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●「FORSE BASTA-A FLOWER‘S ALL YOU NEED」
鬱な季節と言えば日本では梅雨になろうか。梅雨の晴れ間は気分がいいし、長雨もまたそれなりに楽しいと思える筆者なので、梅雨は嫌いではない。それを言えばどの季節も好きで、憂鬱になる理由はもっとほかにある。



と言いがら、自分では憂鬱症とは無縁と思っている。6月の末日の今日は2週間ほど前に昨日取り上げた映画のメイン・テーマについて書くことを決めた。梅雨時にちょうどふさわしい清涼剤のような曲で、ラジオからこの曲がよく放送されたのを聴いた季節が梅雨であったと思う。それについてまず書いておくと、NHK-FMの京都放送で夕方4時から6時くらいまでに放送されていた洋楽のリクエスト番組があった。2,3年続いたと思うが、1976年かその翌年、中年の男性アナウンサーがDJを担当し、よくこの曲を取り上げた。はがきによるリクエスト番組で、その枚数が多い曲を放送したのだろう。この番組がそうとう変わっていたのは、曲をオン・エアする直前、その曲をリクエストしたはがきの差出人の名前をすべて読み上げたことだ。本名で出す人は少なかった。それでも人気のある曲を放送するのであるから、曲が流れるよりも名前の読み上げの方が長かったかもしれない。その番組でこの曲を数回聴いた。もっとだったかもしれないが、毎日その放送を聴いていたのではないから実際何度採用されたかわからない。また、人気曲は流行によって次々に代わって行くから、そういつまでもこの曲にリクエストが殺到し続けたことはないだろう。あるいは、他の曲より多いながらも、少し下火になった時に別の人気上昇曲を採用したかもしれない。得票数は明らかにされなかったから、放送局内部で適当に曲を取捨選択したに違いない。それにしてもこの曲は目立った。74年に映画が公開され、2,3年後まで人気が衰えなかった。同番組にはがきを出すのはたいていは高校生であったと思う。そうそう、思い出した。この曲とともに何度かかかったのはバッド・カンパニーの「ウィズアウト・ユー」だ。日本やアメリカではニルソンのカヴァーが大ヒットしたが、本家はイギリスのロック・グループの彼らで、今ではYOUTUBEで彼らが演奏しながら歌うヴァージョンが見られる。とてもいい時代になったものだ。だが、高価なレコードを乏しい家計からどうにかやりくりして買うことで初めて自分のものにしたと思う筆者は、今でもYOUTUBEのみで済ますことは気分が落ち着かず、このカテゴリーで取り上げる曲はみなレコードやCDを買っている。それは本も同じで、いいと思ったものはみな自分で買って手元に置きたい。
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 昨日書き忘れたが、『ペイネ 愛の世界旅行』の映画パンフレットは何年か前、どこでだったか忘れたが、古書店で見つけた。ネット時代、もうその内容はデジタル情報になっていて無価値かと思えば、先ほどウィキペディアを調べるとペイネについては詳しく書かれていない。それで昨日の続きとして、少し書いておく。パンフレットには伊藤逸平という漫画評論家が原稿2枚程度の文章を寄せている。興味深い内容で、ペイネは50代後半に日本に夫婦でやって来たそうで、伊藤氏は漫画家の滝合節雄氏とともに新宿の飲み屋に夫婦を誘った。そこでわかったようだが、ペイネの奥さんはペイネが美術学校の苦学生であった時の下宿屋の娘で、ペイネはしょっちゅう小銭を彼女にせびっていたらしい。その点で頭が上がらず、ペイネが描く恋人たちが結婚したならば、夫は妻の尻に敷かれるだろうと伊藤氏は書いている。ペイネが来日したのは1966年か7年で、日本の誰かが招待したのではなさそうだ。ペイネは1908年生まれで、1930年には認められ、その後急速に有名になる。60年代の半ばに自費で来日することはたやすかったであろう。そんな経験が『ペイネ 愛の世界旅行』の日本の場面に活かされたであろう。ついでに書いておくと、日本の場面では映画館が2,3描かれ、そこには漢字で上映中の映画の題名がはっきりと見える。パンフレットによれば、それらの映画は60年公開という。ならば、ペイネ夫妻は当時も来日していたか。あるいは、資料を見て描いたか。いずれにしろ、ペイネはたくさんの写真を撮って帰り、それらをもとにアニメの原図を描いたであろう。戦前からすでに有名であったペイネで、「愛と平和」をアニメ映画の主題としたとしても、ペイネはビートルズの父親か祖父世代であるから、60年代のヒッピーによるフラワー・ムーヴメントの元祖であった。