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●切株の履歴書、その1
(たきぎ)は都会で受容があるだろうか。銭湯はおがくずを燃やしているし、炭もおがくずで作ることが多いので、薪と言えば薪能が真っ先に思い浮かぶ。薪は「まき」とも読むが、金持ちの家には本物の暖炉があって、薪が必要かもしれない。



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寒い地方では薪ストーヴがまだまだあるはずで、京都でも洛北では薪ストーヴを備えている家が多いかもしれない。もう10年ほどになるが、ある雑誌社の編集者と雑談中、その人がどういう経緯か忘れたが、ストーヴが趣味と言い始めた。そしてガラス製であるので炎が見えるのが楽しいと続けた。ストーヴは筆者は小学生時代に学校に石炭を使うものがあった。その当番に当たると朝早く校庭の片隅の石炭倉庫に行き、用務員のおじさんからスコップでブリキ製のバケツ一杯に黒光りした石炭を注いでもらい、それを重そうに教室まで運んだ後はただちにストーヴに火を入れる作業までやったものだ。小学3,4年生の頃で、石油ストーヴに変わったのは中学3年生であったと思う。子どもにストーヴの火入れ当番をさせるなど、今では考えられないのではないか。まず危ないとPTAや先生が考え、マッチを持たさない。そう言えば昨日のニュースに高野山のどこかの寺に侵入し、タオルに火をつけ、それで放火しようとした16歳が逮捕される事件があった。畳その他わずかに焦がしただけで済んだが、寺としては災難には変わりない。放火は刑が厳しいというが、16歳ではすぐにまた世間に出て来て普通に暮らす。寺に恨みがあったのか、木造の建物を見れば火をつけたくなるのか、とにかく困ったもので、こういう子をどのようにまともに更生し得るのだろう。ついでに思い出したので書いておく。筆者が文化住宅に住んでいた頃の話だ。土曜か日曜日の午前中であったと思う。2階の奥に家内と住んでいて、暑いので表のドアを開けていた。ふと人の気配を感じたのでドアのところに行くと、小学3,4年生くらいの男子が開けっ放しにしたドアの中からそっとこっちへ入って来ようとしていた。筆者の姿を見つけて驚いたようで、慌てて逃げ始めた。それを筆者は追いかけ、100メートルほど行ったところで少年をつかまえた。顔を見ると知らない子だ。何のために家の中に入って来ようとしたのか訊くと、無言でこっちの顔を見ようともしない。50メートルほど捕まえたまま歩いたが、人の家に勝手に入るなよと諭して開放した。手癖が悪い子とは思いたくないが、その子の顔はどこかすさんで見えた。玄関のドアが空いていると、居間まで入るのはたやすい。そして金目のものでなくても何でもひとつやふたつはこっそり持ち出すことはたやすい。あるいは火をつけたタオルを放り込むことならもっと簡単だ。筆者の世代では家に鍵をかけないどころか、扉を開けっ放しにして平気な人が多い。昭和2、30年代の日本はそういう時代であった。韓国の家の玄関扉がどこも鉄製で背丈も高いようであることはドラマ『冬のソナタ』で知った人が多いと思うが、そこには日本とは明らかに異なる他人をあまり信じない文化が根付いている。いや、日本もそのようになって来て、玄関のドアや鍵は頑丈で豪華なものへと変貌し、寺のように木製で誰でもすぐに出入り出来るような玄関では火のついたタオルで全焼されかねない。そういう可能性があるので、消防署では火災警報器の設置を義務づけ、燃えにくいカーテンや壁紙を薦めるが、油断したとは言えないのに、放火魔や空き巣がいつ何時やって来るかわからない。先の少年がどのような大人になったかをごくたまに思うことがある。そしてたとえばオレオレ詐欺犯になってはいないかと想像し、いやな気分になる。
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 薪の話に戻る。『駅前の変化』のカテゴリーにしばしば登場する、阪急嵐山駅から中ノ島公園に行くまでにある桜の林には、よく桜の枝が落ちている。細いものから、枝とは言えない太い幹まである。老木なので自然に折れるものが多いが、邪魔なのでへし折ってしまえとばかりに行為に及ぶ人もあるし、またトラックの出入りの際にぶち当たって折れる場合もある。理由はさまざまだが、折れた枝や幹はたいていそのままだ。それらが根元に捨てられたままになっている。ただし、あまりに目立つものはいずれ市の清掃課の誰かが持ち去るのだろう。