短さではないと思う。もっとも、日本では寺と神社は交わっていて、寺の境内に鳥居と社があることは常識化して来たから、寺に遷座がないとは言い切れないように思う。廃仏希釈の際、神仏の分離が行なわれ、その後もそのままになっている寺や神社はたくさんあって、江戸時代ほどに神と仏は混交していないだろうが、今でも大きな寺の境内の片隅に神社がある場合にそく遭遇する。その反対に神社に寺独自の何かがあるかと言えば、ほとんどそれは思い当たらない。そういうことを詮索し始めると、専門書に当たる必要があるが、奈良の国立博物館では毎年仏教関係の展覧会が開催されるのに、神社について紹介する機会は稀で、造形的には仏教はきわめて多彩多様であるのに、神社は何もかも簡素でどこも大差ないことに気づく。であるから、神社しかなかった時代に仏教がもたらされた時、日本の人々の驚きがよく想像出来る。圧倒的な強さと言えばいいか、神社としては為す術がないといった状態であったろう。それで仏教を取り込むと同時に、それまであった神も捨てるわけに行かず、双方を混交させてどちらも日本にとっては重要なものであるという意識を育んで来た。日本が鎖国を解いて世界に出て行く時、すでにヨーロッパの強国は世界中に植民地を得ていて、日本はそれに伍するために天皇を神として担ぎ上げ、神社を大事にすることにした。後からやって来た仏教は不要ということだが、そういう集団的な排他主義が今後また起こらないとも限らない。そういう一種の恐れを今の日本の仏教界が多少でも感じているのかどうかだが、1000年以上も大事にして来た仏教を捨て去ることはまず無理な話だ。仏教的造形を完全に失くすことは神社のかなりの部分をも消し去ることで、日本が神社だけになると、もともと神像はほとんどない、あるいは新たに作られていないから、偶像崇拝禁止のイスラムと馴染みやすくなって、日本は東南アジアのイスラム圏と仲よくなるかもしれない。それはさておき、神社の存在を一番示すのは鳥居で、朱塗りにすると遠目にも映えてその簡素な美は日本の神というものを言葉なしで感じさせる。したがって、どの神社も鳥居にはこだわりがあるだろう。先日、齋明神社と大井神社を取り上げたので、そのつながりとして野々宮神社を外すことは出来ず、自転車に乗って先日その鳥居や境内の写真を撮って来た。嵯峨の竹林の中の小道は大勢の観光客で、自転車で走るのは苦労するが、タクシーや人力車も走り、竹林の静かな雰囲気はまるでない。写真をさっさと撮って帰りに気になっていた大井神社の祠を見たが、今日の3枚目の写真はその正面だ。かたわらの立て看板の説明によれば、野々宮神社から移築したものを使っているとのことで、松尾大社の末社であるのにどういうことかと思った。
●神社の造形―野々宮神社の黒木鳥居_d0053294_23234853.jpg 松尾大社と野々宮神社はどう関係があるのかと、今調べると、何と本殿南隣りは近年まで松尾大神を祀っていたが、江戸時代の『都名所図会』に倣って白峰弁財天を今は祀っている。明治になってたぶん松尾大社が力を持ち、それで大井神社から直線距離で500メートルほどの野々宮神社にも入り込んだのかもしれない。何でも昔に戻すのがよいという風潮があって、それは下鴨神社の糺の森の一画も同じだが、野々宮神社が『都名所図会』にしたがうというのは、それを遡る文献がないからでもあって、江戸以前は白峰弁財天であったかどうかはわからない。弁財天は江戸期に流行した神ではないかと思うが、となれば野々宮神社には本殿に南接する社が江戸以前にはなかった可能性がある。神社は境内にいくつもの神を祀ることが普通で、そのことにしたがえば、今後野々宮神社に新たな神が祀られることがあり得る。そのように神社は融通無碍なところがあって、そこが日本人向きとも言える。悪く言えばいい加減で、神は種類が多い方が賑やかでよいと思っている。この神は秀吉や家康など、大人物に対して新たに作られもして来たから、今後もそうなる可能性はあって、敬う存在が多いことが、日本人の会釈好きにつながっているとも言える。話を戻して、大井神社の鳥居は桂川に面したものは白木、祠の前のものは朱塗りで、このように違えるのは理由があるのだろうか。