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●飛び出しボーヤ、その10
業しなくなって何年も経っていたと思うが、京都市バスの松尾橋バス停前に昭和30年代風の工場があった。去年、それがマンション数棟と戸建て住宅に変わった。



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工場であった頃は、バス通りのすぐ背後の3メートルほど低い土地でもあったので、屋根や壁が長年の埃のためか、全体にどす黒く、人の気配がなかった。音を出さず、明かりも点らなかったので、廃業状態であったのだろう。あるいは倉庫として一部を使っていたか、とにかく注視させられる活気はなかった。そのように人から忘れられた存在になると、建物が消えるのは早い。取り壊しが始まったかと思えばすぐに更地になった。バス停からは遠くまで見通しが利いて、ずっと更地のままでいいのにと思ったものだが、土地の所有者は税金を払わねばならないから、そんな無駄は出来ない。マンションの建設が始まり、その建設途中の写真は何度かブログに載せた。今日はその後の姿として、今年1月19日と6月7日に撮った写真をこの段落の上下に載せておこう。また、過去の建築途上の写真は、「破壊と築造」「にぎにぎぎしぎし」「にぎにぎふみふみ」「にぎにぎどんどん」にあるが、どこにどれほど載せたかわからず、ほかにもあるかもしれない。建物が完成し、今はどの部屋にも人が入ったと思うが、不思議なことに以前の工場と同じく人の気配がない。ただし、筆者はたいてい夕方から夜にかけてムーギョとトモイチに買い物に行き、その途中で建物の前を通る。そんな夕食の時間帯では子どもは外に出ないだろう。人の気配はないが、建物のあちこちの照明は点っているので、工場であった時の暗さはない。人の笑い声や子どもの騒ぐ声に溢れると思っていたのに、人影をさっぱり見ないだが、マンション内のガレージには車があるし、人が住んでいるのは間違いない。あたりまえの話で、新聞広告その他、大きく宣伝した建物で、すぐに完売になったはずだ。暗い工場が明るく照らされるマンションになっただけでも、以前より環境はよくなったと思うべきだろう。にもかかわらず、ピカピカのマンションに人気がないのは、以前の工場とは違った不気味さが漂う。人がたくさんいるはずなのに、それが伝わって来ないことは、人のプライヴァシーが充分守られていて、また住民が他人に迷惑をかけないようにおとなしくしているためと好意的に考えることも出来る。いや、そう考えるべきなのだろう。以前が昭和半ばの頃を思わせる工場であったから、筆者はそれに代わってマンションが林立しても、そこに昭和の人が多くて賑やかな世界が生まれると思い込んでいた。だが、今は昭和半ばではない。第一、子どもが少ない。またたくさんいてもマンションのすぐ前が大通りでは、危なくて遊べない。思い切り遊ぶための広場などどこにもないし、塾通いや部屋でのTVゲームに忙しく、マンションの前や近くで姿を一度も見かけなくても不思議なことではないのだろう。
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 千坪はあったのだろうか。四条通りに面したところ、つまり松尾橋のバス停前は7階建てのマンションが数棟がずらりと隙間なく並び、その背後すなわち南側に戸建て住宅が建った。鉄筋コンクリートのマンションと木造の一戸建てが同居することが不思議であったが、価格が違う、また見栄えも違う建物がまとまった区画に同居することは悪いことではない。韓国のソウルは高層住宅がひしめき合い、どれもほとんど同じデザインで、日本のニュータウン以上の均質化を見せていて、住民たちから苦情が出ないのかと思うが、大都会で一戸建て住宅など、ごく一部の金持ちだけが許されることと諦めているのかもしれない。松尾橋バス停前に去年出来たマンションの内部を覗くことは今後もないと思うが、そのすぐ前に建つマンションには昔お邪魔したことがあって、四条通りの車が走る音が大きく聞こえることに驚いた。車の量はその後増えているから、騒音はさらにひどくなっているだろう。そこで思うのは、大通りに面したところに高層マンションを建て、その背後に戸建て住宅を設けることにした設計者の考えだ。戸建ての住宅は目の前のマンションが四条通りの騒音を消してくれるうえ、南に位置するので陽当たりもよい。そういうことを売りにして、より金のある人は戸建てを買うように勧めたであろう。その他大勢の平均的な人は7階建てに住む。それでも、7階建てに住むような人の方が圧倒的に多く、そういう人たちに合わせた文化が大手を振って行く。