つまり、ジョンとヨーコやアメリカのヒッピーは、ペイネから影響を受けたことも考えられる。ただし、昨日書いたように、ペイネの描く恋人たちは、手に手を取って暗闇の中を逃げて行く。デモ行進に加わって社会の矛盾を訴えるということはしない。世の中にはネガティヴなことも多いが、男女が見つめ合って愛を重視すれば、世界は薔薇色になると言いたいかのようで、そこが楽観的過ぎると60年代の若者からは思われたかもしれない。それはさておき、この映画のメイン・テーマはエンニオ・モリコーネが作曲し、映画では最初と最後、それに途中でも流れるが、それぞれヴァージョンが違う。最後に流れるのは英語の歌つきで、その歌詞から引用して同ヴァージョンは「A FLOWER‘S ALL YOU NEED」と題される。これはビートルズの67年の「ALL YOU NEED IS LOVE」の感化ではないか。愛のペイネからすれば、本当はビートルズの同曲の題名をつけたかったかもしれない。ところが「愛」が駄目なら、それを象徴する「花」ということで、「あなたが必要なのは花だけだ」といた。だが、歌詞はペイネやモリコーネが書いたのではなく、どこまでこのふたりが注文をつけたかはわからない。
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 さて、ここでややこしいことを書いておく。筆者が76,7年に何度かNHK-FMでこの曲を聴いた時、それは英語の歌つきヴァージョンであった。歌はデミス・ルソスというギリシア人で、ヴァンゲリスのバンドでヴォーカルとベースを一時担当していたという。ギリシアの歌手を起用する国際性は、この映画の題名にふさわしい。筆者はまずシングル盤を中古で入手した。そこには「オリジナル・サウンド・トラック」とあって、その下に「メイン・テーマ A FLOWER‘S ALL YOU NEED」の文字が印刷される。「サウンド・トラック」とは、映画に録音された音のことで、映画に使われたのと同じ音源を本来は意味する。ところが、実際はそうではない場合も多い。映画用とは別に、アルバム用に違うヴァージョンを録音する場合もある。この映画では最後にデミスの歌入りヴァージョンが流れるが、途中でヴァレンチノとヴァレンチナの声が挟まり、また若干切り詰められてもいる。それはいいのだが、そのフル・ヴァージョンが筆者が入手したシングル・レコードかと言えば、そうではない。シングル盤の収録されるのは映画では使われないヴァージョンで、にもかかわらずジャケットには「オリジナル・サウンド・トラック」と目立つように印刷される。YOUTUBEでは、筆者が所有するシングル盤と同じジャケットが映りながら、映画の最後で使われるヴァージョンのフル・サイズが流れる。これはどういうことか。シングル盤がジャケットは同じながら、異なるヴァージョンを前後して発売したのだろうか。ジャケットの左上隅に「定価500円」とあって、これは70年代半ばの価格だろう。さらに調べると、この曲の日本のシングル盤はジャケットが異なるものがあって、背景が桃色のものは筆者のものより以前に発売されたのではないか。そして、そこに収録されるのが映画の最後のヴァージョンと考えれば納得が行く。あるいはLPも考慮せねばならないが、それは入手していない。不思議なのは、YOUTUBEで紹介される映画に使われたヴァージョンだ。それこそが「オリジナル・サウンド・トラック」と言うにふさわしく、その音源をレコードかCDでほしい。YOUTUBEに使用されるヴァージョンはどこから得たのだろう。ここで2008年に発売されたCDを紹介する。これは待ちに待って発売されたもので、当時筆者はアマゾンで買った。全38曲入りで、最後にデミス・ルソスの歌入りヴァージョンが収めされる。それは筆者が所有するシングル盤と同じで、つまり映画の最後に使われたものではない。これにかなり落胆した。
