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●黄色の小さな椅子、アゲイン
ち盛りの子どもの用の椅子が畑の畝に置かれたのは2,3週間前だ。その役割がわからない。邪魔だと思うが、何か用途があるのだろう。ひょっとすれば椅子を大きく育てて甘くしたいのかもしれない。



同じような黄色い椅子を岡崎の白川沿いで数年前に見かけた。「おにおにっ記」に「黄色の小さな椅子」として投稿している。今回畑に置かれているものと比べると少し形が違う。それにレモン色が褪せて、たぶんプラステッィクも脆くなっているだろう。鮮やかな色でないことがなおさらさびしさを感じさせる。自分で新品を買えば気分が新たになると思ったが、小ども用では座ることは出来ない。大人用を買えばいいが、筆者は「小さな」椅子であることが気に入っているのであって、大人用はほしくない。そして、子ども用を買えば使い道がなくて邪魔になるだけで、数年すれば畑に置かれたもののように色が褪せ、品質も劣化する。それはさておき、今日の写真は6日の月曜日に撮った。家内と嵐山から時計回りに罧原堤を下流に向かって歩き、梅津で買い物を済ませた後、松尾橋を西京区側にわたって北上した。家まで5分ほどというところで家内が、スポーツウェアの上下を着てマスクをした背の高い女性に呼びとめられた。筆者は誰かわからなかったが、だいたいの雰囲気でかつての職場の同僚であることを知った。後で家内から聞いたが、彼女は50歳くらいで、働いていないが、バレーボールに熱心で、いつもよく練習をしているらしい。2年ほど前にわが家に遊びに来たことがあり、その時に筆者とも長く話をした。彼女はその頃にわが家から300メートルほどのところに引っ越して来た。今年の元旦は大雪が降ったが、彼女から家内に届いた年賀状の返事を家内が書き、それを郵便ポストに入れに行くのと彼女の家に向かうのと距離があまり違わない。それに、郵便ポストに投函すると、たぶん3,4日に着く。家内が書き終わると、夜7時頃だったか、筆者は雪をかき分けながらゆっくり歩いて彼女の家まで行き、玄関扉の中央の投函口にそっとそのはがきを差し込んだ。窓は真っ暗で人気がなかった。ほとんど誰も歩いておらず、街灯が雪に反射し、味わったことのない変に明るい夜景の中、真新しい布団のような雪を歩くのは楽しかった。はがきを差し込んだ時、朝に郵便配達が届けたはがきの2,3センチの束が指に触れた。筆者が持参した1枚がその束から外れていることを彼女は変に思うかもしれない。その心配がよぎったが、配達が二度あったと思うだろう。いつかまた彼女がわが家に遊びに来た時にはそのことを訊いてみよう。近くに住むのに、あっと言う間に2,3年は経つ。彼女はご主人とふたり暮らしで、どちらかの実家にでも訪れたのであろう。彼女の家とは反対方向に今度は向かった。大志万さんから筆者に年賀状が届き、慌ててそのお返しを書き、それも一緒に直接家まで持参することにしたのだ。ま、その話はどうでもいい。呼び止められた家内はそこで立ち話をし始めた。筆者は遠慮して先に帰ることにした。
●黄色の小さな椅子、アゲイン_d0053294_221622.jpg

 家内から数歩離れた時、自治連合会の副会長のMさんが自転車でこちらに向かって来て、挨拶を交わした。同じ方向に行きながら話をした。新年度の連合会の総会に筆者が代理で出席することを伝えていて、Mさんも筆者が来るのを楽しみにしていたようだが、新会長が出席すると言ったので、その旨を数日前に別の副会長の女性を通じてMさんに伝えていたのだ。Mさんは2年前から何度も筆者を連合会の副会長になってほしいと頼むが、承諾すると自治会のことが疎かになるし、また経済的出費も大きい。光栄な申し出だが、断り続けている。筆者が連合会に入れば一番若手で、何年も居続けることになり、その先にどうなるかは予想がつく。Mさんは筆者より数歳上のスポーツ・ウーマンだ。フル・マラソンで3時間台で走る。嵐山から松尾にかけての地域にMさんほどの体育系の女性はいない。外国のマラソン大会にも参加するほどで、贅肉がない。4,5年前に書いたと思うが、総会の宴席で筆者の隣りにMさんが位置し、宴たけなわになって来始めた頃、Mさんは筆者の右手をつかんで太腿を揉ませた。いかに筋肉だらけであるかが自慢なのだ。そのことを家内に言うと、やきもちを焼くというのではないが、「人に見られたら誤解を招くよ」と言った。確かにそうだが、さっぱりした性格のMさんはそんな心配はしていない。ただ、自分の肉体がいかに日々の修練を積み重ねてぶよぶよしていないかを誰にでも知ってもらいたいのだ。筆者とはウマが合うが、これも以前書いたように、彼女ははっきりと「わたしは知的な男が大好き」と言い、そして宴席で居並ぶ大勢の男性を眺めわたしながら、「ろくなのがいない」ともつけ加えた。それは誰か特定の人物を指してのことではないし、また半分は冗談だ。あるいは冗談でなくてもMさんなら言いそうなことと、誰しも理解する。そのMさんは数年前にご主人を亡くしたが、却って若返ったようだ。女性はそういうものか、あるいはMさんが特にそうなのか、高齢化社会を思うと、それは見倣うべきだ。話を戻して、Mさんと50メートルほど並んで歩くと、左手に畑があった。そこで筆者は立ち止まると、Mさんは自転車にまたがって先へ行き始めたが、筆者が畑にカメラを向けるので、「何撮ってるの?」と言った。「あの黄色い椅子」と答えると、不思議に思ったようだが、そのまま自転車を走らせて去った。撮り終わった筆者がMさんの後ろ姿を追うように歩き始めると、30メートルほど前方で、「大山さん!」と大声を上げながらMさんは自転車を下りた。そして籠の中をまさぐり始める。何かと思って近づくと、「たんかんをあげるわ」と言って硬い皮の小さな柑橘類を3個くれた。そしてMさんは全速力で去って行った。「たんかん」は聞いたことがあるが、買ったことはない。皮がしなびて見え、また剥くのにとても堅かったが、中身はとても濃厚な味で、薄皮も食べられた。畑の中の小さな黄色い椅子の色褪せ具合は、そのたんかんのようにオレンジ色がかっている。中途半端な色より鮮やかなレモン色がいいが、味は酸っぱいよりかは甘い方がよく、育つほどに椅子は甘くなる。
by uuuzen | 2015-04-09 23:59 | ●新・嵐山だより
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