●「武田理沙~フランク・ザッパ・メドレー関西初演」 武田さんと筆者が10月26日、大阪の神山町のALWAYSにて対談します。
●東福寺涅槃会
殿司こと明兆の展覧会を東福寺で見たのは9年前のことだ。125年ぶりに代表作が展示された。木造平屋の建物で、普段何に使われているのだろう。境内図を見ると、たぶん光明宝殿だと思うが、違うかもしれない。



d0053294_1474284.jpg明兆の作だけではなく、久保田米僊が涅槃図を描いている様子を想像して描いた図もあった。今回それが久しぶりに見られるかと思ったが、法堂内で大涅槃図の展示があっただけだ。毎年この涅槃会は開かれているが、その時期を調べることのないまま9年も経ってしまった。今年それをなぜ気づいたかと言えば、今月10日頃、確定申告のために通帳の出入金を打ち込む必要があって1年ぶりに銀行を訪れたからだ。先日梅津の銀行に訪れたことを書いたが、それとは違う銀行だ。それはさておき、銀行ではしばらく待たされた。その間に店内を見回すと、何種類かのチラシを差し込んだラックを見かけた。展覧会のチラシかと思うと、京都市内の寺社の案内だ。初めて見るものばかりで、その中に「東福寺涅槃会」と印刷したものがあった。それを今日は最初に載せるが、撮影時の灯りが下右で照り返している。迫力ある写真で、明兆の涅槃図と龍を描いた天井絵も一緒に写っている。そして、目を引いたのが赤で印刷された「無料公開」だ。これは見に行かねばならない。14日から16日の3日間で午後3時半まで、最終日は3日までだ。筆者は夜型で、昼間まで寝ぼけているので、午後3時はうまく予定を組まねばならない。チラシの下に線描きでしゃがむ猫が描かれているが、これがこの涅槃図の有名な猫であることはすぐにわかる。実際は淡い茶色と胡粉で描かれ、白地に茶のぶち文様は伏見人形の狆を思い出させる。猫を真横気味の背後から描き、猫の見る方向に横になる釈迦がいるから、猫は涅槃図の左下にいることは誰にでもわかる。前述の米僊が描いた涅槃図を製作中の明兆の図は、これと同じ猫を画面左下に置き、それを振り返る若い僧を描いた墨画淡彩の掛軸で、幅は半切であったように思うが、さらりと描いたような作で、米僊らしい。米僊は米僊の密画をほとんど見たことがない。席画が目立ち、そのことが米僊の評価を低くしている気がする。米僊は若冲を再発見したが、若冲が大好きであったというより、自分のルーツをたどると、若冲から山雪、そして明兆といったように、京都の偉大な先人画家がぞろぞろといて、古い画人ほど尊敬したのではないだろうか。米僊にとって若冲は、自分が生まれる半世紀前に亡くなったばかりのまだ新しい画家で、また画風があまりに違った。また、明兆や若冲の作が寺に伝わっていることをどう思ったであろう。米僊の密画と呼んでいい大作は西本願寺か東本願寺にあると思うが、権力者、勢力者に寄り沿えば作品が百年単位の長さで保存されて行くということだろう。今でも大きな寺の勢力はあるが、昔から寺社のみが国家を代表する勢力者と言えず、政治家とつながる手立てもある。狩野派はその代表だが、その一大勢力が江戸に移ってからは京都に残った狩野派は武士以外のパトロンを見つけることになった。いつの時代も画家はそのように頼りない存在で、生活の資を得ることもままならない。東福寺の法堂の天井絵の龍は堂本印象の作で新しいが、印象はあちこちの寺に描いていて、どのようにしてその人脈を培ったのだろう。自分の作品専用の美術館まで建てたほどで、その経済力は京都の画家の中では別格であったろう。明兆は画僧で、東福寺では地位が低く堂守りのような存在であった。その傍ら、寺で用いる絵を描いたが、描くこと以外の欲を断ったところにその名声が轟く理由があったと言える。雪舟も画僧で、若冲が僧に憧れて仏の道に入ったのも似た理由だろう。だが、江戸時代も半ばになると、明兆や雪舟の生きた時代とはかなり違い、名高い画僧というものがイメージしにくい。仏教絵画全体が衰退したことが原因と言えるが、その衰退理由は僧らしい僧が少なくなって来たからで、これは僧だけの問題ではなく、信仰が昔ほどには熱くなくなったからだ。泰平の世が長く続くと、腐敗や堕落が目立って来る。先日どこかの僧が女性のスカートの中を盗撮したことで逮捕されたが、それと同じようなことが江戸時代半ば以降は珍しくなくなる。
