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●第4章その2 フランク・ザッパに会見した前後の頃②
月末になると何かと気ぜわしい。切り絵を作る必要もあるし、出かけなければならないところ、そのほかの用事など、相変わらずいつも寝るのは深夜3時過ぎだ。



鏡を覗き込むと、目の下にはっきりと隈が出来ていて、小皺も多い。日向に出ると今でもサングラスが必要だ。そうしていても、たまに極度の痛みが目に走る。失明したくないので、目を酷使するのもいい加減にしておきたいが、自分でもわけがわからないほど、毎日時間の過ぎ去るのが速い。ホームページの完成もまだまだだ。この調子では中途半端なまま正月を迎えて公開ということになるだろう。それでも出来る限りは完成させたいので、毎日必死だ。なのに、細部の修正に手間取って、なかなか先に進めない。もうすぐ光が見えるという状態に早くなりたいものだが、トンネルの半ばで窒息しそうな気分だ。久しぶりにこのカテゴリーへの投稿。前回の続きだ。

MSIからもコンサートには何人かが出かけるようであったが、向こうで会おうという取り決めもしなかった。後でわかったが、MSIはフランクフルトの次のベルリン公演に訪れ、そこではザッパの出演はなかった。ザッパに関するたいていのことは雑誌記事や『自伝』に書かれているし、同じような細々としたことをザッパに改めて訊ねるのも迷惑な話であろう。それにインタヴューというのは質問する人物の知的の程度をさらけ出してしまうので、わざわざフランクフルトまで行って、迂闊にアホなことを口走ってしまうこともない。そう思って、ザッパへの質問事項は一切用意しなかった。またコンサートに関する質問も、ステージを観れば充分で、会場で販売されているはずのプログラムやパンフレットを読めばデータも得られるはずだ。しかし、ただひとつ決めておいたことがある。それは「THE SON OF 大ザッパ大雑把論」の最初あたりに書いたように、生まれて間もない息子を抱き、『ユートピアから来た男』のジャケットと一緒に撮った写真だ。息子を連れて行くからには、そしてひょっとして息子ともにザッパに会えるのであれば、何か話のきっかけとなるようなものがほしい。そう考えるとその1枚の写真が一番よいと思えた。いや、話は逆で、およそ10年前に写したスナップ写真をザッパに見せたくて、息子同伴を決めたのかもしれない。会えない可能性の方が大きいと思いつつも、旅立つ間際に息子のアルバムから写真を引き剥がして、胸ポケットに無造作に入れた。これらの顛末は本書「第15章『ザ・イエロー・シャーク』初演鑑賞紀行」にまとめるが、次にその予告編としてエピソードをひとつ披露しておこう。
 ザッパに会える確証がないので、おみやげの品物を持参するかどうか迷った。持参する決心の後も、いざザッパが喜びそうなユーモア溢れるものがなかなか思い浮かばない。結局かさ張らず、安価でささやかないくつかをカバンに詰めた。そのひとつは、握り手を持って振れば、3つほどの拍手木状のプラスティック板がお互いに叩き合って、拍手によく似た大きな音を発する玩具だ。これは息子がどこかでもらって来たもので、「2塁打」とか「ホームラン」といったシールが貼ってあり、主に野球場でファンが使用するらしかった。何となく「ホームラン」とはザッパに対する讃辞にもなるし、打楽器代わりに使用できると考えた。ザッパに会った際、それを手わたす機会はいくらでもあったにもかかわらず、結局はわたさなかった。ひょっとすればすでにザッパはその玩具を知っているものかもしれないという気の引け目もあって、見せる勇気がなかった。その前にまた会場で鳴らそうかとも考えたが、なにせ現代音楽のコンサート。ふざけた観客は誰もおらず、異質な音をピストルの連射と勘違いして係員が飛んで来たかもしれない。今ではやはり見せた方がよかったのではないかと多少悔いている。なぜならアルバム『ザ・イエロー・シャーク』の冒頭、ステージに登場したザッパは手に持っていた玩具のピストルをいきなり鳴らしたからだ。これはザッパと会見してわずか15分後のことであるから、もしザッパにその玩具を渡しておれば、ザッパはそれをピストルと同時か、あるいは代わりに使用したことは充分に考えられる。今、その玩具は手元にある。大切にして『ザ・イエロー・シャーク』のCDを聴くたびに鳴らすことにするか。ほかのおみやげ品は他にもあったが、これは帰国後、礼状とともにザッパに送った。ザッパ会見以後の話はまた別の機会に述べることになろう。第15章を第16章の序と位置づけ、最終章となる第16章は『ザ・イエロー・シャーク』CDの解説に当てる。