一昨日は「風風の湯」の玄関の斜め前の老木の根元に放置されている枝が気になったので、拾い上げて短く折った。誰かが持ち去るにも便利なように、あるいは土になるのが早いようにと思ってのことだ。その老木の根元は「風風の湯」に面している側が表で、桜の林側が裏のようになっている。というのは、桜の林に面している側は根元周囲に30センチほどの窪みがあって、そこに折れた枝が打ち捨てられ、また雑草もかなり目立つ。つまり、ゴミ捨て場然としている。表側は駅前と中ノ島公園との間を往来する人が多い。それで表側とするにふさわしいのだが、筆者は抜いた雑草をの老木の裏側に捨てる。それは、ちょうどいい窪みがあることと、折れた枝がたくさん捨てられ、その上に雑草を積むと、より早く土と化して窪みが表側と同じようにそのほかの地面と同じ高さになる気がするからだ。だが、その期待はおそらく虚しい。それほどに窪みは大きく、思い切って土を運ぶべきだ。その適当な土がないので、折れた枝や雑草をその穴に積み重ねる。ただし、ほかのゴミは当然駄目だ。みんながよく歩いて目につきやすい場所を表とし、その裏手は手入れがなされず、雑然としたままというのは、人生でよく見かける光景で、別段不思議ではないが、桜にすれば幹の表側も裏側もない。ましてや他の仲間がたくさんいる桜の林に面している裏側の方が表側であるべきと思っているだろう。これは人間にとってもそうだ。桜の林は「風風の湯」が出来たために面積は半分になったが、そうなったために地元の小さな子を抱える母親たちは以前にも増して桜の林で遊ぶようになった。彼らの眼からは、「風風の湯」に面している2,3本の桜の老木は、桜の林から見る面が表側であったほしい。ところが現実はその逆で、桜の林の中から先の老木を見ると、根元に窪みがあって、その周囲に雑草は伸び放題、しかもあちこちに折れた枝が散らばっている。これは桜の林の内部はもはや価値がないという思いの表われだろう。であるから、桂川に面したところに生えていた老木3本ほどを切株にしてしまって自転車道路を延長した。桜の林は土の感触が味わえる珍しい場所だ。それが「風風の湯」の前庭に面したところ、すなわち中ノ島橋に至る道は石畳となり、それに直角に接続する形で前述の自転車道路が延長された。もはや桜は枯れるがままで、そうなれば全部アスファルトかコンクリートで埋めてしまうだろう。土は非文化の象徴であって、それをどんどん舗装することがここ半世紀の日本が徹底的にして来たことだ。
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 桜の枝を折りながら、案外手ごわいことに気づいた。弾力性が強いのはまだ折れて間もないからだろう。折りながら思ったことは昔なら薪になったことだ。今では家庭で何かを燃やすことは禁じられている。農家は別のようで、わが家のすぐ近くの畑ではよく枯葉その他を燃やす。風に乗ってその煙が必ずわが家の干し物を直撃し、せっかく洗ったものが煙まみれになると家内は憤慨することが多い。法律で許されているのかどうか、とにかく住宅に囲まれた小さな畑でしばしば何かを燃やされるのはえらい迷惑だと家内は思っているが、わが家の裏庭でも枯葉を燃やそうかと提案すると、畑の所有者と同じように疎ましがられてもいいのかと言う。農家ではない一般家庭が自宅の敷地で何かを燃やすことが本当に法律で禁じられているのかどうか知らないが、これは煙が他人に迷惑ということと、火の粉が飛んで危ないからだろう。小学校の教室で石炭ストーヴを児童たちが管理していた時代がとても信じられない。火は危なく、見てはならないものという意識が育った。その反動で、ガラス製のストーヴが外国から輸入されるようになったと思える。ところでそのガラス製のストーヴだが、筆者は出版社の人からその話を聞きながら、長い間その実物を見たことがなかった。それに接したのは去年の秋、御池通りに面したショー・ウィンドウだ。インテリアの会社と思うが、ストーブの窓が大きめで、それがガラスになっているため、中で燃え盛る火がよく見える。ガラス製と聞いていたから、全部そうだとばかり思っていたが、その必要はない。炎が見ればいいのであって、扉だけで充分だ。そういう洒落たストーヴは都会で使われることが多いだろう。そして薪は絶えず欠かせない。薪屋なるものがまだあるのかどうか、昔なら斧で薪を作ったもので、筆者はもちろんそういう経験をしている。小学生の低学年に斧を持たせて薪を割らせるなど、今ではマッチで火を点させること以上に考えにくい。その斧で道行く人を次々と襲ってはどうするのだとPTAは文句を言う。であるので、成人になった途端に刃物を持って暴れるのが続出するのではないか。それはさておき、燃料屋が薪を束にして昔は販売していたと思うが、その丸く束ねられた様子、そしてそれが積み上げられた景色は絵になった。今ではそれは田舎でもあまり見られないだろう。その一方で山に人が入らず、間伐をしないので、木がうまく成長せず、荒れて来ているとも聞く。木材を利用するところがないのだ。何かを燃やすと地球温暖化を加速化させるとも言われ、もはや薪は人類の敵となった。そのため、切られた木は何の役にも立てられず、ゴミ焼却場で燃やすしかない。薪能を今の1万倍多く上演したところで、木材の消費は微々たるものだ。