NHKのTVで団地住まいの子どもを描いたアニメがある。たまたま一度だけ最初から最後まで見たことがあるが、面白かったのは主題歌に流れる映像で、団地を豆腐に見立てて、包丁で次々と切っては豆腐状の団地が出来上がって行く。金太郎飴と同じ発想で、現在の日本文化の主流はどこを切っても同じ、つまり平均的な団地住まいの一家が担うという見方だ。民主主義とはそういうことだ。このアニメは高層団地の住民が多い韓国でもそのまま通用するだろう。金太郎飴のように誰もが同じ建物に住み、同じような物を食べ、同じようなことを考えることは、個性を大切にする欧米から見れば不気味だが、このアニメではそういうようには描かない。そんな画一的な環境で暮らしていても、人はさまざまで、また笑いも涙もあるという、まるで昭和30年代とそっくり同じ、人々の温かい交流があると言いたげだ。実際そうなのだろう。今の子どもに昭和30年代のことを話してもわからない。また想像出来たとして、今と何が変わらないと言うだろう。当時でも一握りの金持ちがいる一方、せせこましい長屋に暮らす大勢がいて、双方は接して暮らしていた。それが今は松尾橋橋バス停前の7階建てマンションとその南側の一戸建てという対比に見てもよい。
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 死んだように暗かった工場に代わって灯りがいっぱいの真新しいマンションが密集したので、表向きには松尾橋界隈は一気に清潔で都会的になった。マンションのすぐ隣りに京都では有名なチェーン店を展開するスーパーがある。マンション完成後はさぞかしそこは常に大入りであろうと予想していたのに、ほとんど客が増えたとは思えない。同じことは筆者が利用するムーギョやトモイチもで、おそらく1000人ほど住民が増えたはずなのに、それらの人たちがどこで買い物をしているのかと思う。今はどの家でも車を持つから、近くのスーパーではなく、チラシを見てもっと安い遠方の店に行くのだろう。だが、ガソリン代を思えば近くで買った方が安い。それはわかっていながら車を使うのは、車をほかの目的にも使うからで、ケータイ電話と車は必需だ。昭和30年代と違うのはこの点だ。隣近所の顔がいつも見えた長屋とは違って、マンションでは隣人の顔を知らないまま何年も過ごすことがある。多くの住民が密集して暮らすのに、松尾橋バス停前のマンションの前を通りがかっても人気を感じないのはそういうところに一因がある。操業していない工場が暗くて静かなのはあたりまえだ。ところが多くの人が暮らし、夜も皓々と明るい建物が同じようにひっそりしているのは、工場であった時とは別のさびしさを感じる。それが日本の都会の姿で、子どもの声が聞こえず、姿が見えないからだろう。それほどに日本の人口が減少した。このマンションから東へ200メートルほどのところに梅の宮大社の参道がある。四条通りとの交点には信号があって、そこに手製の飛び出しボーヤの看板が今年3月に設置された。たちまちそれは車に体当たりされて根元の木材が折れた。応急措置として、折れたまま看板だけがブロックに挟まれて立てかけられた。その後、梱包用のロープでぐるぐる巻きに縛られ、その姿が包帯を巻く患者に見えて痛々しかった。地元小学校のPTAもそれを感じたのだろう。一昨日の夜に通りがかりと、ついに撤去されていた。3か月しか持たなかった。看板はそのままで支柱を新たにしてふたたび同じ場所に据えるのか、しばらく経ってみないことにはわからない。この破壊撤去された飛び出しボーヤは四条通りの北側にあったが、前述の新しいマンションと戸建て住宅は南側に位置する。四条通りの北と南は小学校区が異なるはずで、これは子どもたちが危険な大通りをわたって通学せずに済むようにとの計らいでもあるだろう。破壊撤去されたのと同じいわゆる「0号」の手描きによる飛び出しボーヤを10日ほど前にマンションのすぐ南で見かけた。そこは戸建住宅のエリアで、工場時代とは違って子どもが住む。彼らが自動車事故に巻き込まれないようにと、小学校PTAが看板を設置した。作者は梅の宮神社参道脇の破壊撤去されたものと同じと思うが、ボーヤの表情が違って、こちらは口元が笑っている。そのすぐ近くにも子どもの飛び出し注意を促す看板があった。これは株式会社名が印刷されていて、「0号」の手描きとは違う経緯で設置されたのだろう。
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by uuuzen | 2013-06-28 19:09 | ●新・嵐山だより(シリーズ編)
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