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 チラシのデザインはなかなかよい。裏も全面カラー印刷で、新緑の通天橋から臨む渓谷の写真だ。同じチラシが涅槃会から5月のゴールデンウィークまで使えるという合理的な考えだ。法堂内部の天井絵と涅槃図を写すこのチラシはそのまま大きなポスターにもなって、境内や付近の店に貼られていた。同伴した東京からやって来たザッパ・ファンの大平さんはそれを見て、「これを販売すればいいのに」と呟いた。確かにそうだ。法堂内部では絵はがきは売られていたが、ポスターはなかった。あったのが14日で売り切れたかもしれない。筆者らが出かけたのは15日の日曜日で、昼過ぎだ。涅槃図は縦12、横6メートルとチラシにあるが、表装を含めたものだろう。それにしても巨大で、これをひとりで描いた明兆は巨匠と呼ぶにふさわしい。保存状態がとてもよく、二、三度は表具し直したのではないだろうか。写真で見るように、鑑賞者は間近に寄れず、また撮影禁止なので細部はわかりにくいが、折れや絵具の剥落は一見したところ、ない。それに朱色や群青がとても鮮やかで、良質の絵具であることがわかる。蝋燭の煤で汚れていないからそのように思えることもあるが、寺は大切に保存して来たのだろう。廃仏棄釈の嵐に遭ってそれなりに寺宝を手放したはずだが、9年前に見た明兆展は125年ぶりであったが、それは修復がようやく終わったからではなかったろうか。東福寺ではこの涅槃図の次に大切なのは明兆が描いた「五百羅漢図」だと思うが、10人の羅漢を描く50幅揃いが、そのままでは伝わらなかった。東福寺は何度か火災に遭っていて、その際に燃えたのか、失われた3幅を山雪が描いたから、それほど大切にされ、また古くから危険に晒されて来た。そのことを思うと、涅槃図が新品同様に目の前にあることは奇跡のようだ。チラシの写真からわかるように、法堂内では涅槃図のほぼ全図が見えるが、最下段が少し仏具で隠れている。画面左下に白く広がっている部分があって、そこは白い象が描かれている。その象のすぐ下に猫がいて、チラシからはその場所が見えない。もっと接近しても無理で、掛軸に向かってうんと左手から見るしかない。それでも視力のよさが求められる。法堂の外からカメラをかまえて撮影している人がたくさんいたが、ズームを最大にしても仏具が邪魔して猫は写らないのではないか。大平さんは絵はがきセットを購入したが、筆者は買わなかった。その絵はがきの1枚に、猫を大きく写したものがあった。猫ブームの今、その猫はなおのことかわいらしいと思われるだろう。顔はよく見えないが、優しい表情をしている。明兆は猫好きであったようだ。絵はがき売り場で若い眼鏡をかけた僧が何度も同じことを客に説明していた。どうして明兆が猫を含めたかについてだ。沙羅双樹に8本のうち、左から2本目に青い丸い包みがあって、それは摩耶夫人が釈迦を助けるために届けた薬だが、それを食べようとする鼠を猫が追い払ったということと、明兆が涅槃図を描き上げるに当たって絵具が足りなくなり、それを猫が持って来てくれたということのふたつの話に引っかけて登場させたのかもしれないということだ。涅槃図にある程度の知識がある人が聞くと面白いが、そうでない人は何のことかわからない。それはともかく、涅槃会としては毎年新聞に載る泉涌寺の方で、これも同じ時期に開催される。そして日本最大の涅槃図として有名だが、これには猫が描かれないが、古礀和尚の作で、やや小さいものを2,3年前に奈良国立博物館で見た。古礀はなかなか温か味のある絵を描く僧で、画僧としては江戸時代半ばを代表するのではないか。古礀は明兆の涅槃図をある程度参考に描いたであろう。もっとも、涅槃図は何をどう描くかはある程度決まりがあり、誰しもそれに則って描くから、みな似たものになる。細部に画家の個性が宿り、その意味で明兆の涅槃図は絵はがきなどの細部拡大図も併せて見た方がよい。境内をぐるりと一周する形で西門から出たが、その寸前に筆者は大平さんに近くにある泉涌寺のことを少し話した。筆者はその門前まで何度か行ったことがあるのに、中に入ったことがない。皇室ゆかりの寺と聞くと敷居が高い気がする。その点、東福寺は明兆とつながっていて馴染みやすく、それはまた無料で歩ける臥雲橋から通天橋を眺められるからでもある。大平さんと臥雲橋からしばし眺めたが、新緑の季節には早過ぎて、眼下の楓などの樹木はどれも葉を出していなかった。2枚目の写真は涅槃図が公開された法堂で、3枚目はその南にある三門だ。三門は公開されていたが、時間がなかったので先を急いだ。
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by uuuzen | 2015-03-27 23:59 | ●展覧会SOON評SO ON | Comments(0)


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