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 さて、今日は昨日触れたスイカ型の木片の写真を載せることにし、ついでに半年以上思い続けていた切株の写真を載せる。これはシリーズ化となる。撮りためた写真はさほど多くないが、シリーズとなればまたせっせと見つけて撮影するかもしれない。最初は「切株のレコード盤」という題名にしたが、それでジェスロ・タルの1977年のアルバム『SONGS FROM WOOD』の裏ジャケットを思い出す人があるかもしれない。切株がレコード盤になっているデザインで、年輪がレコード盤の溝ということだ。切株にピックアップが乗っていて、年輪に刻まれた音を奏でそうな雰囲気だが、年輪は中心から外へと成長するから、年輪がレコード盤とすればピックアップは中心にまず置かねばならない。そして回転とともにそれが周辺に移動する。つまり年輪とレコード盤は時の推移は逆になっている。それで「切株のレコード盤」と諦め、「履歴書」にした。年輪はまさにその木の生きて来た履歴だ。年輪によって時代がわかる時代で、木を輪切りにすると、その木がどういう気候に曝されて来たかがわかる。これは考えればあたりまえのことながらやはりすごい。人間もそれと同じはずではないか。では人間の年輪はどこに刻まれるか。脳であろうか。では認知症患者はどうなるか。木は一度獲得した年輪を消すことがない。人間の記憶が年輪でないことは確かだ。髪を調べると麻薬の服用がわかるというから、髪が年輪に相当するが、髪を一生伸ばし続ける人はない。筆者が思うに、人間の年輪は顔ではないか。それで今日は「切株の肖像」ないし「切株の顔」にしようとも思ったが、「薔薇の肖像」の続きのようでは面白くない。それに薔薇の花のような華やかさはない。切株はそれとは正反対で死のイメージに近い。今日はそのことを書くつもりが、あまりに遠回りし過ぎた。写真の説明をしておく。最初は松尾橋のすぐ近くの右岸河川敷に下りて撮った。荒涼として見えるのは1月という季節と草や樹木が見えないからだ。この景色を前にして筆者が思い浮かべたのは第1次大戦に従軍したドイツの画家オットー・ディックスの絵だ。戦争の悲惨さを描いた大作の雰囲気に似ると思ったのだ。空爆されて瓦礫だらけになった焼け跡はこの写真のようではないか。手前に写る2本の切株は柳だろうか。右のものはかなり太い。年輪は50以上はあった。そういう古い木まで切る必要があったのだろうか。街路に沿って生える雑草を刈り取るついでにきれいな花咲くタチアオイまでなくしてしまう清掃員と同じで、役所の仕事とはロボットと同じで、思考がない。左右に分かれた切株の間に見えるベージュ色はおがくずだ。つまり筆者は切り取られてすぐに現場に行った。2枚目は切株のすぐそばに落ちていたスイカ型の木片を載せて撮った。木片をほぼ真上から撮ったのでスイカ型であることはわかりにくいが、色の変化具合も形もまさにスイカだ。3枚目は最初の写真の現場から少し上流で見つけた古い切株で、これは桜だ。道路際にあったので、最初の写真に見える河川敷の切株とは違って洪水の際に悪影響を及ぼすはずがないのだが、聞くところによると、道路際の桜は根が護岸を弱めるらしく、嵐山から松尾にかけてたくさんあった桜はどれも枯れるがままにされ、新しく植える許可が下りない。これも役所ロボットの考えだ。桜の根が護岸を弱める割合と、誰もが花を楽しむ価値を比較すれば、後者に圧倒的に値打ちがある。桜が川岸にはよくないというのであれば、日本中の川沿いの桜を全部切ってしまえばよい。4枚目は今年の2月、奈良の寺の境内で撮った。有名な老木であったようだが、キノコ類が繁殖して腐蝕に向かっている。
by uuuzen | 2014-06-17 23:59 | ●新・嵐山だより(シリーズ編)
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