 ザッパに会った翌日にはロンドンに、才悶、息子と帰還し、ビートルズのアビー・ロード・スタジオ前の横断歩道写真を撮ったり、ついでにその道の果てまで歩いて行ったりもして、精力的にロンドン中の名所や美術館を1週間ほど見物した。どこの国でも大都会はたいてい同じようなところに同じような施設があるので、初めてのロンドンもさほど戸惑うことはなかった。フランクフルトでもドイツ人から道を訊かれたが、ロンドンでも同じことが2、3度あったから、あまり田舎者には見えなかったと喜んでいいのか…。それはいいとして、最後の日、才悶にヒースロー空港まで車で送ってもらうことになって、カー・ステレオからはMSIから届いたばかりのザッパの2枚組CD『キ印の饗宴』のテープが流れていた。ちょうどヨーコ・オノの歌声が響いているところで、そのテープは初めて聴くものであった。帰国するとMSIから連絡があった。MSIの人間は『ザ・イエロー・シャーク』公演に出掛けたが、誰もザッパには会えなかったので他に書く人がいない、公演の感想をまとめてほしい、それをさっそく『キ印の饗宴』の発売に合わせて、付録の読み物としたいというのであった。10月に入ってすぐに書き上げたから、おそらく『ザ・イエロー・シャーク』公演の記事としては世界でも最も早いもののひとつだったと思う。これは場合によっては先の音楽雑誌に登場していたかもしれない。結局はわずかなザッパ・ファンだけが読むことになった。ロック・コンサートではないので、当の音楽雑誌には向かないし、仮に原稿送付が受け入れられても没になったろう。一方で『キ印の饗宴』のアルバム解説の方は、いつの間にやら別の人が担当していた。いちいちMSIも伝えてはくれない。また仮に『キ印の饗宴』の解説を任されていても満足なものを書く時間がなかった。『ザ・イエロー・シャーク』公演後には、もうひとつ『当時最先端』のテープも届けられたが、これはザッパ自身の詳細な解説があり、その対訳だけで充分だとの判断により、解説はつけられなかった。
 9月に入ってすぐMSIはザッパ側から、『ユートピアから来た男』のボーナス・トラック曲の歌詞と、曲目構成資料をファクスで送信された。それを自宅に転送してもらっただけで、その時マスター・テープの到着はまだなかった。『ザ・イエロー・シャーク』コンサート以後の12月にようやくマスター・テープが届き、ボーナス・トラックを聴いたうえで、すでに大半を書いていた解説の一部を手直しした。本来ならばCD解説の脱稿日づけはそれが完成した時のものにすべきだが、『ユートピアから来た男』についてはとりあえず完成させた8カ月前の日づけのままにした。もうひとつ、旧作品であるのになかなか発売されなかったものがある。それはEMIレーベルから、ザッパ初のCDアルバム、しかもLPなしでCDのみで発売されていた『音楽にユーモアはあるか?(音楽とユーモア)』だ。MSIからの発売の目どがまったく立っていないにもかかわらず、ザッパのレーベルから新たに再発売されれば直ちに対応できるようにと、93年秋にまとめておいた。つまり『ユートピアから来た男』と同じようにだが、前述したように冒頭の一連の鎖状に繋がる文章は『ユートピア』でいちおうの区切りはついたと考えたので、「フ」から始まる単語を最初に置くだけにした。ひとつの輪が閉じたとして、もし次の輪を新たに一歩から作って行くとするのであれば、どのような方法がいいか。同じ方法を使用せず、かといってまったく違うものでもないとすれば、「フ」の文字だけは生かして、後は適当に単発でやるよりほかない。依頼がないのに勝手に原稿を用意して待つというのは、でしゃばろうとする欲だろう。だが、他の解説者がおそらく書かないような独自の視点があると考えたので、暇を見つけて総論だけ書き上げたのだった。それが本当に他の解説者が書かないものかどうかは読者の判断を仰ぐしかない。このアルバム発売に関しては最初のMSIが契約していたが、新たに日本でのザッパのアルバム発売権利を獲得したビデオアーツ・ミュージックが、ようやく95年に発売した。未発表になっていた総論に加筆し、さらに曲目解説を足して第14章とする。

by uuuzen | 2005-10-26 23:58 | ○『大ザッパ論』サプリメント
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