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●松山にて、その3、道後温泉本館、さらに
ち果てるのは鉄より木材の方が早いが、鉄も案外すぐに錆びてボロボロになる。鉄筋コンクリートの寿命が6,70年と聞くと、法隆寺はいったいどうなっているのかと不思議だ。



●松山にて、その3、道後温泉本館、さらに_d0053294_1435159.jpg
木の方が長持ちするなら、もっと木材を使った家を建てればいいが、高層建築は無理なので、都会では鉄筋コンクリートがあたりまえと思われている。先ほど「道後温泉」のWIKIPEDIAを読むと、バブル期に団体客を見込んで宴会場を設けた旅館やホテルはいわば経営に失敗し、現在は旅館やホテルの軒数や収容人数が3分の2に減っている。これはバブル期を基準にするからで、それ以前と比べるとどうなのか。それはともかく、道後温泉本館(以降、本館)はその周囲に背の高いホテルが林立し、特に背後にそびえる塔のような高い建物は屋上に大きな看板を掲げ、これが本館前に立った時に丸見えであることが残念だ。その様子がわかる写真は「その2」の3枚目で、筆者はその目立つ看板を見上げながら、いくら商売でしかも法律を守っているとはいえ、宣伝には逆効果を思った。みなあえて言わないだけで、景観をぶち壊していると感じている。そういう言うに言えないようなもやもやとした嫌な気分が一番恐い。経営者がそのことに気づかないとすれば、そのうち経営は打撃を受けるだろう。だが、この景観問題は京都や奈良でも深刻だ。宇治の平等院でもそうであったはずで、せっかくの国宝を前にして背後にマンションが丸見えという事態になりかけたか、すでになったかで、法律を作ると必ずそれを盾に図々しいことを行なうのが人間だ。かえって法律がなく、みんなの暗黙の合意で景観を守る方が好ましいが、拝金主義の世の中であるから、もう無理だ。平等院に近い位置にマンションを建てるとなると、見下ろせる方がよいとばかりにそのことを美点として宣伝する。わが地元の嵐山も同じで、7年ほど前に大きなマンションが建った。それは渡月橋北詰めないし桂川左岸から丸見えで、観光客はどう思っているだろう。渡月橋から下流はどんどん開発してよいということになっているようで、嵐山に来た人は、渡月橋の背後に嵐山が見える位置に立つか、渡月橋の上から嵐山を見ることに限る。それが嵐山の表であって、裏は渡月橋から下流を見ることだ。裏はめったなことには紹介されないから、嵐山に来る人はかえって渡月橋から下流の眺めを新鮮に思うかもしれない。「その1」の最初に載せた写真も裏だが、それはホテルに泊まる以外には見ることが出来ない風景で、朽ちたものやガラクタがところどころに見えている。それは生活感の表われで、絵はがきにはならない風景であり、旅行してまで見るものではないとの考えがあるが、そうであるからこそ、たまたまそういうものに遭遇するととても新鮮だ。絵はがきや雑誌、TVで見たのと同じものを確認しても記憶に残らない。あるいは、裏の部分を併せ見ることで、それら表の風景も際だって印象に強くなる。
●松山にて、その3、道後温泉本館、さらに_d0053294_144327.jpg 本館は周囲を背の高いホテルに取り囲まれ、ホテルの宿泊客は本館を見下ろすことが出来る。これは漱石の時代はなかったことかと言えばそうではない。本館の背後は上り坂になっているし、右手には冠山という小高い丘がある。その丘から縄文時代のいろんなものが出て来て、その当時から人が温泉に浸かっていたと想像されている。そのため、道後温泉は日本最古の温泉となっている。ではいったい本館以前はどういう建物であったかだが、絵に描かれているかもしれないが、写真は残っていないのだろう。本館のある町の長の伊佐庭如矢(いさにわゆきや)が本館の老朽化を心配し、立て直すことにしたそうで、彼の銅像は本館の北側、道路を挟んだ位置に建てられていて、頑固そうな表情だ。その写真を今日は3枚目に載せておく。伊佐は意志の強さで建て替えを実現させ、今は慧眼であったと尊敬されているが、19世紀末の当時、建て替え費用があまりに莫大で、反対者から命を狙われもしたそうだ。WIKIPEDIAによれば当時小学校教員の給料が8円で、本館は13万5000円の総工費であったというが、現在の価値でざっと40億ほどか。バブル期を過ごした者からすればさほどとも思わないが、何しろ小さな町が行なう工事だ。漱石はそのあまりに立派な建物に驚嘆したようで、建った当初は周囲のどの建物よりも高く、今とは全く違って戦艦に見えたであろう。思い切ってどでかいものを建ててよかった。