大井神社ではどちらの鳥居も細くて貧弱だが、これは金の問題でもあるだろう。3枚目の写真からわかるように、鳥居には多くの名前が墨書されている。寄進者だ。これは伏見稲荷足大社の鳥居と同じだが、大井神社では鳥居の細さが祠の老朽化や、また祠に向かって左の、寄付した人々の名前を記した板のあまりの風化ぶりと釣り合っているところがあり、人々は川の氾濫の恐怖をほとんど忘れたかのようだ。実際、その管理や工事は国土交通省の仕事で、また嵐山ということで、被害を受けてもすぐに復旧されるから、神頼みをしなくていい時代になっている。そのことがまた大井神社の肩身の狭いたたずまいを表わしてもいる。話を野々宮神社に戻すと、その鳥居は黒いことが有名だ。朱塗りにしなければ白木であるべきなのに、なぜ真っ黒か。これはクヌギの幹をそのまま使っているからだ。鳥居をくぐってすぐ振り返ると、鳥居の柱の際に説明文があり、またその隣りには大きな説明看板もある。それほどにこの神社のクヌギの鳥居は有名で、「日本一」とされている。樹皮のついたクヌギを鳥居に仕立てることはわかっている限り、原始的な鳥居で、その分、風化しやすい。野々宮神社では3年ごとに取り代えているそうだが、3年は短い。防腐加工しているそうだが、3年しか持たないでは厄介だ。クヌギの入手が大変で、それをどうするかと思っていたところ、高松市のとある会社が寄附を申し出た。鳥居際のふたつの説明はそのことを記している。よほどありがたいということだが、それはよほどクヌギの確保が難しいことを意味してもいるだろう。5本つまり15年分をひとまず寄進され、その3本目を今使っていると説明にあったが、寄進した会社の太っ腹なところは15年分が終わる前にまた寄進することを約束していることで、それが確か150年分だ。現在の社長が亡くなっても遺言か何かで決めているのだろう。高松の社長と野々宮神社がどういう関係があるのか知らないが、四国にはクヌギはたくさんあるのか、鳥居の木材くらいはお安い御用ということなのだろう。それに神社境内にはっきりと社名と寄進の様子が記されていて、境内に入った者は誰でもその会社のしたことを知る。ただし、現在参拝者として圧倒的に多いのは外国人で、彼らは鳥居が黒木で珍しいことや、寄進者について興味がないだろう。それでというのでもないが、ここに書いておく。クヌギが劣化しやすい様子は、樹皮の一部が剥がれて内部の肌が見えている箇所からわかる。それは去年の今頃に訪れた時と比べてあまり広がってはいないが、人間の皮膚が事故で同じように皮膚がむごたらしく剥がれる様子を想像させ、3年に一度は建て換える意味がわかる。今日の2枚目の写真は最もひどく剥がれた箇所を捉えているが、これは鳥居をくぐる人が傘をぶつけたりして出来た傷ではないか。そのような接触がなければ3年や5年は変化しないと思う。参拝者が多いことは収益につながるし、結局鳥居は消耗品で、また神社の造形すべてがそう言える。
●神社の造形―野々宮神社の黒木鳥居_d0053294_2324393.jpg

by uuuzen | 2015-08-20 23:59 | ●神社の造形
●嵐山駅前の変化、その374(... >> << ●神社の造形―縣神社の神木

 最新投稿を表示する
 本ブログを検索する
 旧きについ言ったー
 時々ドキドキよき予告

S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30
以前の記事/カテゴリー/リンク
記事ランキング
画像一覧
ブログジャンル
ブログパーツ
最新のコメント
言ったでしょう?母親の面..
by インカの道 at 16:43
最新のトラックバック
ファン
ブログトップ
 
  UUUZEN ― FLOGGING BLOGGING GO-GOING  ? Copyright 2025 Kohjitsu Ohyama. All Rights Reserved.
  👽💬💌?🏼🌞💞🌜ーーーーー💩😍😡🤣🤪😱🤮 💔??🌋🏳🆘😈 👻🕷👴?💉🛌💐 🕵🔪🔫🔥📿🙏?