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 同じ歌手が歌うのであるから、ふたつのヴァージョンの差はほとんどないように思われるが、これが全く違う。映画ヴァージョンは、この映画にもしばしば登場する天使の声を思わせる児童合唱が入り、一音のみデミスも児童たちも1オクターヴ叩く歌う箇所がある。これはデミスの歌の録音を使い回しして別ヴァージョンを作ったのではなく、最初からデミスにもう一度録音させた。児童の合唱で思い出すのは、ジョンとヨーコの「ハッピー・クリスマス」だ。これは71年の曲で、モリコーネはその影響を受けているだろう。また、映画ヴァージョンは全体にロック色が強く、特にオルガンの音色がよく響き、その点はプロコム・ハルムの代表曲で67年の「青い影」からの感化だろう。だが、「青い影」はバッハが原曲であるから、モリコーネが「青い影」から着想を得たとは言いにくい。モリコーネは映画音楽の作曲家としては天才的職人で、頭の中には世界中のあらゆる時代の曲が詰まっているだろう。その無限の引き出しの中から、この映画にふさわしいテーマ曲を即座に書き上げたはずだ。ただし、そこには時代の流行を読み取る力も大きく作用している。そのため、「青い影」や「ハッピー・クリスマス」からヒントを得たことは充分考えられる。それはモリコーネにすれば些細なことで、問題とするには当たらなかった。そのことを示すのが、ほかのヴァージョンだ。CDではこのメイン・テーマは「FORSE BASTA」と題され、「A FLOWER‘S ALL YOU NEED」の記載はない。これはモリコーネの書いたメロディは「FORSE BASTA」であることを示す。このイタリア語の意味は「おそらく充分」で、これでは意味不明だが、映画に使われる世界各国のメロディを書く時間がモリコーネにはなく、メイン・テーマ以外はアレッサンドロ・アレッサンドローニに任せ、自分はメイン・テーマだけで充分と思ったからかもしれない。それはさておき、「FORSE BASTA」は2008年のCDでは8つのヴァージョンが収録される。もっと以前のCDでは11曲入ったものもあるそうで、モリコーネは自在に編曲することが出来た。そのため、映画の最後で使われるヴァージョンが「青い影」を少し連想させようとも、それはモリコーネの才能のなさを証明するものでは全くない。
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 2008年のCDはすぐに品切れになったようで、アマゾンでは高値がついている。このCDはブックレットを見ると、最初の見開きに今まで日本で発売されたLPやシングル、CDのジャケットがずらりと並べられている。映画と主題曲が日本で最も人気のあると言いたいかのようで、実際そうだろう。そのファンの長年の期待に応えてついにデミス・ルソスの歌入りヴァージョンを収録したCDが発売された。それまでは彼のアルバムにしか収められなかった。これは権利の関係で、それを越えて2008年のCDが実現した。ただし、前述のように、映画の最後で歌われたデミスの別ヴァージョンがなぜ含まれなかったのか。それこそが本当の「オリジナル・サウンド・トラック」だ。それがYOUTUBEでは何人かが投稿しているというのに、シングル盤やCDヴァージョンはYOUTUBEでは聴くことが出来ない。これも不思議だ。映画についてもうひとつ書いておくと、74年公開ではヴァレンチノとヴァレンチナはイタリア語で喋ったが、ペイネが亡くなって2年後の2001年公開は英語に吹き替えられた。それがかなり違和感がある。メイン・テーマに話を戻すと、メロディはバッハ辺りのバロック音楽を思わせる。あるいは教会音楽か。ザッパの「ストリクリー・ジェンティール」に少し似ていなくもない。ひょっとすればモリコーネはザッパのその曲も聴いて記憶に残っていたかもしれない。だが、そういった影響関係は即断が難しい。アニメ映画は完成に数年要する。ビートルズの『イエロー・サブマリン』がそうであった。したがって、ペイネのこの映画も60年代末期に原画が揃い始めたか、描かれ始めたかもしれない。映画のパンフレットには、70年に企画がペイネとの間で持ちあがり、71年末から製作にかかったとある。企画が持ち上がる前、ペイネは長年にわたって原画を少しずつ用意していたとも考えられる。日本旅行もその一環であったかもしれない。また、製作が始まってすぐにモリコーネに音楽を書いてもらうことになったのか、その辺りのこともわからない。だが、ビートルズやヒッピー文化との関係は明白で、当時青春時代を送った筆者のような者にとっては、ヨーロッパのエスプリを今さらに感じて楽しい。デミスの悠然かつ朗朗とした歌声は鬱陶しさを忘れさせ、胸を打つ。歌詞は「愛と平和」を謳い上げるもので、当時のジョン・レノンが歌ってもよかったと思わせる。たたみかけながら絶頂に至るメロディは、ビートルズの少年時代にヒットした「引き潮」を想起させるが、これはいつかこのカテゴリーで取り上げよう。
by uuuzen | 2013-06-30 23:59 | ●思い出の曲、重いでっ♪
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