それがバブル期には周囲のホテルが真似をして散々な目に遭った。それに鉄筋コンクリートのビルはほとんどただの箱で、本館のような威容を誇ることは無理だ。本館を法隆寺のように1000年以上も保たせることは無理であろうから、いずれまた建て替えをせねばならないが、その時どういうデザインが採用され、またどういう素材で建てられるであろうか。そのことを予想させるのが、本館の北西に位置する「椿の湯」で、これはヨーロッパの古代神殿に似た外観をしている。筆者らはホテルの女将に薦められながら、中に入らなかった。隣家の住民は20年ほど前に道後温泉を訪れ、本館はさっぱりよくなかったが、「椿の湯」がきれいでよかったと言った。そのことを覚えていた家内は、本館に対して同じ感想を言ったが、隣人から聞いていただけに、失望はまだましであった。それで、「椿の湯」に入り直そうとは言わなかった。「椿の湯」も松山市の経営で、本館とともに味わってほしいとの思いであろうか。本館の老朽化が極限に達して使用困難になった時、松山市は思い切って「椿の湯」よりも斬新なデザインで本館を立て直すだろうか。今と同じデザインにすれば鉄筋コンクリートより割高になり、また皇族が使用した部分などは不要であるから、同じデザインにする理由もない。筆者の思いとしては、極力同じデザインとし、また現在の建物の使える部材は転用した方がいいと思う。再建の話が浮上するのはまだまだ先であろうが、大きな地震で被害を受ける可能性もあり、建て替えのイメージは描いておいた方がいいのではないか。
●松山にて、その3、道後温泉本館、さらに_d0053294_1451380.jpg 道後温泉は白鷺が見つけたとの伝説がある。本館の正面の切り妻屋根の上に置かれる瓦は特製の大きなもので、宝珠に波をデザインしている。宝珠はほかの場所に描かれたり、また石で作られたりして飾られている。その写真を2枚目に載せる。白く見えるのは白鷺の像で、その間に茶色の宝珠がある。白鷺は交互に姿が違い、どこか大正ロマンの香りを漂わせる。本館が建った当時のものかずっと後のものかはわからない。こういう装飾があるとないとではえらく印象が違う。昨日「風風の湯」が安普請と書いたが、そこには本館のこういう特別の凝ったデザインが皆無で、嵐山であることを知らしてくれるものがない。それは道後温泉のシンボルである白鷺や宝珠に匹敵するものがないためということかもしれないが、嵐山や渡月橋をデザインしたタイル絵でもいいではないか。そういう特別なことは特別に高くつくという思いがあったのだろう。それはさておき、本館はこの白鷺と宝珠の飾り柵のほかに花見行燈形の提灯や赤白の幔幕で飾られていた。いつもそうではないようで、季節に合わせているのだろう。遊郭っぽいが、華やかでよい。玄関脇に人力車が整列している様子を見ると、映画の中に入り込んだ気分であった。本館の裏手にはあまり人が行かないが、ぐるりと一周して驚いた。裏手は皇族が出入りした玄関で、屋根は銅葺きで、緑青が吹いている。この裏手すなわち東側の建物は表側の建物と違って独立しているように見えるが、内部では廊下がつながっているのだろう。別料金を支払えばこの皇族が利用した建物の中も見ることが出来たが、内部の撮影は許可されているのだろうか。印象的であったのは、玄関前に青いビニール・シートでくるんだ大きな荷がいくつかまとめられていたことだ。今日の4枚目の写真からそれがわかる。青い包みは昨日浴室で使われたタオル類のはずで、それを西の表側の建物からではなく、人通りの少ない銅葺き屋根の建物側から出すところが面白い。西の表側は自動車が侵入出来ず、東側は幅広の車道を通したので、洗濯業者が簡単に、また人目につかずに青い袋を持ち去ることが出来ると考えたのだろうが、昔なら皇族に対して不敬で、とても許されなかった。筆者は道路を挟んで東向かいの建物の軒下まで行ってこのパノラマ写真を撮ったが、離れて見るとまた本館の格好よさがよくわかり、現在の価格で数十億というのも納得出来る。庭がどうなっているかが気になるが、冠山からは全体を見下ろすことになって、屋根の配置がもっとわかるだろう。筆者らはその山には上らなかった。1泊では行動範囲は絞るほかない。今度という機会は自分で作らない限り訪れない。その気になればいつでも再訪出来るが、ほかに行きたいところがある間はそれを優先する。そして行きたいところにろくに行かずに朽ち果てる。
●松山にて、その3、道後温泉本館、さらに_d0053294_13270649.jpg

by uuuzen | 2014-04-10 23:59 | ●新・嵐山だより
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